2024年10月5日土曜日

怪老人日乗:10月5日(土)

さて、昨日の反動でボンヤリしてしまい気づけば夕方。こりゃまずい。魔神伝説だ(よくわからないが)。というわけで日記をつけて気分を入れ替える。西武百貨店の屋上には――と唐突に話題が変わるが――昔は観覧車などがあったことが『まんが道』を読むと分かる。ああいうものがなくなったのはいつなのだろう。私はそれなりに昭和の人間であるという自覚があるが、百貨店の屋上が遊園地みたいだったというよく聞くアレは知らない世代である。西武百貨店が好きで、その屋上がまた特に好きなので、遊園地が残っていたらよかったのになあと、最近の池袋西武の荒廃ぶり(まさに荒廃としかいいようがない)を見ていて思うのだった。

さてさて。昨日はですね、11月に創刊される某新雑誌のための座談会に参加。私にしては珍しく文芸的な仕事であった。文芸的、というのはまあジャンル小説的価値観でない仕事というか、いわゆる文壇的なところとの関わりを感じさせる仕事、ということである。他のジャンルの書評家さんとの座談会で、当然それぞれ価値観が違うわけで、そういうのを交差させるのは刺激的であったし、得がたい体験であったと思う。それにしてもXにいるホラー読みの方々は、怖ければ大喜び、気持ち悪ければ歓喜、というタイプで、ついついそういう世界に慣れてしまっていたが、全然一般的じゃないんだなあとあらためて思いました。

座談会は2時間。夜の7時くらいから始まって、終わったら9時だった。司会進行もやって収録もしたので(スタジオで音声を録った)少しく疲れた。私は昔から地蔵のように大人しく、壁を見つめて生きてきたのであるが、案外にしゃべる仕事は平気で、ぺらりぺらりと妄言虚言を弄することができるのは、いったい親族の誰に似たものであろうか。

ともあれ座談会は無事に終わり、打ち上げ兼ねて神保町のビストロでご飯。出版業界の人がしばしば訪れる店らしい。料理も美味しいし、お酒も種類があって、楽しい席でございました。案外に書評家というのは同業者と会う機会がなく、まして私は業界の片隅でホラーだけ読んで生きている、だいぶニッチな処にいる人間なので、いわゆる書評家っぽい人たち(本の雑誌に書いているような)とお話しするのは新鮮な気持ちであった。それとともに自分の邪道・外道・雑種ぶりもなんとなく自覚され、そういう野良ライター的なところに案外私の独自性があるのではないかとも前向きに思いました。私は前向きなのだ。

終電近い西武線に乗って帰宅。隣駅までは起きていたのだが、ハッと気づくと自宅より2駅先に来ていて、あわてて下りる。夜道を1時強も歩いて(しかも革靴で)かなりくたびれて、しかも自転車を最寄り駅に停めているので、それを回収しないといけない。まあ携帯電話があったので、それに入っていた怖い話(昨日書いたとおりでヒトコワ系。丸山ゴンザレスや村田らむなど)を聞きながら歩いた。寝たのが3時半。今日は午前中二度寝。雨でございます。

二見書房編集部の小塩さんより石川清著『津山三十人殺し 最終報告書』(二見書房)をお送りいただく。800ページ超の大著。津山事件研究の決定版ともいえる一冊のようだ。都井睦雄については映画やマンガでなんとなく知った気になっているが、きちんとした研究書を読んだことはない。我々の抱いている一般的に流布している都井睦雄のイメージというのが、どこまで実像に即したものなのか。時間を見つけて確かめてみたいと思う。




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