2022年10月29日土曜日

怪老人日乗:10月29日(土)

3年ぶりに開催された神田古本まつりに行くのをぐっと我慢して、ひたすら仕事をせねばならぬ。楳図かずおさんが東京オリンピックの頃、めちゃくちゃに多忙で「自分がオリンピックをやっていたようなものだった」と回想していて、その表現がなんか好きなのである。

世間に歩調を合わせて騒ぐのも楽しいけれども、自分一人で盛り上がっているのもまた美しい。と別に自分と楳図先生を重ねるわけではないし、明日あたり飯田橋に行くついでにひょろっと早足で古本まつりを覗きそうな気もするが……まあそんなわけで、今日は早めに日記をつけるのだ。




そんなわけで更新前にお知らせするが、本日のホラーワールド渉猟(https://book.asahi.com/series/11014826)の時評にてウォルター・デ・ラ・メアの短編集『アーモンドの木』を取り上げた。今月のテーマ、かなり迷った末「子どもとホラー」ということにしたのは、デ・ラ・メアのこの本を紹介したかったから。自分はファンタジーよりホラーの方がやっぱり好きで、怪奇趣味が強ければ強いほどぐっとくるタイプのはずなのだけど、そんな自分でもデ・ラ・メアだけは妙に好きなんですね。

デ・ラ・メアというのは不思議な作家で、「シートンの伯母さん」のように怪奇寄りのものもあれば、「アーモンドの木」のように限りなく普通小説に近いものもあって、この短編集にも両方入っているけど、どっちも同じくらい面白い。いわゆる「朦朧法」で何が起こっているのか分からないような書き方をすることがあるが、それがエイクマンのように、その向こうに得体の知れない不穏なものがある……という感じでもなくて、マッケンみたいに宗教的法悦が隠れている……というのでもなくて、でも現実からどこか一歩外にいる感じがする。


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