2017年1月28日土曜日
第10回『幽』文学賞贈賞式
怪談専門誌『幽』主催の文学賞、第10回『幽』文学賞ならびに第7回『幽』怪談実話コンテストの贈賞式に参加してきました。
両文学賞は残念ながら今回をもって一旦のピリオド。
贈賞式の会場には賞の終了を惜しんで、第1回大賞受賞者の黒史郎さんをはじめ、日本各地から歴代受賞者が集まりました。
あれはもう歴代ヒーロー戦隊大集合とか、ギャバン・シャリバン・シャイダーここに集結とかそういう世界で、右と見ても左を見ても怪談関係者ばかり。
怪談小説家、怪談実話作家、怪談漫画家、怪談師、怪談造形作家、怪談研究家、怪談写真家、怪談評論家、怪談エディター、怪談ライター、等々。もちろんそれ以外の方々もいらしていましたが、概ねは額のあたりに「怪談」の文字が入る職業の方ばかりで。
特異だなあ、居心地がいいなあ、と感慨に打たれました。
わたしが『幽』文学賞の贈賞式初めて参加したのは、第3回か4回だったでしょうか。
当時はまだ上京したばかりで、出版業界にほとんど知り合いもおらず、選考委員のお歴々のオーラに圧倒されながら、あたかも達磨大師のように壁を向き、豪華なホテルの立派なご飯を黙々と口に運んでいたことを思い出します。
あれから幾星霜。
いつしか年に1度の贈賞式は、懐かしい人たちと再会できる同窓会のような場になっておりました。
人見知りの激しいわたしがなぜ、毎年贈賞式に出続けられたのかといえば、『幽』と『ダ・ヴィンチ』にイベントレポートを書かせてもらっていたからなんですね。
あのときレポート記事を依頼されていなかったら、気後れしてしまって毎年招待状の「ご欠席」にマルをつけていたかも知れません。そうなると怪談業界の愉快な面々とも、一生出会うこともなかったわけですね。
仕事という形で授賞式に関係させてくれた当時の『幽』『ダ・ヴィンチ』の担当者には、あらためて感謝、感謝なのです。
今夜、その担当さんにも会いましたが、「朝宮さんは初対面の時、黒いダブダブのタンクトップを着てましたよねえ~」とおなじみのネタを大勢の前で披露されて、思わず「WHAT!?」とへんな声が出ました。
何度も否定しているんですが、わたしは黒いタンクトップで人前に出たことはありません。いや、普通ないだろうよ。いわんやダブダブをや。
「すごい人が来ちゃったな~とあの時は思いましたよ」
と彼は言うのですが、一体誰と勘違いしておるのか。山下清?デニス・ロッドマン? これは『幽』の歴史が生んだ私的ミステリーのひとつなのです。いい加減あの誤った記憶を抹消してほしい……。
とまれ。
『幽』文学賞が10年の間にエンターテインメント文壇に残した功績というのは決して小さくなく、詳しくはわたしが30年後くらいに執筆するであろう『怪奇文壇盛衰史』を読んでいただきたいのですが、このささやかなながら素敵な文学賞がなくなってしまうことを、心から惜しむものです。
個人的にもホームグラウンドのような(といっても受賞したわけではないですが)文学賞がなくなってしまって、一抹の淋しさを覚えたり。
最後の『幽』文学賞大賞を受賞した篠たまきさんの「やみ窓」は、静かな筆致のなかに異界への郷愁と恐怖をたたえた名品です。まだお読みでない方は、受賞作を含む連作短集『やみ窓』(KADOKAWA)が昨年末に出ていますのでぜひ。
過去の『幽』文学賞の受賞作も傑作ぞろいなので、機会を見付けて総ざらえレビューをしてみたいなと思っています。
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