で。
昨日は板橋区の赤塚界隈へと出かけてきました。
板橋区立美術館にて『種村季弘の眼 迷宮の美術家たち』鑑賞の為。
板橋区立美術館、いつもすてきな展示をやるのですが、なにしろ駅から遠い。
カルト大仏として知られる「東京大仏」からはすぐ近くですが、赤塚の駅からは2キロくらい歩きます。しかも結構な坂道で。いっそのことバイクで行ってやれと思って、愛車LMLを駆ってでかけてきたわけです。
で。
わたしがモグラのように暮らしている国分寺から赤塚へ向かうには、まずはひたすら五日市街道を東上。
大型古本屋とか、ガソリンスタンドとか、ファミリーレストランとか、そんなロードサイドの大型店を横目に緑地帯に沿って東上すると、いつしか小平市、武蔵野市、練馬区、そして杉並区へ。
ちょっと前まで住んでいた杉並区今川のあたりをつっきって、環八を北上。「井荻トンネルを発明した人はえらいなあ」といつもながらに感心しながら、タイムワープのようにトンネルをくぐり、ほどなく左折。すると、光が丘公園のこんもりした緑がすぐに見えてくる。
実をいいますと、板橋区赤塚というのは上京してきて最初に住んだ街で、この光が丘公園のあたりも含めて、川越街道から裏通りのネパール料理屋まで、よく知っているのです。
そもそもはちょっとした休みを利用して美術館に行くのが目的だったんですが、はからずも、赤塚、西荻窪とかつて暮らした街をめぐるドライブとなってしまいました。十月のひんやりんとした空気もあって、気分はたちまちおセンチに。
ううっ。
そうこうするうち、赤塚中央通りにはいりまして、美味しいベーグルを売っているパン屋さん「BOULANGERIE KEN」、気安く入れるタイ料理屋さんの「バイケーオ」、美味しいのに名前がヘンテコなうどん屋さん「おぴっぴ」などの前を通りすぎ、松月院の交差点をさらに前進。
かつてこのあたりに町田康氏が住んでいた、となにかのエッセイで読んだような気がします。
アップダウンのある通りをさらにしばらく進むと、着きました、着きました。
板橋区立美術館。
この美術館は上記のようなロケーションもあって、土日でもあまり混まないのが素晴らしい。いつかのドゥシャン・カーライ展なんて、平日の昼間だったこともあって、 ほとんど貸し切り状態で鑑賞できました。
で。
展示は種村季弘が生前愛した作品、評論でとりあげた作品、親交のあった日本作家の作品などによって、怪人タネムラの多面的世界を蘇らせようというもの。
エルンスト、ゾンネンシュターン、フックス、コーラップらの幻想美術から、赤瀬川源平をはじめとする日本前衛美術、さらには江戸時代の「覘絡繰」まで。種村季弘の追求した「偽」の世界を、トータルで追体験できる内容となっています。
ほかにも、著作の展示コーナーや、親交あった作家たちからの手紙の展示コーナーも見逃せません。誰かもツイッターで書いていましたが、澁澤龍彦の葉書におどっていた「ルンルン!」の文字は、しばらく忘れられそうにありません。
で。
せっかくだし大仏様にお参りしてゆくかと思ったのですが、あいにく16時閉門だそうで断念。あのぬるぬると黒光りするメタリックな感触の東京大仏、わたしはとっても好きなんですけども。ウォーズマンみたいで。
そうそう。忘れちゃいけない、赤塚駅まできたら「フランス製菓」の大仏サブレーを買わなければならぬのじゃ。
大仏サブレーは表面に大仏様のお姿がうっすらと、あたかも秘境の磨崖仏のごとくに浮き出した伝奇的にキュートなサブレでありまして。
ほんのり檸檬風味がするのと、ザラメがまぶされているのがポイントの名品です。
(割れちゃった!)
で。
結局、何が言いたいかのといえば、板橋区立美術館は素敵だからぜひ行ってごらんなさい、ついでに大仏サブレーもお食べなさい、鳩がなければ大仏を食べたらいいじゃない、とまあ、そんなことを言いたかったような気がいたします。
なんにせよものぐるおしい、冷たくも美しい秋の夜更けであります。
アデュウ。
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