2023年6月13日火曜日

怪老人日乗:6月13日(火)

昨日は一日雨でござんした。週明けまでの〆切4ツ、結局のところ2ツまでしか終わらず。ひとつは月曜の明け方泣きながらやる。でも終わらないのね。そういうものなのね……。

しかし昨日は朝から外出の予定があったのだ。これは前からの約束なので違えられぬ。奥さまと電車乗り継ぎ永田町。でかい裁判所に気圧されながら、国立劇場に行く。伝統芸能情報館にて展示「怪談物のつくりかた」を見てきた。歌舞伎などの伝統芸能における怪談物、つまり幽霊・妖怪・その他の芸と仕掛けを紹介するもので、これがとっても面白かった。

おばけといえば、まあ所詮はおばけだよね、という感じが一般にはある。ホラーにしてもそうで、やっぱりどこか日陰のものというイメージがつきまとうけれども、江戸時代(特に文化文政期あたり)の人たちはめちゃくちゃ本気で恐怖表現に向き合っているのだ。どうすれば幽霊らしく見えるか、どうすればショックとサプライズのある演出ができるか。その先人たちの創意工夫にはしみじみ嬉しくなってしまうし、現代のホラーが近世以来の伝統、いやもっと前から続く日本のおばけ文化の延長にあることがはっきり分かって、目からうろこの落ちる思いだった。たとえば清水崇監督の『呪怨』のあの手この手の恐怖表現は『東海道四谷怪談』にそっくりなのだ。







2枚目の写真は怪談噺の四谷怪談や累ヶ淵などに使われた面だそうで、これが暗闇で出てきたら怖いだろう。3枚目の白骨はちょっと阿呆みたいで、とてもかわいい。

その後神保町に移動して散歩。本屋を見たり、カレーを食べたり、お茶をしたりして過ごす。夫婦で神保町に来るというのはなかったことだが、今の家に引っ越してからはアクセスがよくなって、ちょいちょい一緒に出てくるようになった。お昼ご飯はボンディ。と思ったけど混んでいたからボンディのカレーを出している、同じビル1階の別のお店へ。東京にきて15年くらい経つが、ボンディに来るのは実は初めてで、なんだか感慨深かった。

本屋を何件か巡って『のらくろ』を探し、移転したミロンガでコーヒー。お店が新しくなっても古い雰囲気が残っていて、すごくいいリノベーションだと思った。でかい音で流れるアナログレコードのタンゴが落ち着く。お気に入りの場所ができました。

散会して私は飯田橋。コーヒー屋にこもって急ぎの原稿書き夕方まで。目からビームが出んばかりの勢いで必死にやって、なんとか18時すぎに完成。メール送信してどっと虚脱、する間もなくそのまま出版社Kに出向き月刊誌の作業。月に1度のこととはいえ、まあなかなかに面倒なので、終わったら22時半。帰宅したら深夜0時近い。これまではついオヤツの類を食べていたけど、あまり砂糖を取り過ぎると脳の劣化が早くなる、という話を聞いてバナナでがまんした。猿の血が騒ぐ。わいはサルや。

真夜中に一人、焼き魚などをあたためて食べて、お風呂に入って寝る。まだ1つ取りこぼしているので今日やらないと、と思ったところでやっと今日の話になるわけですが(自分でも忘れてたよ)、ええとですね、13日の火曜日は終日家で原稿書きの予定。

こっちでもお仕事告知をしておくと福澤徹三さんの『怪を訊く日々 怪談随筆集』(ちくま文庫)の解説を執筆した。2002年に新刊で買って、大いに感銘を受けた名作。解説を書かせてもらえて光栄だった。これと同時に出た加門七海さんの『怪談徒然草』で本格的に怪談好きになったんじゃないかなあ。この時代のメディアファクトリーはかっこ良かったのよ。ぜひお読みください。福澤徹三さんの渋い筆致×体験者の人生×怪異で、素晴らしい一冊になっています。






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