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土曜日が終わってしまった。おそらくフリーランスの物書きをしている人間にとって、土曜日は一週間でいちばん心安まるときである。基本的に出版社というのは月~金の稼働だから、金曜日の夕方が過ぎると次に編集者がメールを開くのは月曜の朝(もちろん例外はあります)。つまり原稿を作る側としては2日間の猶予期間が与えられるわけです。
これはでかい。味わったことのない人には伝わりにくいかもだが「これからむちゃくちゃ痛い注射を打ちますよ」と歯医者さんに言われたと想像してみてください。で、気鬱になりつつ病院へ行くと「あ、注射液が切れていました。取り寄せるのに時間がかかるので注射は来年にします」と言われたみたいな感じ。よかった。何も解決していないのですが、とりあえずよかった。来年また辛い思いをするかもしれないけど、今日のところはコーヒー飲んで鯛焼きでも食べよう、という気持ちになるでしょう。
フリーランスにとって金曜の晩から土曜の午前というのは、そういう気持ちに満たされるつかの間の精神的凪のような時間帯で、もうおれは何だってできる、〆切には絶対間に合うし、映画だって2本くらい観れそうだ、片付けもしちゃおうかな、という時間富豪気分を味わうけです。もちろんそれはただの錯覚で、ゴールデンタイムといえども時間の流れは普段と変わらないわけで、ボヤボヤしていたらあっという間に土曜日は過ぎ、日曜の午後になって、ひー!と泣くことになるのですが、そこはそれ。土曜日にほっと一息吐く時間があるからなんとかやっていけている、という気もするのであった。
昨日は狭山市の稲荷山公園まで出かける。狭山市の博物館で恐竜展をやっているというので。おそらく7月はここを過ぎたら休日を取るのが難しく、突然だったが行くことにしたわけです。いやあ、いい博物館だった。公園もステキに広くて、バレーボールや鬼ごっこをやり放題でよかったが、なにしろ博物館がよかった。
30分もあれば見終わってしまうようなほどほどのサイズ。縄文時代から近現代まで狭山市の歴史をワンフロアで見せてくれるシンプルな展示内容。でもそれがいい。私は旅行で訪れた地方都市の図書館・博物館に行くのがもともと大好きで、ガランと空いた施設内を歩きまわっていると、まるでその町の理科少年や文学少女にでも生まれ変わったような気持ちになり、まぜこぜになった郷愁と旅情で胸が切なくなるのですね。古い図書館や博物館が登場する稲生平太郎『アクアリウムの夜』とか、天沢退二郎『光車よ、まわれ!』などの影響もあり。
狭山市博物館も建物自体は比較的新しかったですが、ぐるっとメインホールをとりまくような回廊がある作りで、ささやかな博物館ならではのよさ、町の少年少女が学校帰りにふらっと立ち寄るような身近な雰囲気があって、とても好きだった。引っ越したらよりアクセスがよくなるので、またちょいちょい来よう。稲荷山公園はお花見の名所でもあるようだし。
展示されている恐竜画がまたよかった。「チラノサウルス」を「ティラノサウルス」と書き直してあるくらいオールドスタイルの想像図で、羽毛の生えた恐竜なんて一体もいない。特別展では最新の研究成果をもとにした恐竜展が開かれているのに、ひっそりした常設展示室では70年代テイストの恐竜画が以前と変わらぬままに飾られているってステキだなあと思ったのでした。
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