2022年2月27日日曜日

怪老人日乗:2月27日(日)

昨日は二・二六事件の日だったのである。この事件を扱ったフィクションとして思い浮かぶのは山田正紀の『ファイナル・オペラ』だろうか。

二・二六当日、東京は雪で覆われたというイメージが強いが、一説では降らなかったという話もあるそうで(ここは山田正紀一流のフェイクかもしれない)、果たして雪は降ったのか降らなかったのか、そもそもなぜそのような分岐が起こったのか、という疑問から語り起こされる二・二六秘史だ。東京の狭い路地を戦車が走っていくシーンがあり、そこが妙に印象に残っている。

昭和史を扱った山田正紀の「オペラ」3部作ではやはり『ミステリ・オペラ』が質量ともに圧倒的なので、2&3作目はどうしても印象が薄くなってしまうのだが、『マヂック・オペラ』『ファイナル・オペラ』も面白かった記憶があります。でも正直言うとあんまり覚えていないんです。『ミステリ・オペラ』の印象が強すぎて……(『ミステリ・オペラ』序盤でぞろぞろと戦死者が立ちあがるシーンは最高。あれは今こそ読むべきだろう)。

さて。日記である。少年野球、子供が初試合に出場したが17対2で破れた。相手は地域一の強豪校、まあ仕方ない。昨日は午前中「好書好日」の2月分時評を公開。


今月は「呪い」を扱った新刊4冊を紹介した。4冊目に紹介した豊嶋泰國『図説 日本呪術全書 普及版』は記事にも書いたとおり、学生時代に読んで大いにワクワクした本である。当時は学研の「ブックス・エソテリカ」なんかが好きで、特に古神道を中心に日本的オカルティズムに興味津々だったので、この本も愛読した。豊嶋氏と加門七海さんが対談している本も持っている。

学生時代よく本を買っていたのは大手筋商店街の近鉄の線路の下あたりにあった本屋で、なんという名前だったかなあ。大手筋には20年くらい行っていないから、おそらくすっかり様子が変わっていることだろう。大手筋商店街には近鉄・京阪の駅の近くにそのやや広めの書店(半地下みたいな感じだった)とレンタルビデオのTSUTAYA、商店街を進んだ突きあたり近くにもう一軒書店があり、それぞれに大学時代の思い出が染みついている。

前者で買ったのは原書房の『岡本綺堂伝奇小説集』。岡本綺堂はそれまでちゃんと読んだことがなく(『現代怪奇小説集』などのアンソロジーでは読んでいたか)この3巻本のアンソロジーで初めてまとめて読んだ。どの巻も加門七海さんの解説がすばらしく、「この人はなんかよく知らないが、すごい人だ」と意識したという点でも思い出深い。

後者では平井和正の『幻魔大戦』を買った。ちょっとアニメっぽい絵で新装版が出たんですよ、学生の時に。全20巻を10冊にまとめなおした本だったが、何気なくその1冊目を手に取ったらこれがまあ面白くて、2冊、3冊と読んでいくうちに完全にはまった。たしか熱を出してフラフラだった日だったのだが、それでも読むのをやめられず、隣駅の伏見桃山まで出かけていって続きを買ったのをよく覚えている。

当時はつくづくオカルトが好きだったんだなあ。あの熱狂はやはり自分と世界が未分化の、感じやすい年頃だったからだと思うのだが、それにしても空飛ぶ円盤、古神道、新興宗教、呪術の本なんかをよく読んだ。あのあたりが自分のベースにあるので、フィクションの仕事をしていても、やはりそのあたりのドロッとしたカルチャーの味が出てしまう。ちくま文庫のホラーアンソロジー『家が呼ぶ』『宿で死ぬ』にそれぞれ小池壮彦氏の怪談実話を収録したのも、そうしたオカルト時代を今も引きずっているからだろう。

さて仕事しなくちゃ。色々やることがあるので15分ずつタイマーをかけてやっている。一説では今年2月は35日まであるらしいので、希望を捨てずにがんばりたい。先日ノストラダムスの子孫が南米にいたというニュースを見たが、希望を捨てずにいればそういうことだって起こりうるのである。




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