日曜日夜が明けたら月曜日(松尾芭蕉暗黒俳句シリーズ)。
というわけで日曜日でしたねえ。何をしていましたかねえ。メールの返信が多かったんですよ。取材がいろいろ入ったりねえ、あとはあれですよ、ゲラのねえ、チェックをしていたんです。単行本一冊分ですから、それなりに、時間、かかるんですよねえ。取材用の本も読まないといけないし、遅れている座談会まとめも仕上げないといけないし、企画書も書かないといけないんです。
そんなこんなで、あーっという間に暮れるんです。日が暮れる。それでなんだか妙な感じだなあ、と思ってたら、「否川さん、ここ変じゃないですか。時間の流れ、おかしくないですか」って、そうスタッフの若い子が言うんだ。確かに見たらね、変なんです。時計。わたし、古い友人にもらった機械式時計、使ってるんです、これは正確なんだ、まず狂うことないんです。それがね、くるくる、くるくるーって、コマが回転するみたいに回ってるんですよ。それ見てゾーッとましたよ。ありえないんだ。
なんだあ、なんだか妙だぞと思っていたら、「否川さん、日曜がもう、終わりそうです、終わります!」って叫んでる。見るともう時計が、深夜零時指してるんだ。おかしいでしょ、さっきまで朝だったんだから。ゲラを読んだりね、してましたけど、あとね、途中で子供の送り迎えね、野球だの茶道教室だのそういうのはありましたけどね、そんなんで一日が終わるわけないんだ。おかしいですよね。
とにかくそのままスタッフと「ここを出よう!」と車をぶわーっと飛ばして、もう必死ですよ、夜の樹海って真っ暗なんだ、その向こうにね、ぽつん、ぽつん、と明かりみたいのが見えてるの。それ街頭やなんかじゃないんだ。人間のね、目が光ってるんです。それがじーーっとこっち見てるの。「否川さん、何か来ます!」っていうから、「見るな!見るんじゃないぞー!」って叫んで。もう必死ですよね。そのまま樹海を突っ切って、東久留米の駅前まで戻ってきたんです。
後から聞いた話ですけどね、一日っていうのは24時間あるように見えて、実はないんだそうですよ。それでね、そのとき同行した若いスタッフが「日曜日って、案外仕事になんないんじゃないですかね」って震えながら言ってた。私も、そういうことって、あるんじゃないじゃないかな、って思うんですよ。これも一種の怪談ですよね。ええ。(『否川淳三のコワそう~な話』竹林書房文庫)
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