2022年3月4日金曜日

怪老人日乗:3月4日(金)

あっと驚くブルータルデビルプロジェクト。もう3月4日ではないか。うーむ、いろいろ参る状況になってきた。

毎朝起きてごはんを食べて机に向かう。パソコンを立ち上げてまず着手するのはこのブログだ。アクセス数をチェックすると一桁である。昨日の日記も3人くらいにしか読まれていない。こりゃあ気楽だ。のびのび書けるぞ。かつて須永朝彦氏は「読者千人のエンターテインメント」ということをおっしゃったが、私の場合「読者3人の日記」である。

そういえば、と唐突に思い出話になるのだが(逃避です)、私がツイッターを2018年に始めたのはある人の言葉がきっかけだった。その前年だったろうか、あるビジネス書の著者さんにインタビューする機会があったのである。

その方の新刊について質問し、「いやー、自分もまだ読んでいないんだよね」と往年の松本伊代のような回答にザ・大人の世界を垣間見たのであるが、多忙な著名人がいちいち自分で本を書くわけがないこともすでに知っていたので、「あははー、そうですよねー」と和やかに取材は済んだのであった(その方の仕事をよく知っている片腕的なスタッフが書いたという話だった。名義は個人でも実質はプロダクション的システムなのだろう)。

で、その方が取材の終わり近くに「自分にとってSNSにいない人は、存在しないも同じだ」ということをおっしゃったのである。どういう話の流れだったか、確か仕事のパートナーをどうやって見つけるかみたいな話だったと思うのだが、その話に私はがーんとショックを受けたのである。

当時ブログはやっていたが、SNSの類には一切触れていなくて、たまにツイッターを覗いてみたりして「みんな楽しそうにやってやがるな!」と暗い気持ちを募らせていたので、自分がやることは一生ないだろうと思っていたのだが、「そういう考え方もあるのか」と目からウロコセブンだったのである。

インターネットは開かれているようで、そうでもない、ということにハタと気づいた瞬間だった。いくらブログを書いても、気づかれなければ意味がない。ブログにメールアドレスを表示しているが、未知の人からコンタクトをもらったことなど皆無である(これは今日までそう)。SNSをやっている人はその輪の中ですでに知り合いがたくさんいるので、わざわざ検索して未知の人のブログを読もうなどとは思わないのであろう。

別段このブログで仕事を得ようと思っていたわけではなかったが、しかし「存在しないと同じ」まで言われると考えざるをえない。そしてこの著者さんの考えが極端でないことは、自分がツイッターをやってみると理解されるのである。相互フォローしている人だと、顔は知らないまでも「すぐそこ」にいるという感覚があり、そこから外れると途端に動向が追いにくくなる。環境が心理に与える影響は大きい。

そんなわけで、別段知名度を上げたいとか、仕事を増やしたいとか思ったわけではなかったが、「そこまで時代は移っているのか」と衝撃を受けたこともあって、ツイッターを始めたのは2018年5月。初期からフォローしている方はご存じと思うが、当初はつぶやくことがなくて、宇能鴻一郎の『むれむれ夫人』という官能小説のフレーズをひたすら投稿していた。ほとんどbotである。

そのうち、「こんなことではヤバいやつだ」と気づきまして、一人称を意図的に「私」から「僕」にしたことがあった。最近また油断して「私」に戻っているが、ツイッターの短文だと「僕」とした方がやわらかい感じにはなるようである。そんな工夫を経て、ツイッターを4年くらい続けるうち、そこから仕事のご依頼をいただくことも増えたし、こちらもDMで取材のオファーを出すなど活用させてもらっているので、あの著者さんの言うことを聞いてよかったなあと思うわけであった。

あれれ、日記を書くつもりが長々と思い出話を書いてしまった。

昨日(3月3日)は遅れていた原稿Qを仕上げてメールしたのが昼頃。午後は家の工事の人が来てあれこれ下見をしていった。30分以上遅れてやってきたので、少々慌てて都心仕事へ。夕方6時まで編集作業やって、帰宅して7時。お夕飯は中華丼、高野豆腐と三つ葉を卵とじしたもの、酢の物。ひなまつりだったのでデザート的なもの食べ、風呂に入って仕事深夜まで。

戸川昌子『透明女』はますます混迷の度を深めてきた。もう誰が死んでて、誰が生きているのか分からない。ある意味、乱歩の『猟奇の果』のようだ。乱歩のあの系譜っていうのは戸川昌子、宇能鴻一郎に受け継がれたというのが私の理解。まあ、谷崎の切り拓いた路線、ということですよね。

届いた古本は一冊。菊地秀行『影歩む港』。持っている気がしたけど持っていなかった。しおりが平成ガメラ1作目の割引券だったから、その頃に出た本。

今日はどこも出かける用事がないので猛然と、いろいろ進める。某企画目次案送って、某ムック原稿を進めて、日曜日の取材の支度もせねば。ところで『東京新聞』の占い欄が面白くて、このところ注目している。歯に衣着せぬというか、ズバリ言うわよというか。昨日なんてこうですよ。「耳がまず狂って迷信に陥る」。怪談話か。





0 件のコメント:

コメントを投稿