90年代後半に学生時代を送ったわたしは、ご多分に漏れず「新本格推理直撃世代」なのです。
授業の合間にサークルのラウンジに行くと、誰か一人は講談社ノベルスを読んでいたし(文学系ではなく音楽サークルでしたが)、いまは郷里の岐阜で公務員をしているらしい同ゼミのY君が唐突に「僕ねえ、こんなトリックを思い付いたんだよね」と話しかけてくるしで……おそらく今の若人がラノベを読んでいるような感じで、わたしたちの世代というのは本格ミステリをたくさん読んだんですね。
なので。
綾辻行人氏の『深泥丘奇談・続』(MF文庫ダ・ヴィンチ)に解説を依頼されたときには、文字どおりワナワナと震えました。そんな冗談みたいなこと、あっていいのでしょうか。ただのファンなのに。
で、「どうしたらいい?」と思わず岐阜の方角を向いて、心の中でY君に相談してみたところ、「憧れの綾辻行人の解説!? 友よ、死んでもやり遂げたまえ!」と彼は婚姻届かなにかに役所の印鑑を捺しながら力づよく応えたのであります。元気かなあ、Y君。
というわけで。
『深泥丘奇談・続』の解説を書かせていただきました。
発売日は明日の2月25日。すでに都内書店には並んでいる模様。
わたしの解説はともかくとして、怪談小説の新たな地平を覗かせてくれるようなユーモラスで魅力溢れる奇談の世界は必読です。
ちなみに、今月のMF文庫ダ・ヴィンチはそのまま「ダ・ヴィンチ怪談文庫」と呼んでもおかしくはないラインナップで、新刊5冊がことごとく怪談。
恩田陸の野心的幽霊屋敷小説集『私の家では何も起こらない』。
黒木あるじの百物語怪談集第2弾『怪談実話 無惨百物語 にがさない』。
円城塔、海猫沢めろん、前田忠明が参戦した『怪談実話系/魔 書き下ろし怪談文芸競作集』。
怪談実話の実力派が集った『怪談実話コロシアム 阿鼻叫喚の開幕篇』。
まとめて買うと、しばらくは怪談漬けになることができるという強力な布陣です。春から本気ですなあ、『幽』編集部。
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