『ユリイカ』総特集=須永朝彦が発売されました。『就眠儀式』『血のアラベスク』『日本幻想文学史』などの著作で知られ、今年5月に世を去った須永朝彦氏の追悼号です。
小文のタイトルは「美的至福の文学史」。
須永作品の愛読者ならば、須永さんのエッセイにしばしば「美的至福の有無」という言葉が出てくることをご存じでしょう。古代から近現代にいたる我が国初めての幻想文学通史『日本幻想文学史』を執筆するにあたり、須永さんが拠り所としたのがこの「美的至福」というポイントで、それはより詳細に日本幻想文学を取り上げた『日本幻想文学全景』にも引き継がれています。
エッセイではこの二著から受けた影響について、学生時代の須永体験を交えつつ綴っています。アンソロジスト的な気質をお持ちだった須永さんにとって、日本幻想文学史そのものがひとつの大きな作品だったのではないか、ということも書きました。
須永さんを戦後文学史上の「オーパーツ」にも喩えましたが、今にして思うとやや伝わりにくい喩えだったかしらん。いや、オーパーツは誰でも知ってるよね?水晶ドクロや恐竜土偶は誰でも知ってるもんね?これまで書くことがなかった、私の筆名の由来についても触れています。機会がありましたらご一読ください。いや機会がなくてもぜひご一読ください。
今回の『ユリイカ』では学生時代の恩師・田中励儀先生が須永文学と泉鏡花の関わりについて詳細に論じておられます。今回のエッセイにも少し書きましたがわたしは落第学生でして、当時田中先生もご苦労をおかけしたので、こうして同じ雑誌でお仕事できたことを大変嬉しく思っています。
そのほか、高橋睦郎さんのインタビュー、東雅夫さんと礒崎純一さんの対談、菊地秀行さんや山尾悠子さんのエッセイなど読み応えあり。須永朝彦さんの文業を一望するには最適の一冊といえます。そういえば私は『ユリイカ』は今回が初登板だったのでした。
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