2012年11月13日火曜日

『ダ・ヴィンチ』12月号発売中


 とりいそぎましてーは、お仕事の告知をば。
 


『ダ・ヴィンチ』12月号が絶賛発売中。

今月は有栖川有栖さんの新刊『江神二郎の洞察』(東京創元社)について、見開き2ページのロングインタビュー。同書は『月光ゲーム』に始まる江神二郎シリーズ初の短篇集。日常生活にひょっこり現れた小さなミステリーに、江神さん率いるEMC(英都大学推理小説研究会)の面々が、ロジカルな推理を駆使して挑みます。

どこまでもロジカルでありながら、《日常の謎派》的な面白さもあり。江神二郎という謎めいた人物への親近感がぐっと増すこと請け合いの、好短篇揃いです。江神シリーズは火村シリーズに比べてちょっとハード過ぎるな、と思っている方も、ぜひ読んでみてください。EMCの面々が、これまでよりも愛おしくなるはず。
ちなみに、英都大学のモデルになった京都の私立大学はわたしの母校でもありまして、EMCがだべっている学生会館のラウンジの描写などとっても懐かしく感じました。

書下ろし短篇「除夜を歩く」は昭和最後の大晦日の晩を、2人きりで過ごすことになった江神さんと有栖の物語。しんと静まり返った夜の京都を歩きながら、ミステリ論をかわす2人の姿はなんとも微笑ましくも、リリカルで、そのうえミステリというジャンルが本質的に孕んでしまうアポリアについての鋭い言及まであったりして、これは必読の作品だと思います。

取材は大阪の某ホテルにて。『ダ・ヴィンチ』に使われている写真は、ホテルのすぐ外で撮影したものです。



それと。
毎度おなじみ「『幽』怪談通信」のコーナーでは、新雑誌『Mei 冥』(メディアファクトリー)の刊行を記念して、「ガールズ怪談ブックガイド」を作成。『Mei 冥』の他、『怪談実話系 妖』など、女性作家による怪談小説、実話、コミックを9冊紹介しています。『Mei 冥』を読んで、面白いな、と思った方はぜひ参考にしてみてください。




それとそれと。
角川書店の日本ホラー小説大賞、第19回となる今年は見事大賞が出ました。長編ホラー『先導者』(角川書店)で大賞を受賞した小杉英了さんにインタビュー取材をおこなっています。

『先導者』は死のシミュレーションを目指した、野心的なホラー作品。生死の境を越えることができるという特殊能力を備えた少女の、悲痛にして無垢な戦いの記録です。「無垢なるもの」が世の邪悪によって傷つけられてゆく儚さ、切なさ。そしてまた、そこを乗り越える少女の秘められた強さ……。静かな詩情と、生々しい死の恐怖、さらに魂の自由を謳いあげた、ミスティックな味わいのホラー長編となっております。

著者の小杉さんは(記事では触れられませんでしたが)わたしと同じく北海道出身。本州に越してきた時に感じた空間的な狭苦しさが、彼方への憧れのベースにあるかも知れない、というお話は個人的にすごく興味深いものでした。今後のご活躍をお祈りしています。





という感じで、お仕事報告は以上。
ああ、仕事に追われている時ほどブログが書きたくなるのはなあぜ?


2 件のコメント:

  1. 日本ホラー大賞になるなんて!?

    大賞を受賞された小杉さんの「先導者」
    これから読もうかと思ってますよ!
    まぁその前に読者賞を受賞された櫛木さんの
    「ホーンテッド・キャンパス」を読んだんですけどね・・・。

    小杉さんの作品は本格的ホラーみたいですが、
    櫛木さんのはホラーが引き立て役みたいでした。
    新人さんだけあって、ネットの情報は少ないの
    ですが、詳しいサイトが見つかりました。
    http://www.birthday-energy.co.jp/

    これもホラーになるんだ~というのが率直なところ。

    さて、これから小杉さんの方を読みま~す!

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  2. >あずささん


    情報ありがとうございます。


    滅多にコメントをいただくことがないので、お返事遅くなりました。


    『先導者』は『ホーンテッド・キャンパス』とはまた違った、幻想文学色のつよい作品です。
    読み比べると、ホラーというジャンルの幅広さをあらためて感じますね。


    著者の小杉英了氏は、とてもお洒落なジェントルマンでしたよ。

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