2017年7月28日金曜日

荒俣宏『お化けの愛し方』刊行記念イベント


おはようございます。怪奇幻想ライターの朝宮運河です。
久しぶりの更新なので思わず自己紹介してしまった。
扠。
書きたいネタは諸々あるのだが、目下月末に迫ってくる謎の生命体に追われており、なかなか時間が取れないのである。今日はとり急ぎ、一つの話題を提供して去ることにしたい。


荒俣宏『お化けの愛し方 なぜ人は怪談が好きなのか』(ポプラ新書)という本が刊行され、その記念トークイベントが7月26日、八重洲ブックセンターにて開催された。




『お化けの愛し方』はこれまでホラーや妖怪、怪奇幻想文学に関する著作を多数世に問うてきた知の巨人・荒俣宏が、人とお化けの関わりについてあらためて論じた「最後の『お化け学』出版物」である。
人とお化けのロマンティックな恋を扱ったいわゆる「恋愛怪談」(江戸川乱歩)の系譜を、中国の『剪燈新話』から円朝の『怪談牡丹燈籠』までたどり、もうひとつの怪談文学史を掘り起こした好著であった。


で。著者のトークイベントを観覧してきたわけです。
いや~、びっくりしました。
何にびっくりしたって、『お化けの愛し方』についてのトークショーなのかと思いきや、ほぼ全編にわたって平井呈一の話だったんですよ。


荒俣氏も今年でなんと70歳。そろそろ作家業は店じまいするらしく、膨大な蔵書もほぼ手放してしまったそう(某出版社にまとめて託したとか)。イベントではそれに際して作成された蔵書票が、来場者にも配られました。児雷也です。




で。
「では僕はいま何をやっているのか。今日はそれをお話ししたいと思います」と、前置きされてはじまったのが、平井呈一をめぐる興味津々のお話だったのですね。


作家業を半ばリタイアした荒俣氏は、これまで気にかかっていた亡き師・平井呈一の足跡を辿る旅に出発。日本各地で関係者を訪ね、生前の平井呈一についてインタビューしているそうです。
その結果、新潟県立小千谷中学の英語教師として過ごした疎開中の知られざるエピソードや、長らく不明だったお墓の所在などが判明。荒俣氏もついに墓前に手を合わせることが叶ったそうです。


かつて千葉県にあった平井邸跡地の現状(こんもりした林になっていました)や、近年になって発見された貴重な原稿・書簡(1969年に荒俣氏が平井翁に出した年賀状など)が写真とともに紹介されたりもして、怪奇幻想文学のファンとしては「こんな貴重な話、さらっと聞かせてもらっていいの!?」という感じの衝撃の一夜でした。いやあ、いい話を聞いた。


「調べ物が一段落したら、本にまとめようと思います」とおっしゃっていたので、本格的な店じまいはまだしばらく先のようです(笑)。
 

なお、平井呈一の経歴と作品については、東雅夫氏による力作評伝「Lonely Waters――平井呈一とその時代」(創元推理文庫版『真夜中の檻』所収)が詳しいですが、あいにく現在品切れ中。
と、思ったらこの秋に復刊されるらしいですね。ばんざーい。




というわけでまた次回!
月末にやってくる謎の生命体を倒しながら、近々また出てきます。
 

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