2022年10月22日土曜日

怪老人日乗:10月21日(金)

しばらく間が空きました。月曜深夜からバスに乗って大阪へ、日中歌舞伎を観て、大阪の妻の実家に立ち寄り、その日の深夜バスで東京へ。水曜の朝に池袋についてそのまま無人の編集部で月刊誌作業。終わらせて帰宅したのがお昼頃、という往年の気合い入ったバンギャのような0泊3日旅行があったので、どことなく気ぜわしい一週間でした。

とはいえ0泊3日、アリだなと思います。朝早い新幹線で出かけたとしても、旅行先に着けるのはいいとこお昼前。深夜バスだとその点、朝早くから動けて、帰りも夜中ぎりぎりまで現地で過ごせるので時間がたっぷり使えるのと、終電の新幹線で帰ってきたところでその日はどうせ使い物にならないので、だったらバスで寝ちゃっても一緒だなと。

問題は揺れの中で眠れるかどうかですが、これは若い頃より平気になりましたねえ。長年のライター暮らしで「あえて冷たい床で寝る」「1時間だけ寝る」みたいな過酷な睡眠を経験してきたので、数時間おきに目が覚めるのは全然大丈夫でした。もっとも帰ってきたその日より、翌日にどっと疲れたきたのでそこは老化でありましょう。そういや十数年前に今の奥さんと上京したのも深夜バスだったなあ。当時はなんのあてもなく、逃げるように関西発の深夜バスに乗ったわけですが、まあなんとか物書き業に就くことができたのはラッキーだったなと思います。

と前置きが長いよピエール。というわけで歌舞伎については割愛。すごく面白かったとだけ言っておこう。4人の若い女性が肝試しをして、井戸から例のスタイルで貞子が出てくる、という序盤の現代劇では正直「うーん、大丈夫かこれ」という不安を抱いたのですが、井戸をくぐって室町時代(つまり皿屋敷の時代)に貞子が登場するあたりから俄然面白くなり、片岡愛之助の色悪ぶりも素晴らしくて、ドロドロした人間悪の魅力と、様式美を極めた怪談歌舞伎の怪異表現、そこに我らが貞子が絡むという、フレディvsジェイソンみたいな、三大怪獣地球最大の決戦みたいなゴージャスさで、思わず感涙にむせんでしまいました。劇場内で泣いてる人はほとんどいなかったと思いますが、私はほんとに泣いてしまったんですよ。かっこよくて。観に行ってよかった。パンフも買ってニコニコでした。




で日記に戻るよアレハンドロ。金曜日。取材であった。昨日は取材(されるほう)だったのだが今日はするほう。神保町に出て、とあるエッセイ集に関するインタビューを1時間ほど。無事終わって晴れ晴れとした気持ちで神保町歩く。表のワゴンで森真沙子の『眼のない人形たち』を買う。田中文雄と並んで、見つけたらつい買ってしまう作家だ。お昼は何を食べよう。迷った末、三幸園へ。昨日はチキン南蛮をやっつけてしまい、今日は健康的なものを食べようと思っていたのに、結局餃子定食を注文してしまった。

飯田橋に立ち寄って18時まで仕事。今月の某月刊誌作業もなんとか目処がつく。あとは26日に校了するのみ。帰宅すると本たくさん届いている。京極夏彦さん他著『ひどい民話を語る会』(KADOKAWA)の他、解説を寄稿した文庫本など。夜は取材用のホラーっぽい本を読んで寝る。ホラーっぽいというのは、これをホラーと呼ぶのはどうかなあ、と思うからだ。




今年もあと2か月強。ガシガシ頑張りたいと思う。遅れ気味だった仕事も取り返し、不義理しているあれこれも進めたい。ツイッターを見ていると若い人たちがホラーや幻想文学について熱っぽく語り合っており、そういう姿に大いに刺激を受けるところがあって、年長者がちゃんとせねばなあ、と柄にもなく責任感めいたことまで感じるのであった。古池や買わず飛び出すブックオフ(芭蕉)

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