2022年12月17日土曜日

怪老人日乗:12月17日(土)

さて。日中何もない土日こそ仕事を進めなくては。まずは乱雑の魔境と化した作業部屋の片付け。届いた本、買った本を開封して、封筒や梱包資材を処分する。この数日だけでも増えた本が10数冊。今のところ部屋に収まってはいるが、書庫がパンクするのと、私が廃業するのと、果たしてどちらが先だろうか。

ところで――また全然関係ない話だが――最近、作家のサバイバル術的な本がよく出ているような気がする。よく、でもないのかな。しかし新人賞を取ってデビューしようという主旨の本を含めると、それなりの数出ているように思うし、1億円稼ごうという本も出た。近年のその手の本はお金のことまで、つまり印税や初版部数のことまで赤裸々に書いているのがひとつの傾向だと思うが、しかし私には常々不満がある。

作家として稼げる金が多くないのは分かった、厳しい職業だというのも分かった。ところであなたは文筆以外の収入があるのか、ないのか。そこんところを明らかにしてくれないと、どうにも奥歯に物が挟まったような議論になるんですよね、この手の話って。専業なのか兼業なのか、独身なのか扶養家族がいるのか、他に家族で働いている人はいるのか、投資などによる副収入はあるのか。さらに実家暮らしかどうか、月々の家賃や住宅ローンはどのくらいかによっても事情は全然違ってくる。このあたりを明らかにしてくれないから、どうにも焦点がぼやける気がするのだ。「作家の年収は150万円です」という人でも、実家暮らしで親は健在で仕事をしており、当人が独身だったら全然食べていかれるだろう。

「作家は儲からないですよ」アピールをする作家が安定したサラリーマンの顔を持っていたり、配偶者が正社員だったり、ということもあるだろう。というか私が思っていたより日本には専業作家というのは多くなくて、案外みんなキチンとした仕事に就きながら文筆業と両立させていることが多いのだ。そうだったのか、とサンタクロースの死に立ち会ったような気もするが、実社会というのは元来そういうものであろう。

そういうお前はどうなんだといえば、原稿料だけで自分と妻子の生活費、月々の住宅ローンと国保・年金をまかなっているので、比較的ハードコアスタイルな方ではないだろうか。嘘だろうと思われるかもしれないが、うちは原稿料以外の収入は一切ないのだ。おっそろしい話である。そりゃ馬車馬のように働かないと食えないわけだが、馬車馬のようにでも働けば一家3人釜の蓋が開くのだから、ありがたい境遇ではある。それに私は親の介護なども今のところないし、仕送りすべき親族もいないので、無頼平野を歩んでいるといえども全然甘い方、メロコアみたいなものかもしれない。

しかしいつまでもハードコアスタイルに固執するつもりはなく、別に稼げる道があるならいつでも二毛作、三毛作に転びたいと思っている。笑点の山田隆夫君はああ見えて家賃収入があるというが、できれば私もその境遇を目指したい。といっても思いつく副業といえば占い師、性のカウンセラー、シャンソン歌手、宗教家くらい。うーん。某書刊行会みたいに地熱発電でもやってみようか……。

と余談が長くなったけれど、今日はこれからゲラチェック、原稿書き、メール返信などをまとめてする予定。新たなアンソロジーの依頼もきたので企画を練る。野坂よ私を助けてくれ。





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