2014年1月31日金曜日

【新刊情報】 1月に出た怪奇幻想文学


なかなか落ち着いてブログを交信、じゃない、更新する時間がありません。

あっという間に1月もおしまい。
ということで、とりいそぎ「1月に出た怪奇幻想文学」をざっとご紹介。わたしの近視眼にとまった範囲内ですので、当然洩れもあるでしょうが、本屋さんめぐりのご参考にどうぞ。




夢枕獏の『江戸恐龍伝 第五巻』(小学館)は昨秋より刊行されてきた長編伝奇の完結編。同じ著者の人気シリーズ最新作『陰陽師 蒼猴ノ巻』(文藝春秋)も出ました。


高原英理編の『リテラリーゴシック・イン・ジャパン 文学的ゴシック作品選』(ちくま文庫)は文学におけるゴシック的表現を辿った注目のアンソロジー。同じくちくま文庫からは、ルイス・シャイナーのロックファンタジー『グリンプス』も出ています。

『ユゴスの囁き』(創土社)は着々と増殖している〈クトゥルー・ミトゥス・ファイルズ〉の最新巻。参加作家は松村進吉、間瀬純子、山田剛毅の3名。



『視えるがこわい! 地霊町ふしぎ探偵団』(角川つばさ文庫)は、地霊町シリーズの第2弾。怪談作家勢からはあの水沫流人さんが登場。

日下三蔵個人編集の『日本SF全集 第三巻』(出版芸術社)は、70年代後半から80年代にかけてのいわゆる「SF第三世代」の作家を収録。ホラー系からは菊地秀行、式貴士らが選ばれています。

松田哲夫編の『こわい話 小学生までに読んでおきたい文学3』(あすなろ書房)はダーレス、ブラックウッドなどを収める小学生向けのアンソロジー。なかなか通好みなセレクションだと思います。怪奇入門に大人が読むのもアリかと。



角川ホラー文庫からは、白土勉『火の獣』 、福澤徹三『忌談2』、小林泰三『百舌鳥魔先生のアトリエ』、宇佐美まこと他による『女たちの怪談百物語』が出ました。『女たちの~』はメディアファクト リーより刊行されて話題を呼んだ百物語本の文庫化です。同書に参加している加門七海の怪談エッセイ集『もののけ物語』も角川文庫となって再登場。

竹書房のホラー&怪談実話の新刊としては、福田修『Re:心霊写真部』、黒海老『定時制幽霊学級』、砂浦俊一『呪われ屋 橘心霊相談所へようこそ』、朱雀門出『脳釘怪談』、我妻俊樹『実話怪談覚書 水霊魂』、加藤一『「超」怖い話 午』が出ています。

ほかに文庫書き下ろし作品では、TO文庫から飯田雪子『八木澤菊乃の遺言』、廣済堂モノノケ文庫からくしまちみなと『怪異トキドキあたる 霧島物ノ怪研究所物語』、中谷航太郎『首のない亡霊 晴れときどき、乱心3』などなどが。ラノベなどでもホラー系作品はあるのでしょうが、カバーしきれないので割愛。


海外作品としてはスーザン・ヒルの長編クライムノヴェル『丘』(ヴィレッジブックス)が気になるところ。『ピース』(国書刊行会)は『ケルベロス第五の首』で知られる鬼才SF作家ジーン・ウルフの初期長編。


バフチンやハルムスと交流があった幻のロシア文学者コンスタンチン・ヴァーギノフの本邦初訳作品『山羊の歌』は河出書房新社から。最近の河出書房新社はロシア&東欧圏の作家をどんどん出してくれるので嬉しい!野々山真輝帆編『ラテンアメリカ傑作短編集 中南米スペイン語圏文学史を辿る』(彩流社)もマニアックな企画です。

古典SFを精力的に復刊している文遊社からはジュール・ヴェルヌの長編『黒いダイヤモンド』が登場。幻想文学ファンにも油断のならない光文社の古典新訳文庫には、ホフマンの代表作『砂男/クレスペル顧問官』が入りました。ジュリアン・グラック『アルゴールの城にて』(岩波文庫)は以前白水社から出ていたものの改訂版。ゴシック好きは是非。


『サイモン・アークの事件簿5』(創元推理文庫)はE・D・ホックの人気オカルトミステリ最新作。長らく入手困難だったフィリップ・K・ディックの長編『時は乱れて』(ハヤカワ文庫SF)はかっこいい感じの新装版になって復活。『猫のパジャマ』(河出文庫)はレイ・ブラッドベリの短編集の文庫化。


ノンフィクション関係では、池澤春菜『乙女の読書道』(本の雑誌社)が面白そう。オペラ沢かおり『怪運★マニア』(メディアファクトリー)は『幽』怪談実話コンテスト出身作家による、開運ならぬ「怪運」をめぐる抱腹絶倒のエッセイ。コリー・オルセン『トールキンの「ホビット」を探して』(角川学芸出版)、二階堂卓也『新東宝・大蔵怪奇とエロスの映画史』(洋泉社)なんて本も出ています。



石井光太『飢餓浄土』(河出文庫)、子母澤寛『幕末奇談』(中公文庫)は隠れ怪談本として。後者は皿屋敷、四谷怪談などにまつわるエピソードを含みます。さらにさらに谷村新司『谷村新司の不思議すぎる話』(マガジンハウス)という本まで出ているのであった。わはっ。


コミックでは押切蓮介『暗い廊下とうしろの玄関』(メディアファクトリー)が怪談ファン必読の問題作。「猟奇への戒め」にみちたドキュメンタリータッチの怪談漫画集です。楳図かずお『ゴシックホラー珠玉作品集4 偶然を呼ぶ手紙』(講談社漫画文庫)、高橋葉介『高橋葉介傑作集 手つなぎ鬼』(ぶんか社)、〈水木しげる漫画大全集〉の『フーシギくん 他』『猫楠 他』(講談社)にもご注目を。




雑誌企画としては「文學界」(文藝春秋)の阿部和重×藤野可織×綿矢りさの新春鼎談「生ける屍への偏愛」にのけぞりました。世はゾンビブームなのですねえ。月刊「ムー」(学研)は南極の地底円盤とナチスを久々に特集。ナチスが円盤を作っていた、という話は何歳になっても興奮するな。




来月以降も可能ならこんな感じで、新刊チェックをしてゆく予定。「これが抜けているぞ」、とか「こんな本もあるよ」という情報がございましたらコメント欄にヨロピクです。
さて。
次回こそ『定本 何かが空を飛んでいる』の書評をアップし、2013年幻想文学&ホラーの総括をやるぞ!いい加減にしないと春が、夏が来てしまう。





【おまけコーナー 今日のあんこ】

荻窪駅そばにある酒まんじゅうの専門店「高橋」。
引っ越してきて以来ずっと気になっていたのですが、縁がなくってなかなか買うことが叶いませんでした(日曜定休だし、酒まんじゅうは大人気ですぐに売り切れてしまうのです)。




が。
このほどついに購入することができたのですね。
ああ、この素朴な外見。口にふくむ前から明らかによさそうな気配がする……。
わななく手でお茶を淹れ、さっそく食べました。
たちまち広がるお酒の風味。そしてしっかり甘みのあるあん。小ぶりながらむっちりとした食感。喩えていうならE・A・ポオの短篇小説のような、凝縮された小宇宙。
赤シャツ先生、これは旨いぞなもし!


ちなみに。
わたしは酒まんじゅうというもの自体が好きでして。
以前、中央線の上野原という駅になんの目的もなく降りてみたら、そこらじゅう酒まんじゅう店だらけで(町の名物らしい)、「猫町」に迷いこんだ猫好きのような多幸感を味わったのであります。また行きたいな、上野原。





●高橋の酒まんじゅう
JR荻窪駅北徒歩4分。営業時間午前10時~品切れまで。日曜定休。






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