2016年2月29日月曜日

『ナイトランド・クォータリー』vol.4購入!



先週の金曜日。

無事に取材を一ツ終えて、池袋経由で帰宅しようと思ったところ、はたと気がつきました。
「あ、帰りの電車で読む本がないや」。
これって結構、フリーライターあるあるだと思うんですよ。往路は取材用のゲラなどを読みかえしていて、他の本を読む余裕がないんですが、帰る段になって仕事以外の本を持っていないことに気づく。


というわけで。
慌ててジュンク堂書店池袋本店に飛びこみ、3階にある「幻想文学棚」をチェックしました。
すると、ああッ、『ナイトランド・クォータリー』の新しい号が出ている!
怪盗のようなスピードで手もとに確保。みるみる血圧があがるのを感じながら、ページを捲りました。





このブログを見ている方の多くはご存じでしょうが、『ナイトランド・クォータリー』は日本で唯一の〈ホラー&ダークファンタジー専門誌〉。海外の未紹介ホラー小説を中心に、アート、映画など怪奇幻想全般にまつわる情報を年に4回提供してくれる、最高にステキな雑誌です。


今回の特集は〈異邦・異境・異界〉。巻頭に置かれたラヴクラフト「エーリッヒ・ツァンの楽曲」(新訳)を思い浮かべると分かりやすいですね。たまさか訪れた見知らぬ町、遠い国で、この世ならぬ経験をしてしまう怖さ、心細さ、懐かしさ……。


掲載作品は古典系からH・S・ホワイトヘッド「チャドボーン奇談」、ウィリアム・ホープ・ホジスン「海の悪魔」、現代作家からはスティーヴ・ラスニック・テム「黒い鳥のいる麦畑」、サイモン・ストランザス「凍土の石柱」など。
国内作家の書き下ろしも掲載です。朝松健「〈一休どくろ譚〉井戸底の星空・前編」、友成純一「海人、毒魚を喰らう」。


サイモン・ストランザスは前身誌『ナイトランド』 の時代から、しばしば作品が掲載されている作家。 『ナイトランド』3号の「黒いモスリンの小さな穴」が、印象的な幻想ホラーだったので気になっていました。ラスニック・テムにしても、こうやって継続的に作品をフォローしてくれるのは嬉しいですね。


嬉しいといえば、わたしにとって何より嬉しいのは、ジョー・R・ランズデールの未紹介短編の掲載。
わたしはランズデールが非常に好きなんです。怖い話が大好きで、腕っ節も強い、優しくて面白い親戚のおじさんみたいな感じがする作家ですね。今回の「月あかりの草原」は20世紀初頭の蒸気機関車の旅を描いたもの。ノスタルジックな車や機械がよく出てくるのも、わたしには嬉しいポイントです。


そして!
さらにさらに血圧があがる記事が、同誌23ページに出ていました。
「ナイトランド叢書」第二期の告知です。
そのラインナップはこちら。

クラーク・A・スミス『魔術師の帝国』

M・P・シール『紫の雲』

マンリー・W・ウェルマン『ジョン・サンストーンの事件簿』

E・F・ベンスン『塔の中の部屋』

オーガスト・ダーレス『ミスター・ジョージ』

アルジャーノン・ブラックウッド『ウェンディゴ』


もう全巻楽しみ!楽しみすぎるっ!
シールの『紫の雲』は名のみ知られた幻想文学の傑作ですね。まさか日本語で読める日が来ようとは。長生きはするものです。
長編はシールだけで、他はすべて選集または連作集というのも嬉しいところ。


個人的にいちばん楽しみなのは何といってもベンスン!
ベンスンの怪奇小説は、コタツに入ってミカンを食べるような、雪山で温泉に浸かるような、寝床で稲川淳二を聞くような、心とろかす快感がありますからねえ。未だに文庫版選集のない作家ですし、これが出る意義はものすごく大きいでしょう。


『ジョン・サーストン』は〈銀ギターのジョン〉で知られるウェルマンが生んだ、もうひとつのオカルト探偵もの。ワクワクします。ダーレスの短編はどれも味わい深いし、ブラックウッドは中編にしぼったセレクションというのが渋い。ツボを押えたセレクション、個人的には第一期よりもワクワク感が高かったりします。
絶対に、ぜぇったいに第二期全部出してもらわないと!


 (第一期はこれで完結かな?)


というわけで。
その日は『ナイトランド・クォータリー』4号を読みながら帰宅したのでした。
荷物が重くなってしまったんで、隣に見つけたジョイス・キャロル・オーツの『邪眼 うまくいかない愛をめぐる4つの中篇』は断念。帰ってからネット書店に注文しました。


(オーツ中編集!河出えらい!)



0 件のコメント:

コメントを投稿