2017年9月18日月曜日

魅惑のルート4126


秋休みをとって静岡の伊東温泉に行ってきた。
伊東にゆくならハトヤ。
というわけで、野坂昭如のコマーシャルソングでおなじみ、ハトヤに宿泊してきたのだ。



 
 ハトヤは国鉄の伊東駅前から車で5分ほど。山すそに建つ巨大な温泉ホテルである。
往年のテレビCMが言うところの「近代建築の粋を集めたデラックスな」造りはほぼ当時のまま残されており、すなわち外観も内装も昭和レトロ感が満載。めくるめくタイムスリップ気分を味わえる。






とりわけフォトジェニックなのが、本館と別館をつなぐ渡り廊下であろう。ご覧のとおり、これはほとんど特撮映画のワープ場面で、嬉しくてつい何度も駆けまわってしまった。うわーい。




(外から見るとこんな感じ)


オフシーズンの平日ということもあって宿泊客はさほど多くなく(ほとんどいないと言ったほうがよいか)、迷路のように巨大なホテルをほぼ独占状態。
大浴場の帰りにちょっと人気のない廊下に足を踏み入れてみたりして、『シャイニング』ごっこを楽しむこともできた。誰もいない温泉ホテルの宴会場というのは、夜覗くとゾクゾクするものである。
温泉は熱くて気持ちがいいし、遊戯コーナーにはピンポン台があったし、可愛いハトグッズもたくさん売っているし、大満足のお宿でした。ぜひまた泊まりたい。




翌日は城ヶ崎海岸を見物。
長い吊り橋と灯台で有名な景勝地であるが、その橋が目に入ったとたん思わず「おやややや」と声をあげてしまった。


白石晃士監督に『オカルト』という作品がある。異界からの声に人生を左右された貧しいフリーター青年を、監督が密着取材で追いかけたフェイク・ドキュメンタリーの傑作だ。劇中で一連の出来事のきっかけとなったのが、観光地で起こった通り魔事件。そのロケ地がまさにここ、城ヶ崎海岸だったんですねえ。


(映画でおなじみの吊り橋)

 
吊り橋と岩場の位置関係、異様な気がするほど真っ青な海原など、ロケ地だから当たり前だが映画のとおりである。『オカルト』が大好きなわたしは大いに感動。
そういえば劇中では「妙ヶ崎海岸」と呼ばれていたので即座にピンときそうなものだが、地球の地理に疎いわたしは現地に行くまで気づかなかったのである。
吊り橋ではもちろん「江野祥平ごっっこ」をして遊びました。白石くん、奇跡やで。




続いて伊豆シャボテン公園まで。
この公園はなぜかマヤ・アステカ文明遺跡のレプリカをいっぱい展示しており、『ムー』っぽい雰囲気でにわかにテンションがあがる。






各国のサボテンをたくさん観賞できるほか、カピバラやカンガルーに餌をあげたり、利口な動物のショーを見たり、リスザルのいる島にボートで上陸できたり、ゴーカートに乗れたりし、レストランにはサボテンカレーなんていうメニューもあったりして、大人も子どもも一日楽しめる。もちろん『ムー』は読んでいなくとも大丈夫だ。
で。ふと遠くに目をやるとそこに……ヒドラがいた。




そうだ。
伊豆大室山といえば『ウルトラマン』第20話「恐怖のルート87」の舞台。科特隊のメンバーが大室山をリフトで登るシーンがあったけれど、作中に出てくる高原竜ヒドラの像は、ここシャボテン公園で撮られていたのである。これまた現物を見るまで気がつかず。
像の中はトンネルになっていて、エピソードを紹介するパネルが貼られていました。


というわけで。
妙にホラーや特撮やオカルトにつきまとわれた小旅行であったが、いちばん驚いたのは今回借りたレンタカーに「MDデッキ」がついていたこと、であろうか。
無念!知っていたらMDをいっぱい持参したのに。




 (シャボテン公園で作った寄せ植え)



2017年9月6日水曜日

最近うちに来た本


仕事が一段落したので、映画館で『新感染 ファイナル・エクスプレス』を鑑賞してきた。
ああ、面白かった。
これは非常によくできた災害パニックものだ。
ホラーというより『タワーリング・インフェルノ』とかあの類のジャンルだが、丁寧に描かれた人間ドラマにぐいぐい心を掴まれ、2時間があっという間である。とりわけ主軸になる父娘のドラマには感涙。わたしは昔から「父親とは?」という話に弱いのだ。


ついでに新刊書店をチェック。
『ナイトランド・クォータリー vol.10』(アトリエサード)が出ていたので購入する。こないだ9号を紹介したばかりと思っていたがもう3ヶ月経ったのか。早いな。
カバーを飾るのは森馨氏の可憐な人形作品。
ところで過去の森さんの作品集に、わたしがちらっとだけ出演している、というのは国内では殆ど知られていない事実である。もちろん、海外でも知られていない。





ステファン・グラビンスキ『火の書』(国書刊行会)も出ていたので買う。
国書刊行会といえばアンドルー・ラング『夢と幽霊の書』も欲しかったけど、今日のところはぐっと我慢の子。国書刊行会と河出書房新社の本、月々欲しいものすべて買っていたらそれだけで国家財政が傾いてしまう。まだ月初のうちだしなあ。



 

ついでに古本屋を覗く。
ホイットリー・ストリーバー『コミュニオン 異星人遭遇全記録』(扶桑社ノンフィクション)があったので買う。
エイリアンアブダクションを語るうえでは欠かせないこの本、縁がなくてこれまで読んでいなかった(あちこちのUFO本でくり返し紹介されているので、わざわざ読む気が起こらなかったのもある)。
ご存じない方のために説明しておくと、ストリーバーは映画『ウルフェン』の原作などで知られるホラー作家だが、ある日エイリアンにさらわれたとしか思えない恐怖の体験をした。
その経験を描いてベストセラーになったのが、この『コミュニオン』なのだ。
 



さらに。
旧知の怪談作家丸山政也氏より、最新作『恐怖実話 奇想怪談』(竹書房文庫)をお贈りいただいた。
丸山さんの「奇妙な味」がする怪談はデビュー作来愛読している。ほかにはない硬質さと不可解さがあって好きなのだ。
前作『実話怪談 奇譚百物語』にも、ロンドンの不気味な廃教会や、ビートルズのレコードジャケットの様子で現れた亡霊、火だるまでのたうちまわる人影など、印象的なエピソードがいくつもあった。
今回も読むのが楽しみです。


この場を借りてあらためて御礼を。





明日は休暇で伊東へ行ってきます。
「伊東に行くならハトヤ」、というわけでハトヤに泊まってきます。


2017年9月1日金曜日

【怪老人日乗】 九月某日


片手袋、すなわち片方だけ落ちている手袋を研究している人がいるという事実は、サンキュータツオ氏の著書『もっとヘンな論文』で知ったのだった。
言われてみるとたしかに、路上にはよく片方だけの手袋が落ちている。
今日も落ちていた。


アスファルト手袋くずれ落ちにけり (曾良)





扠。
今日は仕事でSF(すこしふしぎ)の世界に出かけてきたのである。
ピー助がいるなあ。
噫、その奥にはバウワンコ像がいるなあ。
前にも書きましたが、わたしは秘境冒険ものの『のび太の大魔境』が好きなんですよ。
バウワンコ像はファミコンソフト『ドラえもん』にも出てきたような記憶があるが、わたしはファミコンを持っていなかったので定かではない。持っていたのはゲームウォッチのみ。







で。
そうこうしていたらダ・ヴィンチニュースで「新本格ミステリ30周年」特設ページが公開された。
こちらで作品レビューを書いております。現時点で綾辻行人氏の『十角館の殺人』のレビューがアップされているが、近日中にさらに数本あがる予定。


というわけで。
今夜はやや唐突に新本格とわたしの思い出を書こうと思います。


新本格ムーブメントがスタートしたのが今から30年前の1987年。
わたしはその当時10歳なので、残念ながらリアルタイムで『十角館の殺人』を体験した世代ではない。
とはいえ、わたしが大学に入った90年代後半にもまだまだ人気は健在で、いわばユースカルチャーの一部という感じであった。そのあたりは今日のSF、ラノベに近いものがあるだろう。
国文科で同じゼミだったYくんも本格ミステリにはまっていた一人で、「僕、こんなトリックを考えたんだよ」と小声で話しかけてきたけれど、彼はどうしてるんでしょうか。ヴァン・ダインとヘビメタを愛好する好青年だった。

 
当時、京都に住んでいたわたしがミステリ本をよく買っていたのは、近鉄線新田辺駅の開けたロータリーとは反対側にあった新刊書店、同じく新田辺駅の古本屋「一Q」(いっきゅう)、それと伏見大手筋商店街の一番街にあった書店で、もちろん梶井基次郎が爆破した河原町の丸善や、四条通沿いのジュンク堂にも足を運んだけれど、大学の行き帰りに暇さえあれば立ち寄っていたこのあたりの小型店が思い出深い。キャンパス最寄りの興戸駅わきにも古本屋があったのだが、ここは教科書が主だったような記憶がある。


「一Q」では竹本健治の『ウロボロスの偽書』を、P・K・ディックの『ヴァリス』と一緒に買った。ミステリじゃないけど、森由岐子の『魔怪わらべの唄』も買った。ちなみに「一Q」というのは妙な店名だが、新田辺駅界隈は一休さんゆかりの土地で、銅像なんかも建っていたのである。いま検索してみたら、「一Q」はいまだ現役のようで驚く。なお京都にはほかに「コミックQ」という似たような名前の古書チェーン店があって、こちらにもすごくお世話になった。学生時代は京都中のコミックQとレンタルビデオ店が頭に入っていたものだ。


新田辺駅前の新刊書店(名前失念)では、平台で山口雅也の『生ける屍の死』を見つけて、通学の近鉄電車で読んだ。手もとにある文庫本の奥付を見ると97年11月刊の第4版。このカバーを見ていると、薄暗い蛍光灯で照らされた近鉄線のホームが目に浮かんでくる。


と。
思い出話はつきないのであるが、そんなわけだから新本格30周年企画に携わることができて、ちっと嬉しかったのだ。わたしにとって新本格はいわば青春の文学なのである。Yくん、元気かな。


2017年8月29日火曜日

荒俣宏氏にインタビュー 於ダ・ヴィンチニュース


お仕事の告知が続きます。
ダ・ヴィンチニュースにて、荒俣宏さんにインタビュー
7月に刊行された『お化けの愛し方 なぜ人は怪談が好きなのか』(ポプラ社)について、お話をうかがいました。
ダ・ヴィンチニュース、大幅にデザインをニューアルしていて、今なら荒俣さんのインタビューがトップにどーんと出ていますね。なるほど、画像がこういう感じで入るようになったのか。




扠。
一応ホラーの世界で生きている私ですが、荒俣さんに直接お会いするのはこれが初めて。
そりゃあ感慨もひとしおでした。団精二……『怪奇幻想の文学』……『世界神秘学事典』……『本朝幻想文学縁起』……『帝都物語』……「俺はこれから大連に行く」……いろんなことが頭を駆け巡り、テレコのスイッチを押す指が震えました。
『世界神秘学事典』、大学図書館に通って読んだなあ。


『お化けの愛し方』は中国から日本へと伝わった「恋愛怪談」の系譜をたどり、お化けと人間の共存を説いた著者最後の「お化け学」著作物。その探索の手がかりとなったのが、乱歩の「怪談入門」というのが興味深いです。どれだけ日本のホラーに貢献するんだ、乱歩。
さらに詳しい内容についてはインタビューをご覧ください。


インタビュー中に「人間、死期が近づくと賢くなるから」という発言があって、まだまだお若いじゃないですか、と思ったんですが、団精二さんももう古希になられたんですね。噫、月日の経つのは早いもの。


むぎわらしんたろう氏にインタビュー 於ダ・ヴィンチニュース


出ーたんだよ、出たんだよー。
といえば、懐かしの『藤子不二雄ランド』のコマーシャルソングである。
で、『月刊コロコロコミック』で活躍中のマンガ家むぎわらしんたろう氏の新刊『ドラえもん物語 ~藤子・F・不二雄先生の背中~』(小学館)が出た。


これは藤子・F・不二雄のアシスタントとして、その創作を支えたむぎわら氏が、亡き師との日々を回想した実録コミックである。単行本は今年『コロコロ』に掲載され反響を呼んだ作品に書き下ろしを加え、貴重な資料も多数掲載したものだ。
この作品について「ダ・ヴィンチニュース」上でインタビューさせてもらった。


1980年代の子どもはみんなそうだろうが、わたしもご多分にもれずドラえもんファンで、劇場版ドラえもんは『のび太の宇宙開拓史』から映画館で見ていたし(H・R・ハガード風の『大魔境』が好きだった)、『FFランド』も毎週楽しみにしていた。『コロコロ』も読んでいた。
そんなわけなので。
様々なドラグッズに囲まれてのインタビュー取材は、光栄かつ嬉しいお仕事でありました。

 
むぎわらしんたろう氏インタビュー【前編】
むぎわらしんたろう氏インタビュー【後編】


ロングインタビューになったので前後編で掲載。すでにYahoo!ニュース、ライブドアニュースなど、あちこちに配信されているようですね。
藤子不二雄ファンの皆さんはご一読いただけると嬉しいです。





深町秋生氏と薬丸岳氏に取材しました。『本の旅人』9月号


KADOKAWAのPR誌『本の旅人』9月号が発売されました。
巻頭のカラーグラビアは深町秋生さんと薬丸岳さんのツーショット(@廃墟ビル)。
こ、これは……迫力ありすぎですわー。




 同誌上では深町さんの新刊『地獄の犬たち』(KADOKAWA)の刊行を記念して、薬丸岳さんとの対談が行われました。
で、その取材と執筆をさせていただきました。


『地獄の犬たち』は警察小説版『地獄の黙示録』とでもいうべき、すさまじい作品。
普段からあまり「傑作」という言葉は使わないようにしているんですが、この作品に関しては大いに使ってもいいのじゃないかしら。傑作です。


刊行記念対談ではお二人が愛してやまない“潜入捜査もの”について、『地獄の犬たち』の多彩なキャラクターの魅力について、などなどたっぷりと語っていただいております。
お二人のファンの方はぜひどうぞ。ヤバめな写真も必見です!






2017年8月27日日曜日

お迎えDEATH.


8月らしい快晴がやっと戻ってきたので、阿佐ヶ谷の古書コンコ堂まで足をのばし、『デニス・ホイートリー黒魔術小説傑作選』を受け取ってきた。さすがの阿佐ヶ谷でも七夕祭りはもう終わっており、「ダンシング・ヒーロー」に舞い踊った女たちもいずこへか姿を消していた。


さて。
先日の計画通り、わんぱくデニスの居場所はすでに確保してあるのだ。
所定の場所である海外棚のてっぺんに配架。
がしかし。うわわ、予想以上に重たいぞ。
ちょっとの揺れで落下してきそうじゃ。というか、本棚自体がいまにもクシャッといきそうじゃ。黒魔術で空中浮遊してくれることを期待するしかないのじゃ。


9月に入って仕事が落ち着いたら、1巻の『黒魔団』(再読)からぽつぽつ読んでいこう。


(壮観!ゴライオンの超合金的なうれしさ!)


そうそう。
以前、このブログでも熱烈に「増刷希望!」と叫んでおいた私家版『マゴニアへのパスポート』。
めでたく通販が再開されたらしい。
詳細は自力で『マゴニア』を訳してしまった花田英次郎氏のブログをご覧いただきたい。
わたしもさっそく一部注文したので、届いたらここでご紹介させていただこうと思う(コメント欄でお知らせいただいたナカネ氏には感謝です)。


■私家版『マゴニアへのパスポート』通販再開のお知らせ


ところで。
花田英次郎氏のブログ。7月の記事であの世紀の奇書『異星人遭遇事件百科』の著者、郡純の正体をUFOマニアな視点からプロファイリングしておられる。とっても面白いので、郡純ファン(いるのかな)にはオススメです。


2017年8月23日水曜日

『GON!』vol.6に誌上百物語を発見!


こんな夢を見た。
某直木賞作家氏の自宅になぜか招かれている。
急な階段のある、妙に縦長の家だ。呼ばれて2階から降りると、1階のリビングに大きな作業台のようなテーブルがあり、そこに『GON!』のバックナンバーが積まれている。


「どれでも好きなのを読んでいいですよ」
直木賞作家氏(かっこいい男性)は爽やかにそう云うと、上に積んである号に手を伸ばした。ああ、この人も『GON!』を読んでいたのか、そう思ったら嬉しくなった。
 ……というところで目が覚めた。
実話である。


扠。
90年代に思春期を過ごしたサブカル者にとって『GON!』は忘れがたい雑誌であろう。
当時、サブカル雑誌といえば太田出版の『クイック・ジャパン』とミリオン出版の『GON!』が双璧だったけれど、わたしは断然『GON!』派であった。
今でこそアイドルとお笑いに特化したカルチャー誌である『クイック・ジャパン』。90年代にはどこか都会的で斜に構えた雰囲気が漂っており、地方の素朴な高校生にはなんだか恐ろしく感じられたのだ。
その点、『GON!』はひたすらに下らなくて安心だった。





手元に残ってる『GON!』vol.6(1995年4月20日)の目次から適当に抜き出してみる。
「未だに戦い続ける2人の兵士」
「オバサン解放同盟 OBA-KING」
「悪趣味図鑑 ザ・食人族 世界食人族MAP他」
「これが見世物小屋」
「史上最強のオカマ」
「究極のマリファナ品評会」
「誌上シミュレーション第2弾 大東京クーデターマニュアル」etc、etc……。


いくらかは誌面のカオスな雰囲気が伝わるだろうか。
他にもごく普通の素人さん(=U夫人)が「あたしのファンクラブ作ってください」といってヘン顔を載せていたりもする。一体誰なんだ、U夫人って(笑)。


すべての記事が悪趣味とバカとテキトーのオンパレードであり、それがこの雑誌特有のメチャクチャなレイアウトと相まって、読む者を現実の裏通りへと誘いこむ。
あの頃「クイック・ジャパン」を読んでいたなら、もうちょっとだけ売れ線のライターに、と夢想しないでもないが、こちらの方がしっくりきたんだからしょうがない。


で。
書棚から出てきた同号をぱらぱら懐かしくめくっていたら、こんな記事を見つけてしまった。
「人体実験シリーズ第2弾 百物語漂流記」である。 




これは怖いもの知らずの同誌ライターらが百物語を敢行しようというもの。
基本、肝試しのノリだが、お寺の本堂でちゃんと蠟燭をともしてやっているのがエラい。


百物語怪談会を100話完全収録したものとしては、菊地秀行らによる『文藝百物語』(単行本はぶんか社)、『幽』ブックスの『女たちの怪談百物語』『男たちの怪談百物語』(単行本はメディアファクトリー)がよく知られていよう。
いずれも近年の怪談文芸の隆盛を語るうえで重要な試みだが、まさかこれらに先だって『GON!』誌上に百物語が採録されていたとは思わなんだ。


『GON!』らしいページレイアウトでみっちり、4ページに全百話の怪談を収めているので、字が小さすぎて読む気が起こらないのだが……。
とにかく。
百物語形式をあらためて世に知らしめた『新耳袋』新装版の刊行(1998年)に先立つこと約3年、90年代を代表するサブカル誌『GON!』でこのような試みがなされていたことは、本邦怪談史において記憶されてしかるべきではないだろうか。
違うだろうか。違う気がしてきた。


(なんてったって字が小さい!)




2017年8月22日火曜日

雨だから『コックリさんの父 中岡俊哉のオカルト人生』を読む。


今年は全国的に雨の多い8月となっている。
日照不足による農作物の不作など各方面でさまざまな影響が出ているようだが、わたしにとってもこの長雨は困ったものだ。


なぜって、先日阿佐ヶ谷の古本屋で購入した『デニス・ホイートリー黒魔術小説傑作選』をまだ受け取りに行けていないのである(購入のいきさつについてはこちらを参照)。


晴れた日にバイクで受け取りに行こうと思っているのだが、いまにも雨が降り出しそうな空模様を眺めていると、なかなか踏ん切りがつかない。買ったばかりの『傑作選』がびしょ濡れに、なんてことになったらショックで娘を悪魔に差し出すしかないぞ!(娘いないけど)
で、ずいぶん経つのにいまだお店に預けっぱなしになっている、というわけ。


そんなわけなので。
曇天の下、新刊本を読んで過ごしている。
昨日ネット書店より届いたのは岡本和明、辻堂真理『コックリさんの父 中岡俊哉のオカルト人生』(新潮社)。
1970年代、オカルトブームの牽引役をつとめた中岡俊哉の評伝である。
著者の岡本氏は中岡俊哉の実子にして演芸研究家、辻堂氏は放送作家で中岡の「最後の弟子」にあたる人物であるという。




実は以前、岡本氏とお仕事をご一緒したことがあって、その打ち合わせの席上「親父の評伝を書いているんだよ」とおっしゃっていたのをよく覚えている。猛烈に「読みたい!」と思ったものだが、それがついに叶ったというわけだ。


戦前、馬賊を目指して中国大陸に渡り、終戦後は北京放送局にアナウンサーとして勤務。その後は著述家となりベストセラーを連発する。
オカルト業界の巨人にふさわしいそんな波乱に富んだプロフィールはなんとなく知っていたが、そもそもなぜ北京のアナウンサーがオカルト研究の道に? という肝心要の部分は謎のベールに覆われており、長年の疑問だった。


これを読んでその疑問が氷解。
本書は中岡本人の肉声や親しかった関係者の証言を交えながら、 その知られざる人生の軌跡をたどっている。
3度の臨死体験、内外の超能力者との交流、自腹を切っての海外取材、ヒーリングパワーへの深い関心。そんなエピソードの数々から浮かび上がるのは、「実見型超常現象研究家」としての中岡の素顔だ。
生前、幅広いジャンルのオカルト本を執筆し、コックリさんや心霊写真のブームを巻き起こした中岡だが、決して超常現象全般を肯定していたわけではない。むしろその真偽については厳しい目をもっており、自分で確かめたものしか取りあげようとはしなかった。


行方不明少女の遺体を発見したことで伝説化しているテレビ番組「水曜スペシャル」の舞台裏についても、詳しく触れられていて貴重。超能力者クロワゼットへの依頼から遺体発見、番組放映までの経緯が、時系列で語られている。このあたりはテレビマンである著者(辻堂氏)の面目躍如という感じがする。
それにしても中岡が楳図かずお『へび少女』の原作まで手がけていたなんて!!驚き~。
オカルトファンには無類に面白い一冊なので、お天気の悪い日にぜひどうぞ。


なお。
本書単行本のカバー裏にはコックリさん文字盤が印刷されている。
中岡と二見書房が『狐狗狸さんの秘密』にコックリさん文字盤を、『ピラミッド・パワー』にピラミッド模型の型紙をつけたひそみにならったものだろうが、こういう遊び心は嬉しいですね。

……お……も……て……な……し……。

あ! 10円玉が動いた!
そう、こういうのをおもてなしの精神というのである。
 




2017年8月12日土曜日

『吐きだめの悪魔』オリジナルサウンドトラックで脳が溶けた





旧くからの友人が映画『吐きだめの悪魔』のサウンドトラックを送ってくれた。
京都の中古CD屋で800円で売られていたそうな。
それは果たして安いのか、高いのか。


『吐きだめの悪魔』は1987年制作のアメリカホラー映画だ。
原題は『STREET  TRASH』で監督はジム・ミューロー。
 

酒屋の地下室から古い酒瓶が見つかった。こりゃあ安くてウマい、サイコーだ、と大喜びで飲みほす貧民街の住人たち。しかしその酒にはいけない成分が含まれていたらしく、飲んだ者たちの体がドロドロと溶けはじめた。助けてくれー! と、まあそんな映画である。
細かい部分は忘れてしまったが、筋はあってないようなもの。この映画は人間がカラフルに(なぜか紫とか緑とかの液体になる)溶解してゆく様子をただひたすらに、脳天気なムードで映し出す。

 
低予算のカルトホラーとして一部で有名な作品。
とはいえカルト映画ならではの特異な芸術性や反俗性を期待してはいけない。感想は「ヒドいものを見た!」、その一言に尽きます(笑)。いや、それでは無名の才人ジム・ミューロー監督にあまりに失礼だろう。と、一生懸命プラスの評価を試みはするけれど、やっぱり「汚い!」「下品!」「幼稚!」といった単語しか浮かんでこない。ううむ。困った映画だ。
頭のいい人やセンスのいい人は、半径10メートル以内に近づかない方が無難だろう。




しかししかし。
わたしはなぜかこの映画が大好きなんですね。というか、基本的に人が溶ける映画が好きだから、この映画のことも、好きにならずにいられないのである。
それにしてもどうして人間が溶ける描写というのは、ああもわたしたちの心を惹きつけ、妖しい興奮を呼び起こすのだろうか。


『ビヨンド』の硫酸ドロドロも、『吸血髑髏船』の薬品ドロドロも、『悪魔の毒毒モンスター』の工場廃液ドロドロも、ああ、あらゆるドロドロが愛おしい。と、若干かっこよさげに書いてみるが、全然かっこよいものではなく、ただ単に悪趣味なだけだろう。


というわけでこのサントラも大いに嬉しかったのだ。
送りつけておいて「お前は悪趣味だ」と糾弾してくる友人もどうかと思うが、それでもやはり持つべきものは友である。わたしのことをよくわかっている。
で、ドキドキしながら再生しました。










(……10分経過……)












な、なんじゃこりゃ~!!