2016年2月25日木曜日

祖父江慎+コズフィッシュ展へ



おいちいコーヒーを淹れてさて仕事をしようと思い、机まわりを整理していたら……ががーりん、カップがひっくり返ってコーヒーがすべてこぼれた。北海道弁でいうなら、まかした。かっぱがえした。


というわけで、動揺する心を抑えられないままにブログを更新しております。
いや、そもそもブログなんて、動揺でもしていなければ更新できるものではないのです。
知っていましたか?


さて。
何から書こうかしら。そうそう。先週末、千代田区日比谷図書館で開催中の「祖父江慎+コズフィッシュ展:ブックデザイ」に行ってきたのである。

 (「デザイン」ではなく「デザイ」ね)


わが国のブックデザインの第一人者として知られる祖父江慎氏氏とそのデザイン事務所であるコズフィッシュが、これまで手がけてきた約2000冊に及ぶ装丁本を前後編に分けて展示したもの。
私が行ったときには、すでに展示入れ替えが済んだ後で、後半戦に突入していました。

 
吉田戦車『伝染るんです。』などの代表作はもちろん、怪談専門誌『幽』、山白朝子『死者のための音楽』、綾辻行人『深泥丘奇談』なども展示されているので、国産ホラー小説ファンも必見なのです。特に『深泥丘』は祖父江氏自身の手になる造本プランのノートまで公開されています。わたしが怪談実話を連載していた雑誌『Mei(冥)』も目立つところに展示してありました。


カバーのデザインはもちろん、紙の質、印刷技術、フォントの選定、読んだ時の手へのフィット感にまで気を配り、本の内容に応じて毎回ベストな答えを模索してゆくのがブックデザイナーの仕事。そこにルーティンの入りこむ余地はないのだなあ、と一冊一冊カラーの違った(でも、ちゃんと祖父江氏らしい遊び心がある)作品を眺めて、痛感いたしました。


愛しの小野不由美『ゴーストハント』全7巻&『鬼談百景』は小さな暗室で展示。蓄光インク(暗闇で光る)を使用したデザインの本領を見ることができます。
『ゴーストハント6 海からくるもの』のカバーが光るのは知ってたけど、『鬼談百景』の帯もあんなに光るものだったんですねえ。



 (暗闇で光る本、2冊!)


本が売れない、特に文芸の単行本が売れないという話をよく耳にします。たしかに電子書籍が普及してきた昨今、値段が高い&場所を取る単行本を選ぶことのメリットは、これまでに比べて減ってきたのかもしれません。
が。
今回の展示を見た人は、間違いなく思ったはずです。ここで展示されている単行本は無性に買いたくなる!手もとに置いておきたくなる!ここまで全力でデザインされた本なら、そりゃ買いたくもなるでしょう。
「買うか、買わないか」の選択において、ブックデザインの占める役割って大きいんだなあ、とあらためて感じ入った展示なのでありました。


長びく出版不況への解決策がここにあるのかもしれない、うむう、と唸りながら日比谷公園をゆくと、カラスが頭上で阿呆、阿呆とけたたましく鳴き、「ホンマにおれはアホやろか」思わずそう呟きつつもよく晴れた冬空の下を東京駅まで歩きました。
いい一日でした。


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