2024年9月26日木曜日

怪老人日乗:9月26日(木)

たまに思い立ってこのブログを開けてみると……「おお、更新されてる!」となるじゃないですか。そんな喜びをですね、あの世からお届けしたい。そう思いまして、今日も不定期更新にこだわっております。こんばんは、水野晴郎です。

さて今日はなんだか仕事が捗らない。午前4時くらいに起きて、本を読んで書評を書いてということをしているのだが、昼前くらいで頭も手もピタリと動かなくなってしまった。疲労である。若い頃はいくらでも座っていられたし、書いたり読んだりもできたのだが、今はある程度時間が経つと「わしゃもうアカン、ここで休憩さしてもらいます」と峠を旅する浪速の商人みたいな人格が現れて、押しても引いても駄目なのである。

そんな時は休むのがいいでしょうが、〆切もあるしねえ、とだらだら机に向かっていますが捗らないので日記を付けています。暑いんだよな、今日。このところ寒いほどだったのだが、急にまた暑くなり、どうしてくれるんだい、という感じであります。

さてXにもちょっと書いたのですが、京都の丸善本店が私の名をあげて『やっぱり好き!京極夏彦サーガ』(宝島社)を紹介してくれていまして、私は京都に住んでいた時代、丸善にもよく行きましたので、なんだか感慨深いものがありました。

新刊書店では丸善、ジュンク堂、ブックファースト、ブックス談が比較的近い距離にあり、どこも盛り場だったのではしごして本を見ていました。この中ではブックス談に一番思い出があって、それなりに狭くてコンパクトで見やすかったのと、幻想文学専門の棚があって、国書刊行会の本とかたくさん並んでいたんですね。それを見て「これをそのまま移植すればいいんだな」と思って、あれこれ買いました。三一書房版『夢野久作全集』も全部ブックス談で買っているはず。

古本はというとこれもXに書きましたけど、コミックショックというチェーンの古本屋が市の全域にあって、それを自転車でめぐるのが好き、というかほぼ唯一の趣味だったような。ブックオフも三条駅に大きなのがあり、七条堀川にもありましたが、コミックショックが好きだったなあ。あと京田辺市の駅前(新田辺駅)にコミックQというですね、似たような名前の大きな古本屋がありまして、ここでもよく買い物をしましたね。『ウロボロスの偽書』とか『ヴァリス』とかここで買いました。

一乗寺には恵文社という有名なセレクト書店がありまして、実際素敵なのですが、その近くに萩書房という怪奇幻想がやたら充実している店があり、むしろそっちに行くのが楽しみで、たまに叡電に乗って一乗寺に行っていました。一乗寺にはショップ99があったけど、今はないだろな……。ただ一乗寺はどっちかっていうと京大生のテリトリーという感じがあり、そんなにしょっちゅうは行かなかったですね。

そんなわけで思い出話をしているうちに日が暮れて、暑いわ、エアコンつけよ。もうすぐ10月だけど。





2024年9月24日火曜日

怪老人日乗:9月24日(火)

わたしは子どもの頃はずいぶん体が弱く、すぐあちこち痛くなったりしたものだが、大人になった今はすっかり健康優良児でして、体力こそないものの、あまり具合が悪くなるということはない。ピカピカおてんとさまの下で踊る、田圃のたぬきのようなやつなのだ。ゴシックのゴの字もない。吸血鬼のキュの字もない。

しかしである。今日は夜仕事から戻ってきたら頭が痛いではないか。心臓も少しドキドキ、ひょっとして……これは……ともったいぶることもないのだが、多分あれです、カフェイン切れ。私はコーヒーを水のように飲むので、おそらく長時間飲まないと離脱症状みたいのが起きてしまうのだろう。とはいえ、これまでこんなことはなかったし(丸一日飲まないこともある)今朝だって大きなカップで2杯飲んでから出かけたから、どういうことだろうか。

わたしは江戸川コナンの生まれ変わりだから推理する。推理した結果、ですね、大抵こういう時はコーヒー豆に原因があるんだよね。豆はいつも買っているものだけど、ひょっとしたらブレンドの配合が変わったのかもしれない。それによっていつもよりなんかこう、心臓がドキドキしやすいコーヒーになってしまったのかなと。

ほんとにコーヒー豆って合うあわないがありまして、あまり飲まない人は分からないでしょうし、他に書いている人もいないようですが、やたら心臓や胃にこたえる豆もあれば、まったく影響のない豆もある。よくコーヒーは胃が痛くなるから飲めない、という人がいるけれども、あれは合わない豆を飲んでいるんじゃないかなーという気がしますです。コーヒー党のわたしでも、たまにまったく飲めない豆があるからね。

でですね、今でかいカップで飲んで少しは落ち着いているんだけど、どうなのかなあ。このコーヒー豆自体が原因なんだったら、飲んでもよくはならないのか。

さて日記だ。数日原稿締め切りもなく、平和な日々であった。書き下ろしを少しだけ進め、あとはコマコマとした仕事を。明日は打ち合わせ、午後は某誌の校了、明後日は朝イチで原稿締め切りだからその準備もしないといけないし、合間にインタビューのアポ取りもして、アンソロジー解説の準備もして、書籍の目次案も作ってという感じで、まあ結構列挙すると大変っぽいなあ。

また『まんが道』を読んでいる。一日1冊ずつお風呂で読み返していて、昨日は例のいちばん怖い巻だった。怖いといっても心霊が出るわけではなく、主人公の二人組(モデルは藤子不二雄)がたくさん仕事を受けてしまい、それが帰省と重なって、原稿がうまく進まず、軒並み原稿を落としてしまう……編集者から殺されそうなくらい怒られる……という話なのだ。アンソロジー『〆切本』にも収録されたから、その筋では有名なエピソードなのだが、それを読むたび「欲張って仕事を受けすぎてはいかん」「早め早めに上げねばならん」と思い直すのであるが、まあそんなことは忘れてめいっぱい仕事を受けてしまうのでした。ドーン。

2024年9月22日日曜日

怪老人日乗:9月21日(土)

お、三日ぶりで日記をつけられた。この間は何をしていたかといえば、原稿を二つやっていたのだった。インタビュー原稿を書き、先方確認を済ませた後、次の原稿を書いてさっきまで。うーんむ。昔は一日くらいで終わっていた仕事が、今では二日とか三日とかかかる。これが加齢というものか。若い頃は「うぉりやああああ」と全集中で終わらせていたものが、今はそこまで到達できず、ずっとローギアで走り続けている感じです。むーん。

辛気くさい話題なので変えるが、そうだ、前々から「CMの間だけ王様のブランチに怪奇コーナーを作っておれを出せ-」ということを叫んでいましたが(CMの間だけ出演するというのが、十年京都に住んでいた人間の奥ゆかしさである)まさかその投稿を見たわけじゃないだろうけど、TV方面のお仕事が入る。今はホラーブームであり、ホラーを語れる書評家の数は絶対的に少ないので、こういう仕事もわたしに回ってくるのであった。

あとはですね、このブログを読んでいる人は少ないから書いておきますと来年の夏くらいまでに書き下ろしの予定が複数、アンソロジーが今年の冬から来年にかけて出ます。あとは11月創刊の某文芸雑誌の座談会が近々、11月後半には某カルチャースクールで対談。あとは普段の仕事をこなせばいいと思っていたが、さる筋から突然50枚の原稿依頼があり、さすがに急なお話だったので締め切りを延ばしてくれるようお願いする。そんなわけで、なんだかあっという間に2025年夏になりそうだ。

今夜も書き下ろしを進めます。明後日はあれだよ、町内会の夏祭りでおれはビールとジュースを売らねばならない。「これが東京怪奇酒じゃ、へっへっへ」と琵琶湖の水でも売ってやろうかと思うが、そんなことをしては琵琶湖が悲しむからやめて、まじめに働きます。「へっへっへ」は言うと思うけど。

あとですね、最近なにか美味しいもの食べましたか?わたしはクリスピークリームの秋限定のドーナツを食べました。栗と、かぼちゃと、さつまいものやつ。どれも美味しかったです。ちょっと前まで炭水化物は取らない、甘いものはなるべく控える、みたいな生活だったんですが「よく考えたら、こんなに忙しくしてるのに甘い物を食べないっておかしくないか?」とブラック企業にいる人にありがちな思考になりまして、最近は好きなものを食べています。まあ、わたしが好きなものだから大福とか、あんドーナツとかですけども。

古書が日々とどく。乱歩編集の『宝石』を注文した。怪談特集のある号である。『宝石』は何度か怪談特集を組んでいるはずで、それをすべて買うのは大変だけど、まあ買える物は買いたい。今年から来年にかけてはホラー史的な仕事が多くなり、資料はいくらあっても足りない、って話は前回も書きましたね。たしか。


2024年9月18日水曜日

怪老人日乗:9月18日(水)

アレー、もう18日? 参りましたね。こないだ日記を書いてから12日も経っているじゃないですか。まあこの間、手書きの日記はつけたりしていたのですが、ブログはブログで書きたいですよ。全世界のうち3、4人はいるであろう熱心な怪老人日乗ファンのために。

SNSのフォロワーが6000人になりまして、私のような零細文筆業者にはもったいないほどの数なのですが、一方でこのブログの読者は相変わらず(カウンターがついています。もちろん誰がどこからアクセスしているかは分かりませんのでご安心を)12人、とか15人とかです。リロードするたびに回ってしまうので、実質はもうちょっと少ないはず。こうなると怪老人日乗の内容というのはすごくレアなのではないかと思うわけですね。

なんだろう。決まったテーマがないからなのかな。よく知らないですが、お相撲とか、百合の花とか、純喫茶とか、そういうテーマがあるとですね、それなりのアクセス数がありそうなものですが、ここは自称怪老人の生活と意見ですからね。読んだら馬鹿になるという噂もあるし……。

というわけで気にせず日記。オーイ、一休さーん。はーい。と呼んでみましたが、あれは偽物ですね。タヌキの仕業ですね。

ええとですね、今日は17日だったんですよ。もう日付変わって18日になっていますが。敬老の日があって3連休明けでした。3連休は何をしていたかというと、2日目はご近所さんと食事に行ったんだけども、後はこれといって用事なかったかな。あ、思い出した。3日目はグラムロックイースターに行ったのでした。マーク・ボラン追悼イベントです。もう38回目なのですが私は生まれて初めて行きまして、ずーっと一人でTレックスを聴いてきて、特に同好の士というのもいなかったので、Tレックス好きがこんなに集まっているんだと思って感動しました。こんなにといっても130人くらいですが、それでもグラムロックという音楽の性質を考えると、結構多いと思います。

マーク・ボランについて語り出すと長くなりますし、グラムロックイースターを長年主催している秋間経夫さんについて語ってもまた長くなるので、いろいろ割愛しますが、すごくいいイベントでして、感動しました。でっかい音で、ライブで聴くとまたCDと違った発見、感動がありますね。特にファースト、セカンドあたりの曲はライブで聴いた方がずっと格好いいです。

という幸せな企画があったのですけども、その分仕事があんまり進まず。3連休で原稿ひとつ書くつもりだったのだが終わってなくて、17日にせっせとやる。送信して正午。お昼を食べて次の仕事のテープを起こしていたら午後2時。あわてて身繕いして神保町。はじめましてのH社にて新規の打ち合わせ。

これは10日ほど前にメールでご相談をいただいた件で、割と大きなお仕事。というか自分の人生のある意味、総括的なものになるような……いつかは書きたいと思っていた内容であり、渡りに船のお話なのでお引き受けする。ただし問題はスケジュールで、このまま行くと来年の夏まで大変なことになりそうだなあ。このホラ2025だってあるし……。ま、がんばろ。担当のAさんはネット怪談に熱中した世代だそうで、わたしはそこと世代的にずれているので、新鮮に話を聴く。

その後、仕事あがりの倉野憲比古さんと待ち合わせてお茶。近況報告すこしする。お互い執筆状況どうですかあ、というお話とか。そこから飯田橋K社に移動して、某誌編集作業。粛々とこなして21時。うーん、帰りが遅くなったわい。帰宅してコーラ飲んでいまにいたるわけです。これから急ぎの原稿一本だけど、にわかに眠気が………………







2024年9月6日金曜日

怪老人日乗:9月6日(金)

一昨日から昨日にかけては綱渡りのようなスケジュールンだったが、今日は比較的おだやかな……っていうわけでもないか。取材用の本読みして、質問作って送って、原稿書いて入稿して、さらに書き下ろしもやって、別のテープ起こしも2つやって……という感じで別に暇ではなかったですね。しかし金曜まできてしまうと、「もうどうもこうもない、間に合わなければ次の勝負は月曜だ!」という感じになるので、腹が据わるというか、諦めがつくというか。だから前も書いたと思いますが、わたしは金曜の夜がいちばん好きです。

んで。わたしはメールアドレスをネットで公開していますが、それを知るにはこのブログを読まないといけないわけです。最近これまでお付き合いのない出版社の方から、よくお仕事関連のメールをいただくのですが、ということはこの珍妙なブログを皆さんお読みになっているわけで、まあXを開くとワニの絵、ブログを開けると怪老人で、行き場なしの狂気迷宮。わたしだったらまずコンタクトを取ろうと思わないのですが、それでもメールをくださる方々は、その時点で「いいね!」ボタン×1万だと思います。見つけてくださりありがとうございます。

昨日は神保町で久しぶりに取材。それまでぎりぎりのねじりハチマキで原稿書いており、できあがったのが電車に乗る20分前。大慌てで側転しながら駅に向かい、自分の生首を抱えながら電車に飛び乗りまして、取材が2時間ほど。お腹が減ったので何かを食べねば食べねば……と思っているうちに池袋についてしまって、結局スーパーのイートインでジュースを飲んで帰りました。喫煙者だったはるか昔は、自宅に帰る前にどこぞで一服、という感じだったのですが、いまは健康にジュースを飲んでいます。ジュースは健康じゃないのかな、水かな、健康なのは。しかし水飲んでかえっても全然面白くないな。

わたしはホラーな仕事が多いわけで、この仕事自体は10年、15年まるで変わっていないんですが、社会という川の流れが変化したのと、SNSによってわたしの活動が人目につきやすくなったのとで、ホラーに関するお仕事をいただく機会が増えました。しかしくり返し言いますけれども、わたしはずっとこんな感じで変わらないのです。ホラーを読んで、それを紹介してという人生だったのです。このままブームが盛り上がり、クイズダービーに出たいと思いますが、もうあの番組ないんだっけ。そもそもルールが分からないんだよな、クイズダービー。田中角栄に1万点、瀬戸内寂聴に6万点。

あとはですね、そうそう、踏み台昇降のことって書いたっけ。あ、書いた気がする。書いてないか。それは手書きの日記帳に書いたんだ。最近筋力の衰えと重力の衰えをともに感じるようになりまして、重力が衰えたらみんなふわふわ浮かんでITの世界ですが、筋力が衰えたら杖をつくようになるので、そうならないように足腰を鍛え始めました。美容師さんが「踏み台昇降いいですよ」というので真似をして、家の階段で足踏みしております。なかなか汗をかきますね。本を読むとき、じっとしているとなかなか集中が続かないんですが、踏み台昇降しながらだといい感じで進む、進む。

ところでこの美容師さんには10年お世話になっていて、以前は同じバイクに乗っていたこともあって、また世代的にUKロックが好きなこともあり、音楽の話、イタリアンスクーターの話、などが多かったわけですが、最近は健康の話が増えまして、心臓が悪くなって入院したとか、そういう話ばかりであります。それはそれで楽しいです。

何か告知はないかな。今日あたり発売の『ダ・ヴィンチ』10月号にて、辻堂ゆめさんにインタビューしています。『ダブルマザー』(幻冬舎)について。一人の娘に母親が二人、というミステリアスな状況をサスペンスフルに描いた、家族ミステリーです。面白い本ですよ。




2024年9月3日火曜日

怪老人日乗:9月3日(火)

おっほっほ。こんにちは、9月3日の怪老人日乗です。先週は北海道函館シティに帰省しておりました。わたしが8歳まで育った函館市柏木町というのは某造園会社が広大な土地を所有していて、そこに住宅地が建っていたため、奇跡的に40年も再開発されず砂利道が残っている、というタイムカプセルみたいなエリアだったのですが、今回の帰省でそのあたり一帯、更地になっていることが判明。こんなことなら一度見に行っておくのだった。

今回の帰省ではレンタカーでニセコの方までドライブ、山の中のホテルに一泊してきた。ニセコというのはスキー場で有名なところで、冬場は外国人観光客でいっぱいだというけれども、夏場にスキーをやる頓珍漢はおらず、比較的空いておりました。あらためて思ったが北海道は道が広い!どこまでもまっすぐの道が続いており、うわー、アメリカだー、と思いました。

函館シティというのは北海道でも南の端で、しかも漁業・海運・造船の街ですから、いわゆる牧草地とかあんまり見たことがないんですよね。今回の旅行であらためてTHE北海道な景色を堪能して、こういうのがみんなが想像する北海道だよなあ、と思いました。しかしこれだけ雄大な景色の中から、京極夏彦さんのような日本文化の粋みたいな人が出てきたのはどういうことなんだろうか。

お休みの間に携帯を落として、画面がバッキバキになったこともあり、最近はあまり携帯の電源を入れていません。メールとかSNSは空いた時間にPCでチェックしていますが、基本的にはオフラインな感じ。まあ急ぎの連絡もそうあるわけでもないし、この方が気持ちが落ち着いていいです。昔つけていたノートを引っ張り出してきて、日記を書いたり、仕事のメモを取ったりしている。最終的には手書きが一番いいんではないか、という気持ちになっているのだよ。

お仕事告知の介。『怪と幽』vol.17に原稿を書いています。稲川淳二さんのインタビュー記事、背筋さん『穢れた聖地巡礼について』新刊インタビュー、いつもの書評。『視禍 ホラークリエイターズファイル』(玄光社)に文章を寄せました。ホラーとアートについてのエッセイ。わたしの超ファンの人は逆立ちしながら読んでみてください。そうでもない人は立ち読みしてみてください(買ってから)。





11月に出るはずの新しい本のゲラが届きました。こっちの作業も進めつつ、書き下ろしAと書き下ろしBも進めつつ、側転もして、超能力学園にも通う。


2024年8月24日土曜日

8月24日(土)

夏休みというのは40日くらいあるのである。わたしは北海道の人間なので、その感覚がよく分からないのだが(北海道は夏休みが短い)これはかなり長いのではないか。子供にとっては永遠にも思えるような時間ではないのか。しかし大人にとっては悲しいことに一瞬であり、先日夏休みが始まったねえ、カメでも撫でようかねえ、と思っていたらもう8月24日ですよ。びびびのびっくり。カメを撫でるどころかまだ探しにもいっていない。カメはどこにいるのだ。チーズはどこに消えた。ひげよさらば……。

という感じで今日も日記を書いているわけです。わたしがですね、こういう意味もない日記を書いていることを世間で何人が知っているのだろうか。たぶん10人……多くて20人……カメの数より少ない。カメはほらあれだ、1兆匹とかいるからね。宇宙も合わせると。

そんなわけで。日記を書くのだ。日記といえば小学生の夏休みの宿題で一行日記というのが出ている。へえ、こんなのがあるのかあと思って見ている。わたしならなんて書くかな。全部の行に南無阿弥陀仏と書くだろうな。そして怒られると思いきや表彰されて国会に行くんだ。国会議事堂のてっぺんで阿波踊りを踊るんだ……。乱れどんぱん節……。

という風にいつまで経っても本題にいかないのがすごい。しかしわたしはこういうポストモダン的な文学はもったいぶっていて正直あまり好きではない。とっとと本題にいけよと思う。きみの文学的狙いなど知らないぜとも思う。そんなわけでホラーならストレートなアメリカのホラーか怪奇の技巧を凝らしたイギリスのホラーが好きですね。ドイツも好き。

で。日記を付けるんだけれども。昨日まで苦労して書いていた原稿があり、それがやっと仕上がった。水曜の時点で「そろそろ出来ます、下書きまで入ってます」と回答した原稿3000文字だが、その下書きがいまいちピンとくるものではなく、木曜丸一日かけてたたき直し、ちょっと寝て金曜は深夜0時に起きて朝までかかって仕上げる。ふう、さすがに疲れた。

結局今週出せた原稿はひとつのみ。3つ書くつもりだったが、なかなかそううまく行かない。その後自宅で編集仕事などを。夜はZoom取材が一本あり、そんなかんじでウィークデイは終了。某所からイベント出演の打診があったが、わたしには難しい内容だったので申し訳ないが辞退する。先日も別件で同じようなお断りをした。すみませんねえ。器用じゃので主にホラーのことしかしゃべれないのです。

で昨日の夜は休憩しつつ『キテレツ大百科』を配信でみた。キテレツ君のご先祖が奇天烈斎だというのは知っていたが、猛烈斎というライバルまでいたとはしらなかった。しかも江戸時代にどっちが一番の発明家か競って、猛烈斎は切腹しているという案外に陰惨な話。コロスケはかわいいですね。藤子不二雄、わたしの世代はみんな好きだが、それは子供の頃にさんざんテレビでやっていたからで、今はドラえもんくらいしかやっていないので、馴染みのない方も多いのだろうな。基本的な情報をおさらいすると、藤子不二雄はFとAからなるコンビで、どちらも好きだがわたしはやはりAの方が好き。怪奇で陰気で、話も投げっぱなしのものが多く、滲み出るような負のオーラがとても心地良い。「怪奇の血」ということを菊地秀行が一時よくいっていたが、藤子Aには怪奇の血が濃いように思う。これはまあ単純に好みの問題で、Fももちろん面白いと思います。

土日で原稿2つやれるかなあ。編集仕事もあるし、家族も帰省してしまったしで、子供を風呂にいれたりご飯を作ったりもせねばならぬ。今日も適当な写真を貼ります。長髪の時代の写真が出てきた。15年くらい前かなあ。






2024年8月18日日曜日

怪老人日乗:8月18日(日)

匂いおこせよ梅の花、というわけでこの春を思い起こしてみますが、毎日8時間労働、土曜は必ず休んで書き下ろしの作業を進める、といういいサイクルだったんですねえ。しかし7月くらいからガタガタと繁忙期に突入し、あっという間に一日中また仕事する身に。そうでもしなければ間に合わなかったからなのだが、今やっと落ち着いてきたのでまた書き下ろしに戻らないとなあと思っているのです。今日も少しやろう。

というわけで近況である。こういう普通の日記も、なかなか暇がないと書けないのであった。心の余裕の問題ですね。シャー!(蛇の鳴き声)

意味が分からないので改行しました。さて、蛇で思い出しましたが沖縄で大きな蛇を触ったことがあったなあ。思いのほかザラザラしていて、乾燥している。ああいうのに巻き付かれたら、乾いた麻縄で首を絞められているみたいな感じで、苦しいのもあるけれど痛いんじゃないでしょうか。そんなことを思った土曜なのでした(これを書き出したのは土曜日)。あ、今洗濯物がボトッと落ちた。心霊現象だ。

心霊現象のせいで日記の公開が遅れてしまい、今は日曜日である。今日も今日とて仕事。というか昨日はあまり捗らなかった。そもそもお米があまり売ってないぞ、ということになり、そういう騒ぎに便乗するのは品薄を助長するようでいやなのだが、ちょうどうちのお米が切れかかっていて、仕方ない、少し遠くまで買いに行ってみよう、隣県ならあるだろう、とわけで所沢の道の駅までバイクを飛ばす。

隣県といってもうちは東京のかなり西の方だから、30分も走れば着くのである。緑の濃い、左右が茶畑のいい感じの通りを走って着いた、着いた。おはぎや珈琲豆など売っていて楽しそうな店だが、しかしなんとここにもお米はないのだった。いや、正確にいうとある。高いお米だけが売れ残っている。というわけで、テレビなどでしばしば報道されているとおり、お米不足なのではなく、安いお米から順番に売れていき、高いお米だけが残っている、という状況のようらしい。とりあえず買わずに帰る。

帰宅してのろのろと仕事。夕方もあれこれ外に出る用事があって、あんまり捗らず。そもそも目の前に「もうあかん」の5文字が点滅しないとエンジンがかからないという、困った性格なのである。台風一過、なんだか暑いような気がする一日で、夏のような感じのする午後だった。わたしはボンヤリしているので暑い寒いがあまり分からず、季節感とかにも鈍感なのだが、昨日は少しだけ夏っぽいような気がしたような感じがした。

で今日。朝からまた怠けそうになっているので、あわてて日記を付け終えて、これから原稿書きを本式に。書き下ろしも進める。午後から町内会の役員会で、お祭りの相談があるらしいが、わたしは宇宙のルールで生きているから、何を聞かれても「U・F・O」と答えようと思う。画像を貼りたいけど、いい画像がないな。何かありますかね。適当にフォルダから探します。





2024年8月16日金曜日

怪老人日乗:8月16日(金)

さて皆さん、という書き出しをすると「浜村淳です」と続けたくなるのだが、わたしは浜村淳ではないので普通に続けますが、また日記の間が空いてしまいましたね。たまに「ブログも読んでます」と言ってくださる方がいて、そういう方は世界でも数人しか存在しない、超レア国家の激レア国民なのですが、そんな方々の期待を裏切り申し訳ないことでごんした。拙者、薩摩の生まれでごんすが、育ちは南極でごんす。小学校は北極でごんした。

というわけでだな、気づけば8月も後半ですよ。いろいろ考えたくないことがあるが(仕事が遅れているということです)暑さ寒さも彼岸まで、そろそろ冬になるのでしょう。毎年書いていることだけれども、一年の過ぎるのは早い。マッハの速度で季節がめぐる。いや、季節の循環というのはそもそも超高速マッハの速度なのであって、幼少期にはそれに気がつかないだけなのかもしれない。ぐるぐるぐると、ちび黒サンボの虎のように高速回転しているのが世界の本当の姿で、人間はそれにちらっと手をつけて、およよ、と言っているうちに一生が終わるのであろう。

ええとですね、この日曜日、といっても5日ほども前だが、気分的にはちょっと前だ。加門七海さんの新刊刊行記念トークイベントにゲスト出演しまして、場所は新宿歌舞伎町のロフトプラスワン。お客では行ったことがありますが、出演者として行くのは人生初で、中二階(地下だけど)みたいなところにある楽屋にも初めて入りました。ザ、ライブハウスの楽屋!って感じのたたずまいでよかったです。加門さんはむしろ新宿LOFTの方によく行っていたそうで、「パンク、スターリンとか」を見てたとおっしゃっていました。ちょっといい情報。


(ロフトプラスワンは歌舞伎町のど真ん中、ゴジラビルの近くにある)

さて加門さんといえば怪談・ホラーの第一人者であって、わたしは怪談雑誌『幽』のライターになったあたりから接点が生じ、加門さんが出演されていた怪談イベント(怪談の宴、とか)もお客として見に行っていたので、自分がトークゲストとして呼んでいただくのが不思議な感じ。加門さんの怖い話は絶品なので、それを横で聞けるのは役得だなあと思っていました。

で楽屋で待機していますと、客席の方が加門さんにドリンクを差し入れして「おお、かっこいい、大人のお客さんだ」と田舎者らしく感嘆していましたら、それを見ていたKADOKAWA編集のKさんが、気の毒がってわたしにもドリンクをおごってくださいました。ありがとうございます。12時開場でどんどんお客が入り、端の方まで結構な入り。暑い真昼間、しかも3連休の中日にありがたいことで、加門さんの人気の高さの証でしょう。13時開演で、10分ほどの休憩を挟みつつ、新作のお話を軸に、呪術のこと、神社のこと、幽霊のこと、作品の舞台になった歌舞伎町とネズミのこと、などいろいろと。わたしは霊感の類がまったくなくて、そういうのは鈍感な方だと思っているので、おばけの見える加門さんに素人目線であれこれ質問させていただきました。

いろいろ怖い話が出たのですが、一番ゾッとしたのは加門さんがなぜコロナの感染対策をしっかりやっているか、今日のイベントもなぜマスク必須で開催したか、というお話。初めてする話とおっしゃっていましたが、うわあという内容で、あらためて疫病って怖いな、と思いましたです。配信の冒頭に入っているので、興味のある方は聞いてみてください。

わたしは10数年ずっと気になっていた浅草での出来事(夜の神社で加門さんに声をかけられた話)とか、京都御所でジンギスカンをやろうとして皇宮警察に怒られた話、などを披露しまして、15時前に無事終了。その後はサイン会。わたしの持参した本も結構売れまして、ありがたいことでした(版元からの買い取り本だったので、売れなかったら赤字でしたのよ)。わたしのところにもサインに来てくださる方がちらほら、いろいろ差し入れもいただき嬉しかったです。ツイッターで交流のある方にワニ絵も描きました。中にはずっと原稿をお待たせしている編集さんの姿まで。ペコペコと頭を下げまして、いやあ、ドキドキしましたがこういう場で会えてよかったです。

その後、光文社さんの編集さん交え、加門さんと軽く歌舞伎町で打ち上げ。わたしはお酒が一切駄目なのですが、実は最近ノンアルコールビールを飲むようになり、はははは、我は酒豪じゃ、という気分で2杯飲みました。千鳥足でマンホールに落ちそうになりました。加門さんがプリンを食べていたのがちょっと羨ましく、帰り道、池袋に寄って珈琲館でパフェを食べて帰りました。

そんなわけで配信チケットがまだ買えるので、へえ、そんなのやってたんだ、結構いいじゃん……と不良少女のような口調で呟いた人はですね、買ってみてください。今、ホラー・怪談系のイベントが山のようにあって、こんなにあったらみんなチケット買うの大変だよなあ、給料やお小遣いなくなるよなあ、と氷河期世代としては正直思うのですが、加門さんの怪談・呪術トークは作り込んでいないがゆえの怖さがあって、たいへんおすすめです。









2024年7月26日金曜日

怪老人日乗:7月26日(金)

友成純一氏の訃報。最初に読んだのは何だったろうか。おそらくちゃんと読めたのはアウトロー文庫の『獣儀式』なのだが、それ以前から伝説的な名前は伝わってきていて(主に綾辻行人氏、竹本健治氏の文章から)断片的に文章は読んでいたような気がするな。やっぱり印象深かったのは『ウロボロスの偽書』の作中人物としての姿だろうか。あ、作品を読んだのは角川ホラー文庫の『幽霊屋敷』が最初か。当時はあれを読んで、うーん、よう分からん、河童が出てきた、と思ったのだが(河童ビギナーだったので)、その後『獣儀式』をアウトロー文庫で読み、あらためてこりゃすげえとなりまして、『陵辱の魔界』を読み、こっちはSFっぽかったからあまりハマらなかったけど、相前後して20世紀末に雑誌『ホラーウェイヴ』の2号で友成純一特集があり、それで本格的に開眼したのかなあ。

しかし昔はノベルスの古本なんてほとんど手に入らず、電子書籍もなかったですからね、大森望氏がよく言及する『宇宙船ヴァニスの歌』なんてどこに行ってもお目にかかれず、『吸血山脈』『人獣裁判』とかを運良く函館のブックオフで見つけ、大喜びで読んだのは数年後の話。一方で友成氏の映画評論もよく読んでいた。ペヨトル工房の映画評論『内臓幻想』は京都の三月書房(今はなき)にずっと置かれていて、長年眺めまわしてからやっと買ったのだった(いや、買ったのは四条通のブックス談かも。このあたり記憶が曖昧)。面白かった。その後『人間廃業宣言』『暴力/猟奇/名画座』も新刊で買って読んで、この2冊は『内臓幻想』以上に友成さんの世界観が色濃く出ており、名著だと思う。クローネンバーグ論、バーホーベン論などは自分の血肉になっていると感じる。友成さんの資質に一番近い映画作家は、クローネンバーグだったのではないだろうか。

でも一番はまったのはエッセイだ。Xにもちらっと書いたけど大学4年の時に泊めてもらった東京の友人宅(西武新宿線の鷺ノ宮駅)のそばにあった狭い古本屋で、『びっくり王国大作戦』が3冊並んでいるのを見つけ、へえ、友成純一のエッセイだ、と思って1巻目だけ買って京都に帰って読んだらまあ面白いこと。海外の実銃射撃ツアーのこと、うる星やつらのこと、ホラーのこと、ロンドンのこと。あれこれが楽しく書かれていて、なんかこういう風に生きられたらいいなと淡い憧れを抱いたものだった。モラトリアムの気分とよく響き合ったのである。

その後、当時はAmazonなどありませんので日本の古本屋などを駆使して『続びっくり王国大作戦』『新びっくり王国大作戦』『ローリングロンドン』も買って読んだ。どれも面白いのだが、一番好きだったのは東京を離れてロンドン移住を決意し、ヨーロッパの映画祭を巡ってさまざまな珍体験をする『続びっくり王国』だろうか。異邦人として暮らすロンドンの日常がとても刺激的で、向こうで上映されているカルトな映画のことなどが「ほらほら、こんなに面白いものがあるんだぜ」という独特のノリで書かれていて、読んでいるこちらまで楽しくなる。まあこういう文章は景気がよかったバブル日本の時代を背景にしているのは否定できないし、友成さんも現代に生きていたらこういう生き方を選んでいたかどうかは分からないが、それでも文章で身を立てながら、神出鬼没で世界を渡り歩く友成さんがとても素敵に見えたのですね。あの時代でしか成立しなかったという面も含めて、なんだかとても愛おしいエッセイだ。

今世紀になって出た小説『ストーカーズ』などは往年のエグさがないだけに普通のモダンホラーになっており、そうなるとストーリーや人物描写が精緻化していった近年のエンタメ小説や、怪談実話の手法を取り入れて進化していった現代ホラーの中では埋没してしまうきらいがあって、そのあたりは勿体ないことだったと思う。『ホラー映画ベスト10殺人事件』とか『黒魔館の惨劇』などの復刊もあったが、本格的なリバイバルには繋がらなかったようだ。むしろバリ島を舞台にしたおそらく私小説的要素を含んだシャーマニックホラー『邪し魔』などの方向に、友成ホラーの新たな可能性があるような気がし、そちら方面の作品をもうちょっと読んでみたかった。

友成さんとは一度もお会いする機会がなく、こちらが公にした文章の中でもあまり言及したことはない(『幽』の書評で『蔵の中の鬼女』を紹介したことがある)が、ずっと気になる作家の一人であった。日本のホラーのある時期を支え、菊地秀行氏、朝松健氏などとはまた違った形で、シーンを牽引した人だったように思う。今書いてる現代ホラー100選の中でも友成氏の90年代の作品を取り上げる予定で、すでにその部分の原稿も書き上げているのだが……刊行が間に合わなかったのが悔やまれる。ご冥福をお祈りする。