2023年10月28日土曜日

怪老人日乗:10月28日(土)

世間はブックフェスだミステリカーニバルだハロウィンだと大騒ぎである。よきことかな。しかし私は結局お祭りが好きなわりには実際はさほど行かないというか、イベントごとは実はそんなに行かなくても平気な質というか。まあ今日はそれでなくても無理でしたが。

まずはお仕事告知。今日の朝日新聞読書面「売れてる本」コーナーに書評が掲載された。背筋さんの『近畿地方のある場所について』。ヒットの要因を書いておくれ的な企画だったので、作品の読みどころに加えて最近話題のモキュメンタリーの手法についても少し書く。新聞書評、2回もゲラのやり取りがあり結構進行がじっくりだった。もっと直前にばーっと書いて、翌日載る、みたいな世界かと思っていたのだが、それは報道の世界だよな。

ともあれ、全国紙に悪いことではなく良いことで名前が載ったのは嬉しい。肩書きが「怪奇幻想ライター」になっているのは先方のご指定で、私は書評家でいいんじゃないのかなとも思ったが(いかにも怪しいから)好書の連載とあわせて「怪奇幻想ライター」がいいということになりました。紙面で実際に見ると「なんじゃこりゃ」的な感じがあり、結果的によかったかとも思う。実家の両親も喜んでいて、珍しく親孝行ができた。

買ったばかりのバイクを思いっきりフェンスに擦ったりして(大ショック)、その修理費で私はこの先しばらく金欠が続きそうであるが(超悲劇)、朝日新聞に書評が載ったのでいいことにする。そう思うことにする(自己肯定)。

昼頃ちょっと少年野球の試合を見に行く。野球というのは声出し芸がすごい。アイドルのライブかと思うくらいすごい。しかもなんだか歌みたいのもあるのだ。火の玉なんとか……だとか。ちょっと聞くと怪談めいているが、火の玉ストレートを投げろ、という応援歌らしい。どっちのチームも声を張り上げているが、うちの子はと見ると、むっとした顔で端っこに立って腕を組んでいる。当然声出しはしていない。そりゃそうだよねえ、と父も思うのだった。あのノリにすんなり混じるのは難しい。私でもあんな顔になるだろう。切れて「うるさい!」と叫ぶかもしれない。

奥さまを最寄り駅まで送り、午後は仕事すこし。冬に出るアンソロジーのゲラ読み。あらためて通読するとヘビー級。一作一作が練乳のように濃い。さて土日のうちに解説を書いてしまわないと。夕方には子どもが帰宅。夕飯の支度もできていないので、バイクに乗ってブロンコビリーへ。男2人、肉を食べる。ほぼ野菜なし。文鳥と子ども寝かしつけて、夜はせっせと原稿書き。いやしかし、シングルマザー・ファーザーの方、ワンオペ育児をされている方は大変だろうと思う。私は2日だけだから夕飯や掃除も手抜きができるが、毎日やっている方はそうもいかない。仕事に集中できる環境のありがたさよ、と思った次第。

本あれこれ届く。書泉の通販で予約していた飛鳥部勝則『堕天使拷問刑』、手代木正太郎『涜神館殺人事件』(山田風太郎風らしいと聞いて俄然気になった)などなど。『グラン=ギニョル傑作選』が増刷されたとの情報をネットで目にし、買いそびれていたから注文しよ、と思って検索したら日本の古本屋がヒットして、状態よさげで安いのがあったので購入。わざとじゃないのよ、済みません。12月の仕事で使うものもどっかと段ボールで届く。

そういや今年は文学賞の授賞式・パーティもあちこちで開かれているようだ。ホラー大賞の授賞式もあるという。3年ぶりだなあ。またあの孤独を感じにいくか。東京に出てきたばかりの頃は、たまに招かれて文学賞のパーティなど行っても知り合いがほぼゼロで、達磨大師のように壁を見つめて、そのまま建物の柱になりかけていたが、あれから10数年、もう昔のおれじゃないぜ。ぺらぺらと虚言を弄し、壁を見つめて、一人で話し続けるよ。アイムスキャットマン。



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