2024年7月17日水曜日

怪老人日乗:7月17日(水)

先日「アリゲーターとクロコダイル、どっちが好きですか」と聞かれたのだが、そういえば考えたことがなかった。というかその両者の違いを意識したことがなかった。ワニはワニとしか思っていなかったのである。私の世の中の解像度というのはこの程度のもので、犬は犬だし、猫は猫だし、車は車だし、まあ幼稚園の頃と変わっていない。幼稚園の頃は外国=アメリカ、日本=函館だと思っていて、さすがにそれは矯正されたけれども、そのくらい大雑把な感じをいまだに引きずっている。

というわけでわたしの描くワニの絵も大雑把である。絵を描くためにはよく物を見ることだと言われるが、わたしはよく見ていないどころか、思い込みで突っ走るので、ああいうヘンテコな絵になる。技術の問題以前に、世の中の捉え方の問題なのだ。精緻の対義語がなんなのか分からないけれども、精緻とか精密とか緻密とか、そういうのと正反対にいる人生なのです。

それはさておき、日記めいたものを描いておくとですね、三連休でした。海の日だったんです。海の日といえば思い出すのは子どもの頃、積丹かどこかの海岸で夏休み、ウミウシを抱っこしたことですね。紫色で、汁が出ていて、とてもスリリングだった。家族旅行の奇妙な思い出です。

土日はイベント2連チャンでした。この「連チャン」という言葉もそろそろ死語なのでしょうね。わたしもなんとなく使っているが、別に麻雀をしていた時代はないし。まあいいや。そんなわけで土曜日は吉田悠軌さんのジュンク堂書店池袋本店で『ジャパン・ホラーの現在地』刊行記念イベントに登壇、日曜日は市ヶ谷のレンタルスペースで西崎憲さん主催のホラーカンファレンスに参加、ということでした。

まあどちらも無事に済んでよかったなと思っております。ジュンク堂では国産ホラー小説のことをあれこれしゃべり、ホラーカンファレンスでは海外ホラーのこともしゃべりました。どっちも楽しかったので、わたしはホラーの話をするのが割と好きなのだなと思いました。自分ではあまり好きなものってないタイプだと思うのですが、ホラーの話をするのは比較的好きなのかもしれません。ジュンク堂には作家の空木春宵さんが来てくださいまして、びっくり。さらに東京創元社の編集Fさんもいらして、「空木さんと一緒ですか?」と聞いたら偶然だという。なんという東京創元率。Xのフォロワーさんも数名。

どちらもお客さんのムードも温かく、とてもやりやすかったです。どちらも終了後に打ち上げがありまして、前者の打ち上げ(池袋の居酒屋)では怪談業界の話をいろいろし、後者の打ち上げ(市ヶ谷の中華料理屋さんに総勢15人ほどで)ではお客さん交えてホラーの話をしました。4つテーブルがあったのですが、どこからもホラーの話が聞こえてきて、すごい居心地がよかったですね。近くで打ち合わせしていた井上雅彦さんも1時間ほど遅れて参加。初対面は登壇者の西崎さん、宮﨑真紀さん、中川マルカさん、打ち上げでお話しした金子ユミさん、橋本輝幸さんなど。久永実木彦さん、澁澤まことさんともご挨拶できました。お子さんが手足口病なのに来てくださった倉野憲比古さんも1時間ほど打ち上げに参加、ビール3杯飲んで帰っていかれました。Xでつながっている方々ともご挨拶できて、いい日でありました。2日連続で聴きにきてくださった方も複数いて、いやあ、申し訳ねえと思いました。

そんなわけで忙しいし緊張もしたけれども、実りあるいい土日だったので、月曜は気を引き締めて仕事。夜までずっと机に向かい、あれこれを並行して進める。やべえくらい仕事が累積してきて、ちょっと正視できない感じになってきた。見てはいけない。見たら死ぬ。そんな感じである。ちょっと怖くなって締め切りの数を数えたが、いや、やっぱり駄目だ。数えないようにしよう。

どうせ書けても一日に1ツとかなので、焦らず粛々と、なめくじのように進むしかない。というわけでですね、先のことは考えず、足下だけ見て進もうと思います。なんだか生活が乱れてきたので、立て直したいなあ。イヤなんだよなあ、忙しいの。

と思っていたら子どもが熱を出して、昨日は雨の中病院へ連れて行く。コロナ、インフルエンザが流行っているので、その手の感染症だったらいやだな、と思っていたらヘルパンギーナというものだった。なんだかめでたいような名前だが、手足口病と並んで「夏かぜ」と総称されるものらしく、口の中が痛くなったりするとか。高熱でうーんうーんと唸っていて可哀想である。食欲もないようで、深夜には飲んだ麦茶を吐いていた。

というわけで落ち着かないのだが、生きているとイレギュラーは出てきて当然なので、やれるだけやるしかない。火村英生のセリフではないが、生きている限り一生「お疲れ」で「ご苦労さま」なのである。平穏無事ということはまずない。先日、吉田悠軌さんに「忙しいのによくそんなに原稿書けますね」と言ったらば、「まあ、早め早めにやってます」とカッコいいお答えで、わたしもそうありたいと願うのだが、そのためにはまず今目の前にある山を片づけないとなあ。6つか7つか。そのくらいを集中して進めるぞ。


写真はジュンク堂書店池袋本店さんのXアカウントより

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