2015年7月11日土曜日

【怪老人日乗】 七月某日


というわけで、6月後半はまるっと仕事をさぼり、本を読んだり、映画を観たりして過ごしておりました。わははのは。お金がすっかりなくなった。

そういえば、先日こんなことがあったのである。

友人夫婦が遊びに来て、わが家で夕食をとっていた時のこと。
メニューは海南チキンライスであった。

ふと見るとわたしの妻だけが、妙なスプーンで食事をしているではないか。
他の3人はよくあるステンレスのスプーン。しかし妻が使っているのは、数年前モスクワで購入した民芸品の赤い木のスプーンだ。

そうか、わが家の家計はそんなにも逼迫していたのか……としばし山上憶良のような感慨に耽っていると、妻がふいに
「ユリ・ゲラーが悪いのよ」と云った。

ユリが悪い? なぜ? あのコリン・ウィルソンも認めたというユリのどこが悪いんだ?
次の瞬間、「――あッ、そうだった」
わたしの脳裏に、見慣れたわが書棚の映像が浮んできたのである。








昨年、ユリ・ゲラーが某BS番組の招きで来日した際、記者会見を開いたのであった。
ユリ氏はさすがのサービス精神で、インタビューや撮影にもにこやかに応じていた。

そしてわたしのような人間にまで、サインをしてくれたのである。
その時、わたしが台所から持ち出したスプーンというのが――。

「だから、うちには揃いのスプーンが3本しかないのよ」

とAさんの妻は、不機嫌そうに語ったという。



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