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2017年8月23日水曜日

『GON!』vol.6に誌上百物語を発見!


こんな夢を見た。
某直木賞作家氏の自宅になぜか招かれている。
急な階段のある、妙に縦長の家だ。呼ばれて2階から降りると、1階のリビングに大きな作業台のようなテーブルがあり、そこに『GON!』のバックナンバーが積まれている。


「どれでも好きなのを読んでいいですよ」
直木賞作家氏(かっこいい男性)は爽やかにそう云うと、上に積んである号に手を伸ばした。ああ、この人も『GON!』を読んでいたのか、そう思ったら嬉しくなった。
 ……というところで目が覚めた。
実話である。


扠。
90年代に思春期を過ごしたサブカル者にとって『GON!』は忘れがたい雑誌であろう。
当時、サブカル雑誌といえば太田出版の『クイック・ジャパン』とミリオン出版の『GON!』が双璧だったけれど、わたしは断然『GON!』派であった。
今でこそアイドルとお笑いに特化したカルチャー誌である『クイック・ジャパン』。90年代にはどこか都会的で斜に構えた雰囲気が漂っており、地方の素朴な高校生にはなんだか恐ろしく感じられたのだ。
その点、『GON!』はひたすらに下らなくて安心だった。





手元に残ってる『GON!』vol.6(1995年4月20日)の目次から適当に抜き出してみる。
「未だに戦い続ける2人の兵士」
「オバサン解放同盟 OBA-KING」
「悪趣味図鑑 ザ・食人族 世界食人族MAP他」
「これが見世物小屋」
「史上最強のオカマ」
「究極のマリファナ品評会」
「誌上シミュレーション第2弾 大東京クーデターマニュアル」etc、etc……。


いくらかは誌面のカオスな雰囲気が伝わるだろうか。
他にもごく普通の素人さん(=U夫人)が「あたしのファンクラブ作ってください」といってヘン顔を載せていたりもする。一体誰なんだ、U夫人って(笑)。


すべての記事が悪趣味とバカとテキトーのオンパレードであり、それがこの雑誌特有のメチャクチャなレイアウトと相まって、読む者を現実の裏通りへと誘いこむ。
あの頃「クイック・ジャパン」を読んでいたなら、もうちょっとだけ売れ線のライターに、と夢想しないでもないが、こちらの方がしっくりきたんだからしょうがない。


で。
書棚から出てきた同号をぱらぱら懐かしくめくっていたら、こんな記事を見つけてしまった。
「人体実験シリーズ第2弾 百物語漂流記」である。 




これは怖いもの知らずの同誌ライターらが百物語を敢行しようというもの。
基本、肝試しのノリだが、お寺の本堂でちゃんと蠟燭をともしてやっているのがエラい。


百物語怪談会を100話完全収録したものとしては、菊地秀行らによる『文藝百物語』(単行本はぶんか社)、『幽』ブックスの『女たちの怪談百物語』『男たちの怪談百物語』(単行本はメディアファクトリー)がよく知られていよう。
いずれも近年の怪談文芸の隆盛を語るうえで重要な試みだが、まさかこれらに先だって『GON!』誌上に百物語が採録されていたとは思わなんだ。


『GON!』らしいページレイアウトでみっちり、4ページに全百話の怪談を収めているので、字が小さすぎて読む気が起こらないのだが……。
とにかく。
百物語形式をあらためて世に知らしめた『新耳袋』新装版の刊行(1998年)に先立つこと約3年、90年代を代表するサブカル誌『GON!』でこのような試みがなされていたことは、本邦怪談史において記憶されてしかるべきではないだろうか。
違うだろうか。違う気がしてきた。


(なんてったって字が小さい!)




2017年8月22日火曜日

雨だから『コックリさんの父 中岡俊哉のオカルト人生』を読む。


今年は全国的に雨の多い8月となっている。
日照不足による農作物の不作など各方面でさまざまな影響が出ているようだが、わたしにとってもこの長雨は困ったものだ。


なぜって、先日阿佐ヶ谷の古本屋で購入した『デニス・ホイートリー黒魔術小説傑作選』をまだ受け取りに行けていないのである(購入のいきさつについてはこちらを参照)。


晴れた日にバイクで受け取りに行こうと思っているのだが、いまにも雨が降り出しそうな空模様を眺めていると、なかなか踏ん切りがつかない。買ったばかりの『傑作選』がびしょ濡れに、なんてことになったらショックで娘を悪魔に差し出すしかないぞ!(娘いないけど)
で、ずいぶん経つのにいまだお店に預けっぱなしになっている、というわけ。


そんなわけなので。
曇天の下、新刊本を読んで過ごしている。
昨日ネット書店より届いたのは岡本和明、辻堂真理『コックリさんの父 中岡俊哉のオカルト人生』(新潮社)。
1970年代、オカルトブームの牽引役をつとめた中岡俊哉の評伝である。
著者の岡本氏は中岡俊哉の実子にして演芸研究家、辻堂氏は放送作家で中岡の「最後の弟子」にあたる人物であるという。




実は以前、岡本氏とお仕事をご一緒したことがあって、その打ち合わせの席上「親父の評伝を書いているんだよ」とおっしゃっていたのをよく覚えている。猛烈に「読みたい!」と思ったものだが、それがついに叶ったというわけだ。


戦前、馬賊を目指して中国大陸に渡り、終戦後は北京放送局にアナウンサーとして勤務。その後は著述家となりベストセラーを連発する。
オカルト業界の巨人にふさわしいそんな波乱に富んだプロフィールはなんとなく知っていたが、そもそもなぜ北京のアナウンサーがオカルト研究の道に? という肝心要の部分は謎のベールに覆われており、長年の疑問だった。


これを読んでその疑問が氷解。
本書は中岡本人の肉声や親しかった関係者の証言を交えながら、 その知られざる人生の軌跡をたどっている。
3度の臨死体験、内外の超能力者との交流、自腹を切っての海外取材、ヒーリングパワーへの深い関心。そんなエピソードの数々から浮かび上がるのは、「実見型超常現象研究家」としての中岡の素顔だ。
生前、幅広いジャンルのオカルト本を執筆し、コックリさんや心霊写真のブームを巻き起こした中岡だが、決して超常現象全般を肯定していたわけではない。むしろその真偽については厳しい目をもっており、自分で確かめたものしか取りあげようとはしなかった。


行方不明少女の遺体を発見したことで伝説化しているテレビ番組「水曜スペシャル」の舞台裏についても、詳しく触れられていて貴重。超能力者クロワゼットへの依頼から遺体発見、番組放映までの経緯が、時系列で語られている。このあたりはテレビマンである著者(辻堂氏)の面目躍如という感じがする。
それにしても中岡が楳図かずお『へび少女』の原作まで手がけていたなんて!!驚き~。
オカルトファンには無類に面白い一冊なので、お天気の悪い日にぜひどうぞ。


なお。
本書単行本のカバー裏にはコックリさん文字盤が印刷されている。
中岡と二見書房が『狐狗狸さんの秘密』にコックリさん文字盤を、『ピラミッド・パワー』にピラミッド模型の型紙をつけたひそみにならったものだろうが、こういう遊び心は嬉しいですね。

……お……も……て……な……し……。

あ! 10円玉が動いた!
そう、こういうのをおもてなしの精神というのである。
 




2017年8月4日金曜日

この夏の課題図書、『21世紀ホラームービー年代記』


これは便利だ!


何がって『21世紀ホラームービー年代記』(山崎圭司、岡本敦史、別冊映画秘宝編集部編/洋泉社)ですよ。
これはタイトルのとおり、21世紀に入って造られたホラー映画のガイドブックなのだけど、いやあ、拝みたくなるくらい便利ですね。こういう本を待っていた人、多いんじゃないかな。


(表紙でほほえむアナベルちゃん)


ひとくちに「21世紀ホラームービー」といってもその作風は多彩、しかもどことなく散漫漠然としており、一介の映画ファンにはこれまでどうにも全貌を把握することが難しかったのですよ。


ゾンビが全速力で走る一方、拷問やデスゲームが暗い部屋で繰りひろげられ、POVの手ぶれ映像をやたらに見せられたかと思うと、古典作品のリメイクが次から次と現れる。とりあえずそんな印象はあるのだけど、じゃあ、21世紀ホラーとは何だったのか、この20年弱の間にホラーに何が起こったのか。そう正面切って問われると、答えるのはなかなかに容易ではない。
同じように感じているホラー映画ファンは、きっとわたしだけではないと思う。


で。
本書はそうした疑問に、圧倒的な情報量をもって答えてくれる良書だ。


なんといっても特筆すべきはその情報の濃さ、深さである。
人気タイトル、有名シリーズの紹介はもちろんのこと、ジェイソン・ブラム、ジェイムズ・ワンら21世紀ホラーを語るうえでは欠かせないキーパーソンの経歴(有益!)、21世紀のアメリカン・ホラー十傑と裏十傑(わが偏愛の『ファイナル・ガールズ』が選ばれていて嬉しい)、2000年代に狂い咲いた〝拷問ポルノ〟系作品や古典リメイクの総括、さらには誰が見るんだよという動物パニックホラーまでを網羅(ここも無駄に情報量がすごい)。


ホラー映画といってもハリウッドに偏らず、フランスやスペインなどのヨーロッパ各国、韓国や香港に東南アジア諸国、日本国内の動向までをきちんとフォローする視野の広さ。それを支えているのは、一騎当千のライター陣の活躍である。インドネシアやベトナム、トルコのホラー映画事情まで分かってしまうんだから、これで定価1500円はお安いといえる。


本書を手にいれて約10日間、舐めるようにページを繰った結果、これまでとっちらかっていたレンタル屋のホラー棚が、ギューッと整理されて頭に収まった。作品やキャストの情報はもちろんウェブでも得ることができるけれど、こういう凝縮効果を得られるのは紙の書籍ならでは、という気もする。


本書を読んでいるととにかくホラー映画が観たくなり、途中で観るのをやめた『ファイナル・デスティネーション』も最後まで付き合ってみようかしら……という気にさえさせられた。
で。
とりいそいぎ本書の記事に惹かれ、現在公開中の『ウィッチ』を鑑賞してきた。
うむう。塩加減が絶妙な、ハードかつリアルな魔女ものホラーでした。
森の奥から不穏な気配がじわじわ漂ってくる映画なので、アーサー・マッケンあたりが好きな人は是非。
 



2017年7月2日日曜日

6~7月はホラーの当たり月だ!


6月後半。
なぜだかお金がないなあ、とつい財布の底を覗きこんでしまっていたのだが、はたと理由に思い至った。
そうだ。
先月は『定本夢野久作全集2』の支払いがあったのだ。本体価格9000円。国書刊行会に予約注文しているから若干割引にはなっているものの(なるんです)、そりゃあお金が減るわよね。





さて。
月もあらたまったことだし、またまた本を買いに行きましょう。
どういう星の巡り合わせか、この6月、7月はホラーの当たり月なのである。気になる本がバンバン出ている。これからもじゃんじゃん出る。
以下、買おうとおもっている本を備忘録的に列挙しておきたい。


まずは。
朝松健先生の新刊『アシッド・ヴォイド』(アトリエサード/書苑新社)が出ている。
ファン待望のクトゥルー神話短編集で、ジョン・キール的な恐怖に挑んだ「闇に輝くもの」、海外のアンソロジーに発表された「球面三角」、ウィリアム・バロウズに献げた書き下ろし新作など7編を収録。
アトリエサード/書苑新社の本は近所には売っていないんで、近々大型書店まで回収に行かなければ。


そいから。
国産ホラーの俊英、澤村伊智さんの新刊『ししりばの家』(KADOKAWA)はすぐにでも読みたい“家もの”ホラー。いやあ面白そう。


最東対地さんの『♯拡散忌望』(角川ホラー文庫)は、タイトルから察するに衝撃のデビュー作『夜葬』同様に伝染系のホラーかしら。どんな第2作を書かれたのか楽しみです。


郷内心瞳さんの『拝み屋怪談 来たるべき災禍』(角川ホラー文庫)が出ています。
そういえば先日、某社エントランスでばったり郷内さんに出くわしたのだった。彼はあいかわらずジェイソンの黒いTシャツを着てたなあ(笑)。この「拝み屋」シリーズは毎回楽しみに読んでおります。郷内さんといえば『拝み屋異聞 うつろい百物語』(イカロス出版)も出ていますね。


夏が近づいているからか怪談実話は他にも注目作が出ており、平山夢明さん久々の実話本『怪談遺産』(竹書房)、 “里山”にまつわる懐かしいテイストの怪談を蒐集したcocoさん他『里山怪談』(KADOKAWA)はともに入手済み&読了。


フィクションに話を戻すとスティーヴン・キング『ダークタワーⅣ-1/2 鍵穴を吹き抜ける風』(角川文庫)が『ダークタワーⅣ 魔道士と水晶球(上・下)』(角川文庫)と同時に出ています。
『魔道士と水晶球』は過去に新潮文庫から出ていたものと同内容ですが、『鍵穴を吹き抜ける風』は本邦初訳作品!今回の新装角川文庫版の目玉ともいえる巻で、これは楽しみです。


三津田信三さんの幽霊屋敷ホラー『わざと忌み家を建て棲む』(中央公論新社)は7月19日発売。いわくつくの部屋や家を一軒にまとめて建て直して住んだらどうなるか、というとんでもない話の模様。


そして、これから出る本でいちばん楽しみなのがこれ。
井上雅彦さん『夜会 吸血鬼作品集』(河出書房新社)
これまでありそうでなかった、井上卿の吸血鬼作品傑作集。ああ、どこかの媒体で井上雅彦先生にインタビューさせてくれないものだろうか。


病み上がりでまだリサーチが足りていないのですが、今気になっているのはこのあたり。
怪談じゃないけど小島水青さんらが名作文学を“二次創作”した『名作転生 悪役リメンバー』『名作転生 脇役ロマンス』(学研プラス)も気になります。




2017年6月12日月曜日

この週末に買った本


ホラー関連の新刊チェックのため新宿の大型書店へ。
以下の3冊を回収してきた。




ホラーとダークファンタジーの専門誌『ナイトランド・クォータリー』9号(アトリエサード)は、「悪夢と幻影」特集。
怪奇幻想文学とは縁の深い“夢”をテーマに、国内外の作品11編を掲載している。


『NLQ』といえば、ホラーの目利きである牧原勝志編集長による作品選定が最大の魅力。
今回もエドワード・ルーカス・ホワイト、М・P・シールらの古典系作家から、リサ・タトル、アンジェラ・スラッターなどの現代作家まで、かゆいところに手が届くセレクションで楽しませてくれる。
国産ホラー界の新鋭・澤村伊智が短編「夢の行き先」で『NLQ』初登場を果たしているのも嬉しい。
この週末に81ページまで読みましたが、いやあ面白いのなんの。1700円+税のもとは十分とれるので、怪奇幻想小説ファンはぜひお手元に。





ところでこれは余談なのだが。
「ルクンド」のE・L・ホワイトって「ジャンビー」のH・S・ホワイトヘッドとよくごっちゃになりません? わたしだけ? だって名前が似てるし、作風も若干かぶるし。しかも『NLQ』の作品解説によれば、ホワイトヘッドはホワイトを高く評価していたらしい。ホワイトヘッドの「唇」はホワイトの「ルクンド」を踏まえており、ホワイトの「アーミナ」の続編を企図したようにも読めるのがホワイトヘッドの「チャドボーン奇談」で……。ああ、ますますごっちゃになってきた!



黒木あるじ『怪談実話 終』(竹書房文庫)は、2010年刊の『怪談実話 叫』以来書き継がれてきた人気シリーズの最終巻。
あとがきによれば、一旦は怪談実話から離れることになるらしい。「これまでとはやや異なる視点で怪談にアプローチしたい」ということなので、黒木さんの今後の動向に注目である。





皿井垂『トラウマ日曜洋画劇場』(彩図社)は、1970~80年代にかけてテレビの洋画劇場で放映された映画49本をレビューしたもの。
この手のB級映画ガイドは見かけるとつい買ってしまうが、ジャンルや監督、制作年代ではなしに、「洋画劇場」というくくりで紹介しているのが新しい。


たとえば第三章「水曜ロードショー」では、『午後の曳航』『世界残酷物語』『ウィークエンド』『ダラスの熱い日』『恐怖のメロディ』『狼男アメリカン』『ウィラード』『ドラゴンへの道』『カサンドラ・クロス』の9本が取り上げられており、 ホラーとエロスとバイオレンスが混然一体となった、往年の洋画劇場の熱気を伝えてくれる。


『ヘルハウス』を「お化け屋敷映画の高尾山」に喩えたり、『カサンドラ・クロス』を「北大路魯山人の器にすき家の牛丼をよそって食べたような、不思議な気分が味わえる作品」と評したり、という作品への愛と知識に裏うちされた文章も楽しい。以前出ていた本の文庫化らしいけど、これは名著でありましょう。




そうこうしてたら椰月美智子さん『消えてなくなっても』(角川文庫)も届きました。
同じ本が2冊。なぜ?
答えは文庫版の解説を書かせてもらったから。
単行本刊行時、著者の椰月さんにインタビューする機会があり、そのご縁で文庫解説にもお声がけいただきました。


わたしが解説を書いていることからも分かるとおり、『消えてなくなっても』は椰月さんの作品にしては珍しい怪談&ファンタジー寄りの作品。それが椰月ワールドに特有の手ざわりとどう関わっているか、そのあたりを書いてみました。






2017年5月29日月曜日

お風呂で読書 (第1回)


風呂で読むのにぴったりの本は何か?


それがここしばらく私の頭を悩ませている天下の一大問題である。
気ぜわしい日々を締めくくる夜のリラックスタイム、入浴。
多くの本好きの例にもれず、私は浴室に本を持ちこむことにしているのだが、さて、この風呂で読む本のセレクトというのが難しい。


お風呂に入ろうと思ってからたっぷり5分。半裸のまま書棚の間を徘徊して、本の山をどけたり崩したり。これでもない、あれでもないと、リラックスするためにたいへんな汗を流すことになる。
この悩ましさ、何かに似ていると思ったらあれだ。旅行先に持っていく文庫本を悩むのに似ているのだった。「NO、これじゃない!」と思っても交換できないから、毎晩が真剣勝負である。


そんな感じで悩んでいるうちに、これはお風呂向きじゃないなという本の系統が少しずつ明らかになってきた。
たとえばシリアスな純文学系は緊張するから国内外を問わず×。
人文系の評論・研究書も頭がこんぐらがるので避けたい。
ではエンタメ小説ならいいのかといえば、そうでもない。新しい物語に入りこむには意外とパワーが必要なのだ。
仕事の資料やゲラももちろん×。
好きな作家や普段なら積極的に読もうという気になる本(たとえば海外のモダンホラー)でも、「風呂場」という関所をなかなか突破できないのが面白い。


じゃあ、どんな本ならいいのか。
具体的にここ数日、お風呂で読んだ本を思い返してみる。


●5月28日(日):田中真知『理想郷シャンバラ』(学研)

中央アジアに存在するとされる理想郷シャンバラについて述べた本。レーリヒ、オッセンドウスキー、ヒトラーとこの手の本に出てくる話題をコンパクトにまとめており、今読み返しても良書。チベット仏教僧侶2名へのインタビューも貴重。




●5月27日(土):矢追純一『これが宇宙人(イーバ)との密約だ』(KKベストセラーズ)

この頃は楽しかったなあ。UFO研究史においてMJ-12関連の出来事というのはまあ、ひとつの大きな迂回路だったのだろうけども、UFO墜落、宇宙人による誘拐、家畜虐殺、政府と異星人の密約、という都市伝説みたいな情報がゴロゴロ出てきて、1980年代末期のUFO本は一種あぶない面白さがあった。
そう思ったのは大人になってからで、小学6年当時はわけが分からないまま市立図書館でドキドキしながら借りていたのですが。この本は「イーバ」という響きが、実に禍々しくてよかったね。
 



●5月27日(金):リチャード・C・ホーグランド『〈火星〉人面像の謎』(二見書房)

1976年、アメリカの火星探査船バイキング1号が撮影した、いわゆる「火星の人面岩」に関するノンフィクション。これも好きだったなあ。宇宙空間を見上げる巨大な人面の大岩、というSFチックなビジョンにたまらなくワクワクさせられた。
初版が1990年だから、上記矢追さんの本の1年後。MJ-12と人面岩はほぼ同時期のブームだったんですね。そういや、人面魚とかも同じ頃か。




うーむ。
地底王国シャンバラにMJ-12、火星の人面岩……。新書版のオカルト本ばかりではないか。
これだと「風呂で読むならオカルト本」という普遍性のなさすぎる結論が出てしまう。入浴時にぴったりの本を探り当てて、ビジネス書を書いてベストセラーにするつもりでいたのに……。


ほかに共通項をさぐるなら「どれも古本屋の100円ワゴンで売ってそう」ということだが、そこはたぶん関係ない。おそらく重要なポイントは、どれも再読本であるということだろう。だいぶ前に読んで面白かった記憶はあるものの、内容をよく覚えていない本。
もちろんそれ以外にも新書版であるとか、さらっと読みやすい文体で書かれているとか、途中でやめても先が気にならないとか、いろいろ要因はあるだろう。


果たして風呂で読むのにぴったりの本は何か?
これからも折に触れて研究していきたい。



2017年5月13日土曜日

五月の路上は鼻血でいっぱい

ゴールデンウィークも終わり、気づけば5月半ばである。


この時期に人を悩ませるものといえば五月病だ。
連休明け初日、よく仕事をさせてもらっている某誌の編集部を訪れたところ、とつぜん右の鼻から鮮血が噴きだした。どうやら体が全力で働くことを拒否しているらしい。
うーむ、我がずぼら体質のすさまじさよ。


だからこそ五月病になってしまう人の気持ちはよく分かる。
そりゃ一週間も休んだら、仕事に行きたくなくなるよ。フリーランスのわたしでさえ、久々に外出しただけで鼻血が溢れたのだ。いわんや会社員をや。その切なさ、苦しさは想像するにあまりある。
五月の路上は今日も誰かの鼻血でいっぱいだ。


目下五月病に苦しんでいる人に云いたいのは、あまり自分を責めるべきではないということだ。
世の中には頑張れる人もいれば、頑張れない人もいる。一生のうちにできる努力の総量は、もしかして生まれつき決まっているのではないか、とさえ思うのだ。
ずぼらなのは別に悪いことではない。中学時代の担任教師に「おまえは怠け者だ」とはっきり指摘されたわたしなどは、自己弁護も兼ねてそう思っている。


さて。
五月病の人におすすめの小説をあげておこう。
朝ベッドから出たくない。職場の人の顔を見たくない。そんなときテンションの高い小説など読む気にもならないだろう。ハーマン・メルヴィルの「代書人バートルビー」を読んで、マイナス方向の愉悦に浸るのはいかがだろうか。


バートルビーは真面目な代書人だが、理解できない性格の持ち主である。
雇い主や同僚が代書以外の仕事を頼んだとしても、控えめに、しかし確固たる口調で「せずにすめばありがたいのですが」と答え、決して応じようとはしないのだ。どんなに上司が忙しそうでも、仲間が困っていても「せずにすめばありがたいのですが」「せずにすめばありがたいのですが」。そうくり返すだけだ。とうとう業を煮やした雇い主はバートルビーを馘にする。その結果、思いもよらない出来事が……。


常軌を逸した行動とともに、バートルビーがどんどん人間ばなれした存在に感じられてゆく、後半の展開がすばらしい。ずぼらも極めれば超自然的恐怖の域に達する。こうなると鼻血を噴きださせるのはむしろ上司のほうだ。






ボルヘス編の『バベルの図書館』(国書刊行会)で読むことができるので、これを参考にぜひずぼら道のプロを目指してほしい。と、つまらない商業コラムのような落ちをつけてしまったな。こういう落ちはつけずにすめばありがたいのだが……。


2017年2月17日金曜日

『UFO手帖 創刊号』でジャック・ヴァレ特集!



仕事がちょっと一段落ついたので、通販で購入していた『UFO手帖 創刊号』(Spファイル友の会)を読む。 コーヒーを飲みながら円盤本。至福のひととき。むふふ。





『UFO手帖』はUFOに関するマニアックな同人誌を刊行してきた「Spファイル友の会」の最新作で、UFOを中心としたパラノーマル現象関係のエッセイをあつめたものだ。
記念すべき創刊号の特集テーマは「ジャック・ヴァレへのパスポート」!


そりゃ買うでしょ。
存在を知った翌日にはお金を振り込み、郵送していただきました。
事務作業が大の苦手な私にしてこの素早さ。ジャック・ヴァレに関する情報に飢えている日本人がいかに多かったか、ということの証左ではないだろうか。違うだろうか。


知らない方のために説明しておくと、ジャック・ヴァレはフランス出身のUFO研究家。スピルバーグ監督の『未知との遭遇』でフランソワ・トリュフォーが演じたフランス人UFO学者のモデルになった人物としても知られる。


現代のUFO現象とヨーロッパ古来の民間伝承との共通点に着目した代表作『マゴニアへのパスポート』(1969)は、UFOは宇宙人の乗り物であるとする有力な仮説に疑問を呈し、

「だってよお、宇宙人つったってヘンなことしてばっかじゃん。人間誘拐したりよお、水のかわりに塩味のしないパンケーキくれたりよお。それって、あれじゃね? 昔から伝わる妖精とかと一緒じゃね? あんたら知らないかもしれねえけどさ、妖精ってのは昔っから塩、使わねえんだよ」

と、主張したことで斯界に衝撃を与えた(もちろんヴァレはインテリなのでこんな語り方はしないだろうが、わたしはインテリでないのでこうとしか要約できないのである)。


(原著新装版)


「マゴニア」とは中世ヨーロッパの伝説に見られる国の名で、空飛ぶ船でやってくる人々の拠点。
この語をタイトルに用いたヴァレの意図は明らかだろう。
中世フランスにマゴニアから飛来した船と、UFOと呼ばれるものは本質的に同一なのではないか? ならばUFOが宇宙人の乗り物であるとする一見もっともらしい説(専門的にはETHと呼ばれる)の基盤は、実はもろいものなのでは?


だってそうでしょう。300年も400年も前から人類がUFOや宇宙人っぽいものと遭遇し、よく似た奇妙な体験をしているのだとしたら……。これはもう心の問題と捉えるか(ユングのスタンスだ)、あるいは宇宙人という前提を捨て去って、さらに大きな視野による仮説を構築するしかない。


こうしたヴァレの主張は、真剣にUFOの正体を解き明かそうとしている研究者からは不評だったようだが(ETHサイドの研究者からは異端者扱いされたらしい)、UFO現象の歴史的・文化的側面に着目することで後続世代の研究者&ファンに大きな影響を与えた。
わが国では稲生平太郎氏が名著『何かが空を飛んでいる』でその説を詳しく紹介し、一般に知られるようになった。(さらに言うならそれを面白おかしくエッセイ集で取りあげた、大槻ケンヂ氏の功績も忘れることはできない)


さて、前置きが長くなった。
『UFO手帖 創刊号』のジャック・ヴァレ特集ではこうしたヴァレの魅力を多角的に紹介している。


書影入りのビブリオグラフィに始まり、ヴァレの方法が生まれた背景に迫った「『マゴニアへのパスポート』の時代と方法」、『マゴニア』の論旨を分かりやすく要約した「マゴニアへのパスポート拝見」、先に紹介した中世ヨーロッパのマゴニア伝説などについて知識を得ることができる「ジャック・ヴァレを知るための5つのキーワード」、個人的にヴァレを知る著者がその理論と人生を論じた「マゴニア異聞――孤高の異端者ジャック・ヴァレ」、ヴァレの代表作を自力で翻訳してしまった花田英次郎氏による「私家版『マゴニアへのパスポート』を翻訳して」と充実の内容。


とりわけ、ヴァレの陰謀UFO小説『異星人情報局』の翻訳者でもある磯部剛喜氏の「マゴニア異聞」は、ETHを信奉するドイツ系科学者グループと、ヨーロッパの伝統的神秘学思想(薔薇十字、錬金術、グノーシス)に通じたフランス人ヴァレという対立構図を浮かびあがらせ、なんとも刺激的だった。ヴァレが自らの「コントロール仮説」に通じるものとして、P・K・ディックの『ヴァリス』を薦めていたというエピソードも興味深い。


特集以外のページも、高橋克彦作品の紹介あり、円盤漫画やホラー映画のレビューありとその手の話題が好きな人にはたまらない内容。
『何かが空を飛んでいる』を読んでヴァレへの興味を焚きつけられた人はもちろん、 最近いいUFO本が出ないなあ、とお嘆きの方にもおすすめです。
気になる方は「Spファイル友の会」で検索を。


それにしても。
『マゴニアへのパスポート』が私家版で翻訳されていたなんて!嗚呼、SNSをしていない祟りか、今日までまったく知りませんでした。残念ながら現時点ですでに在庫切れとのこと。
増刷希望!増刷希望!増刷希望!


2017年1月31日火曜日

一人で夜読むな


このブログ、何割の方がスマートフォンで見ているのか分からねど、たまにはパソコンでも見て欲しいのである。
なぜかというに。
このブログは画面の右端(こっち→)には、最近手がけた仕事がずらっと一覧になって表示されているからだ。


ところが、スマホ用のレイアウトではこの一覧が表示されないのです(最近気づきました)。
これではまるで電脳空間に妄言妄想を垂れ流しているだけの、自称著述業者のようではないですか。
まあ、概ねそんなようなものなのだが、たまにはパソコンで見てちょうだい、お仕事もちゃんとしているから、とまるで実家の母と電話をしているような気持ちで懇願する怪奇幻想ライターなのでした。


昨日はフレイザー・リー『断頭島 ギロチン・アイランド』(竹書房文庫)を風呂で読了。
ははあ、そう来ましたか。タイトルや帯の惹句からマイケル・スレイドのような首チョンパホラーかと思いきや、意外にも抑えめな展開。ローギアと2速の間を行き来しながらじわじわと進みます。
で、予想の斜め上からボールが飛んでくるラスト!お腹のあたりでミットを構えていたら、いきなり目玉にボールが当たったみたいな(笑)。
先日鑑賞したニコラス・レフン監督の『ネオン・デーモン』とも一脈通じる方向性で、しばらく咀嚼に時間を要するところも似ていました。


最近、扶桑社ミステリーがあまりモダンホラーを出さなくなったので、竹書房文庫がこうして2010年代の英国ホラーを紹介してくれたのは嬉しい。今後にも期待したいところですね。




2017年1月29日日曜日

購書日記(1月某日)


先日の『幽』文学賞パーティでお会いした千街晶之さん&澤村伊智さんと「あれはなかなか!」とひとしきり盛り上がったのがこちらの映画。


 
 

フェデ・アルバレス監督の『ドント・ブリーズ』
ヒットしてるっぽいんでご覧になった方も多いでしょうが、いや、これが意外に良作で。
結構怖いです。というより、ドキドキします。
つまりはホラーじゃなくて、よくできたサスペンス映画ですね。


「もしも泥棒に入った先が凶悪バイオレント爺ちゃんの棲み家だったら?」という、明快きわまりないログラインを120パーセント生かし切った脚本がいい味出してました。
このログラインだけでは、いわゆる出落ちになることは目に見えており、それを中盤以降どう回避してゆくかかが勝敗の分かれ目となるわけですが、この映画の出した答えは「いや、そうだよね、そうするしかないよね」と大いに納得のできるもの。
やり過ぎてはダメだけど、踏み込みが浅くてもダメ。
その狭間でうまいこと最良の答えを見付けたなあ、と感心いたしました。


個人的に気に入ったのは、硝子製のスポイトが出てくるあのシーン。笑っていいのか怖がっていいのか。ガンガン高まる狂気節に、ひいひい叫びながらの大笑いです。
同監督がリメイクを手がけた『死霊のはらわた』、どうせいつもの劣化リメイクだろ…と敬遠してたんですが、さっそくレンタルしてみなくては。


話はがらりと変わって、購書日記。
hontoに注文していたシェリダン・レ・ファニュの短編集『ドラゴン・ヴォランの部屋』(創元推理文庫)が届きました。

 


英国怪奇小説の巨匠、レ・ファニュ久々の邦訳版選集。
アトリエサードの「ナイトランド叢書」からは『魔術師の帝国 《1ゾシーク篇》』も出たし、年明け早々古典ホラー小説ファンには嬉しい展開となりましたね。
同時に届いたのは以下の4冊。




2016年に出たホラーで未読だったものをまとめて注文しました。
これらを消化したうえで、2016年活字ホラーの総括をきっちりしたいと思います。
ジョナサン・オージェ『夜の庭師』(創元推理文庫)はまったくのノーマークだった作品。カバーデザインから勝手にファンタジー系だと思いこんでいました。東雅夫氏の幻想と怪奇時評で「『クリムゾン・ピーク』と一脈通じる世界観」と紹介されていて、あわてて購入した次第。
風呂で読みました。面白かった。ティム・バートンが映画にしそうなゴーストストーリーです。

2016年10月26日水曜日

白川まり奈『犬神屋敷』購入!


仕事帰りに中野ブロードウェイに立ち寄り。
まんだらけで白川まり奈『犬神屋敷』(まんだらけ出版部)を購入してきた。




これは怪作『侵略円盤キノコンガ』で知られる怪奇マンガ家・白川まり奈の未発表作品を、ひばりコミックスの体裁で刊行したもの。ずっと気になっていたんだけど、東雅夫氏の「幻想と怪奇」時評(『小説推理』)に背中を押される形でやっと購入。
店員さんによれば店頭在庫はあとわずか、とのことだったのでホラー好きはまんだらけ各店へ急げ!(下北沢の古書ビビビでも取扱あり)

 
(ひばり書房なのに定価1500円+税。可笑しい)



 マンガといえば、hontoに注文していた河井克夫『久生十蘭漫画集 予言・姦』(KADOKAWA)も届いた。




タイトルの通り、十蘭の短編2作を河井克夫がコミカライズしたもの。同じBEAM COMIXから刊行された田辺剛『狂気の山脈にて ラヴクラフト傑作集』(KADOKAWA)とともに、怪奇幻想文学好きならば見逃せない試みだ!






なお。
田辺剛氏のラヴクラフトものは初期の「アウトサイダー」の頃から愛読しておりまして、今回の新作が出たタイミングでダ・ヴィンチニュースにレビューを書かせてもらいました。『コミックビーム』はなんだか大変そうですが、このような怪奇幻想ものを載せてくれるメジャー誌は稀有なので、なんとか存続していただきたいものです。


●世界レベルの怖さと画力! 田辺剛『狂気の山脈にて』が素晴らしすぎる