2026年9月20日日曜日

怪老人日乗:9月20日(日)

ニッコニコの日曜日だよおおお。と謎のアイドルが叫んでいる。荒れ果てた墓所で。奥津城で……。南無軍茶利明王……。というわけでですね、日曜日なのでみんなニッコニコした方がいいですね。わたしは低気圧にて眠くて眠くて、ニコッ……とした端から笑顔が無重力空間に吸い込まれていきます。なので無表情であります。

今はなかなか激し目の雨が降っている。台風接近だから仕方ない。やや獄門島風になってしまったが、仕方ないのである。明日はもっと台風が近づくらしく、大型ロックフェスもゲームショーも中止になった。大変なことである。こういうの払い戻しをする側の気持ちになってみると、頭が痛いだろうなあと思うけれども、来る予定だった人はもっと悲しい気持ちなわけで、みんなでやっぱりニッコニコの日曜日にするしかない。謎のアイドル、頼む。

というわけで散歩もいけず、朝から本読み。ベッドで本を読んでいると眠くなってうとうと、これではじいさんではないか。まあがんばろう。今日の日記はそんなところなのだが、さかのぼってすこし書く。

火曜と水曜は打ち合わせの2連続であった。まず火曜日は星海社のM茂さんと。『現代ホラー小説を知るための100冊』を作ってくれたありがたい方である。この方と池袋にあるルノアールで打ち合わせ。池袋周辺には喫茶室ルノアールが何店舗もあるのだが、私がよく使う某店はいつ行っても空いていて、打ち合わせにぴったりなのである。その分、いつか潰れてしまうのではと心配にもなるが、そこで次の企画について相談。こんな感じにしましょうという合意にいたって、あとは雑談などをあれこれする。熊本地震の影響で業界全体的に紙不足であり、大変だという話など。M茂さんが作っている本、なんと国民的大ヒット漫画と同じ用紙を使っていて、紙を確保するのが一苦労だという。世界は繋がっている。

そして水曜日。朝イチで飯田橋の某月刊誌(ダ・ヴィンチね)の編集作業に顔を出す。そのまま早めのお昼を食べ、へろへろと書店をまわってから昨日と同じルノアール。今度ははじめましての版元さんと顔合わせ&書き下ろしの打ち合わせ。担当の方がなんと国文学の専門書で有名な関西の版元出身ということが分かり、なんとなく親近感を覚えたのだった。ホラーについてあれこれと話し、企画の方向性を探る。幸い先方から「こういう感じで」という割と具体的なオーダーがあり、こちらとしても異存のない内容だったので、初回にしては迷走しないで済んだ打ち合わせだった。

2時間ほどやってベローチェにこもり原稿書き。コーヒー飲みすぎでやや気持ち悪くもなってくるが仕方なし。水曜日は一日夜まで用事があったのだ。お夕飯、これまた早めにジュンク堂横のキッチンABCで食べて、やたらに重たいリュックを池袋駅のコインロッカーに預ける。渋谷に移動。19時からマーク・ボラン追悼イベント「グラムロックイースター」を見る。渋谷ダイブという会場、初めてでちょっと迷ったが、行ってみたらなんのことはない、かつてメディアファクトリーの入っていたビルの先にあるライフの並びで、とても馴染みのあるエリアだった。ノスタルジー。

マーク・ボランというのは、まあ何度も書いているけれども私が一番好きなアーティストで、Tレックスを率いて1970年代にグラムロックブームを巻き起こしたのだが、若くして亡くなってしまったのである。でその遺志をついで日本のミュージシャンの秋間経夫さんが毎年ボランの命日にイベントをやっており、今年が40回目。ボランのギターの音を完璧に再現できる秋間さんが、ひたすらTレックスの曲を演奏しまくるという夢のような会である。お客は100人強。私と同世代かそれよりも上の人がほとんどで、まあマーク・ボランのファンならそんな感じだろうなと思う。Tレックスの曲、19曲。ぶっ続けで、と言いたいところだが出演者も観客も年配なので途中15分の休憩があった。おそらくTレックスの全アルバムから万遍なく演奏されたセットリスト。

今年はゲストも出演して(ジョニー・サンダースとデビッド・ボウイもやる)豪華でしたが、やはりメインはTレックスの曲をでかい音で聴ける、しかもプレイスタイルも完コピの秋間さんの演奏で、という点に尽きる。初期のアルバム(「電気の武者」あたり)はCDで聴くよりライブで聴いた方がはるかにかっこよくて、世界に数台しか残されていなかったというヴァンプパワーのギターアンプの音色にうっとりするのでありました。いや、ヴァンプパワーの音って他では聴いたことがないから、比べようもないんだけど。おそらくボランのギターもこんな音が鳴っていたはず。

というわけで非常に楽しかった。Tレックスの魅力はどこにあるかといえば、もうそれは「童心」「子供っぽさ」にあるだろう。ロックミュージシャンというのは基本的にはまあ反抗期っぽいというか、10代後半的な尖った感じ、あるいは20代前半の若々しい感じが音楽の根底にあるわけだけど、マーク・ボランはまだ思春期を迎える前の、つるつるした精神性のまま歳を重ねた人のようで、5歳くらいで時が止まっているのではないかと思われる。その多幸感が、音楽にも歌詞にも表れていて、聴いているととってもわくわくしてくるのだ。私の中では江戸川乱歩や杉浦茂、安西水丸と並んで、子供っぽさの象徴のようなクリエイターなのである。

大雨だったけどそんなわけでとても楽しかった。で帰り道、並木橋の坂をあがってNBF渋谷イースト、すなわち昔メディアファクトリーの入っていたビルを見る。なつかしいなあ。このビルに通っていた頃はまだ多少若く、明日をも知れぬ身の上でありました。まあそれは変わらないのだけど、東京の右も左も分からない状態であった。メディアファクトリーのお向かいにあった喫茶店でインタビューをして、その時のコーヒーの値段を見て東京の物価に仰天したのだが、あとでもう一度行ったらごくごく平均的な値段であって、あの時の驚きはなんだったのか、と思ったのである(多分そのくらいお金がなかった)。

久しぶりに行ってみたら近くにマンションができた以外はほぼ昔のままで、JRAもまだあるし、金王神社へと続いていく坂道の眺めもそのまま。東日本大震災発生時は帰宅難民となり、この渋谷のビルに一泊したこともあった。ということをしんみり思い出しつつ、ダ・ヴィンチ終刊とともに色々懐かしくなるおセンチ日和なのであった。

0 件のコメント:

コメントを投稿