2023年12月15日金曜日

怪老人日乗:12月15日(金)

おはようございます、わたしが校長先生です。

というわけで金曜の夜になった。再三いっているが私は金曜の夜がいちばん好きだ。押井守の小説(獣たちの夜)に、「何一つ解決していないが、とりあえず今日という日は暮れた」というような一節があるが、まさにあの心境だ。何一つ終わっておらず、月曜までにやることが三つ、どれも4~5000字だから都合30枚強書くのかい?という感じだけれども、とりあえず金曜の夜は編集者も寝ているだろうし、なんならおデートでもしてシティホテルで赤っぽい透明っぽい飲み物でも啜るように飲んでいるかもしれない。

さてこの数日家族が留守にしていた。大阪に帰省していたのである。一人だとあれをやろう、これをやろうみたいな気持ちが湧いてくるものだが、そういう余力もないくらい原稿が差し迫っていてほとんど歩いていない。先日、一日7時間座っていると乳がんのリスクが高くなるという報道に触れたが、男性だっていいことはないだろう。まして私は10時間以上座っている。胸の中のスティーヴン・キングも爆発するほどだ。

というわけで昨日はもうアカン、へとへとやという感じになった。食べるものも麺とパンであって、まあ時短だからなのである。お米を炊こうと思ったがうちは土鍋で炊いていて、自力でもやりゃできるのだが、米を水に浸して、鍋から2、30分目を離さずにいるということが無理だった。そんなわけでインスタントラーメンをキッチンで立って食べたり、パンにベーコンを載せて食べたりしていたのである。

そんなこともありどうにも疲れてしまって、昨日は原稿ひとつ終わったのを機に隣町の温泉施設に出かけてきた。バイクで10分、15分の距離であるが、明らかに田舎めいた道を通り、左右は畑であり、暗い藪からは南無阿弥陀仏の声のみ聞こゆ。古い白骨もあるかもしれない。そんな雰囲気である。しかし温泉はいいところで、別に情緒があるわけではなく、よくあるスーパー銭湯的な温泉施設なのだが、3度湯に浸かりながら寝転んで本を読んで、ちょっと元気復活した。




火曜日はそうだ、ジュンク堂書店でおこなわれた『本格ミステリ・エターナル300』刊行記念イベントを見てきたのだった。私は推理小説に疎く、今の本格ミステリの潮流をそこまで押さえているとは言えないので、まあホラーのお隣のジャルンルの勉強に行こうと思ったわけである。千街晶之さんと久しぶりにご挨拶、蔓葉信博さん、笹川吉晴さんとも初めてお会いできたので良かった。

今日はひたすらリビングで仕事だった。音がないと淋しいので映画を流し続ける。こういう時配信は便利で、観ても観なくてもいいものを流す。京極夏彦氏は原稿を書きながらでもドラマや映画が観られるそうだが、とてもそんな芸当は無理で、なにひとつ頭に入ってこないがそこがいい。頭に入ってきたら、原稿ができなくなるだろう。

合間に家の片づけなども多少する。タオルを替えたり洗濯をしたり食洗機の中を空にしたり。この数日のたまっていた家事をあれこれとやるだけで、脳のリソースが小さい私はヘトヘトになってしまった。これは「男って甘やかされて家事もできなくて駄目ね」というアレではなく(もちろんそれもあると思う)なんというか脳の質的なところの話で、ひとつのことをやって、次に別の作業をやる、というこの切り替えができない。原稿を書いて、茶碗を洗って、また原稿に戻って、というチャンネルの切り替えがものすごく負担で、意識がサクランボウになり、頼むから原稿だけやらしてくれい、という気持ちになった。在宅の仕事をしながら、家事育児をされている方はスゴイなあとつくづく思う。

そんなわけでまた仕事に戻りますが、『現代ホラー小説傑作集』全2巻の見本が届いて、いよいよ発売間近という感じ。あと一週間ですね。よろしくお願いいたします。自分が選んでいるので重量級で、ズシーンと胸に沈み込んでくるようなホラーが多いです。あと不条理・不穏系。自分はこういうのが好きなのだなあと思う。二冊目の表題作にした「七つのカップ」は、なぜ私たちは怪談を求めるのか、なぜ人は霊の存在を信じたいと思うのか、というテーマを描いた作品です。グリーフケアと怪談の関係。怖くて、忘れがたいほど胸に染み入る小説なので、機会がありましたら読んでみてください。もちろんその他の14編も怖くて面白いです。





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