2016年6月17日金曜日
『金閣寺の首』刊行記念イベント 於書泉ブックタワー
ううむ、すっかり間が空いてしまった。
この間なにをしていたかというと、寝たり起きたり座禅をしたり、でもまあ、おおむね怠惰に過ごしておりました。噫。
扨。
前回からの『金閣寺の首』つながりで、まずはこの記事を書くのがよろしかろう。
6月12日(日)、東京秋葉原の書泉ブックタワーにて朝松健『金閣寺の首』刊行記念イベントを観覧してきた。
言うまでもないことだが、ホラー者にとって朝松健先生といえば、宇宙飛行士志望者にとっての毛利衛さんみたいなポジションにいる方だから、間近に見られるとあっては緊張もするし、胸も躍るわけである。
『金閣寺の首』は光文社文庫時代の「異形コレクション」に掲載された室町ホラーをまとめたものだ。
というわけで、イベントは朝松氏と「異形」編纂者の井上雅彦氏のトーク、司会は『金閣寺の首』を編んだ日下三蔵氏であった。
トーク前半はお二人のファーストコンタクト、「異形コレクション」誕生前夜のことなど。
とくに興味深かったのは、80年代のホラーをめぐる状況だ。 朝日ソノラマの小説誌「獅子王」では定期的にホラー特集を組んでおり、ホラーマンガ誌「ハロウィン」もホラー小説を掲載。ほぼ同時期にクライヴ・バーカー『血の本』が刊行され、前後してビデオブームも訪れる。
80年代ホラーブームの熱狂は、当時小学生だった私にもおぼろげに記憶されているものの、やはり実感として分からないことも多いので、渦中にあったお二人の発言は大変勉強になった。
「獅子王」1987年9月号は古本で探してみよう。
後半は短編集『金閣寺の首』の内容についてあれこれ。
山田風太郎以来、空白になってた室町時代をいかにホラーの舞台に選んだか、という話題など。
編者の日下三蔵氏によれば、同書のコンセプトは現代版「異色作家短編集」なのだという。
すでに河出書房新社より刊行されている高野史緒『ヴェネツィアの恋人』、皆川博子『影を買う店』 、飯野文彦『ゾンビ・アパート』も同様のコンセプトで編まれたものだとか。
なるほど、以前から河出の怪奇幻想路線はどこから来たものか大いに謎だったのだが、日下三蔵氏の企画と知って、腑に落ちた。
トークの終了間際、井上雅彦氏が「そろそろまた異形をやりたくなっているんだよね」とつぶやいたのを、わたしは聞き逃さなかったぞ。シリーズ誕生からそろそろ20年。新しい時代の「異形」 を読んでみたいと思っているホラーファンは私だけはあるまい。「異形」という特別な場があったからこそ、『金閣寺の首』という素晴らしいホラー短編集も生まれたのだし。
それにしても、井上先生は初めてお会いした時からまったく見た目が変わっていない。
こちらは老ける一方なのに……あれはどういうメカニズムなのだろうね。
トーク後はお三方にサインまでいただき、あの日、私は珍しくニッコリほほ笑んだということである。
帰り道には神保町に立ち寄って、古本屋を覗くもほしいホラーなし。
「たい焼き神田達磨」に寄って帰る。
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