2016年は日本テレビ『笑点』50周年である。
そして、2016年はモスマンが出現して50周年でもある。
『笑点』とモスマン。
わたしはどちらも大好きだが、2つがまさか同い年とは今日の今日まで気がつかなかった。
山田君、モスマンに座布団1枚!
というわけで。
今日は突然だがモスマンについて書くことにするのだ。
モスマン(mothman)。
未確認生物(UMA)が好きな方ならご存じであろう。1966年から67年にかけて、アメリカはウェストヴァージニア州ポイント・プレザントに出現した、蛾と人間をミックスしたような未知の怪物である。
モスマン事件を現地取材し、名著『モスマンの黙示』(邦訳は国書刊行会)で克明にレポートしたジョン・A・キールによれば、
「灰色をしていて、体に体毛は生えていないらしく、人間と同じかそれ以上の大きさで翼を広げると三メートルくらい。ヘリコプターのように垂直上昇をし、飛んでいる時には羽撃かないという点が一致している」そんな生物だという。
下に掲載するのは、目撃者の一人ラルフ・トーマス夫人の証言をもとにモスマンをイラスト化したものだ。真っ赤に光る2つの目に特徴がある。当時このような怪物を、ポイント・プレザントの住人たちは次々と目撃することになった。
しかもだ。
モスマンが出現するのと相前後して、ポイント・プレザント一帯ではUFOの目撃情報が急増。
車を運転中、モスマンに追いかけられたという衝撃体験を持つ女性の家では、なぜかポルターガイスト現象が起こるようになり、黒い車に乗った黒ずくめの男たち(いわゆるMIB)が町をうろつきはじめる。
調査にあたったキールも電話を盗聴されるなど、一連の不条理な事件の当事者となってしまった。
まったくもって、わけが分からない。
一見、肉体をもったモンスターのようであるが、そのくせUFOとも関係がありそうだし、心霊現象的なことを引き起こしたり、黒服のエージェントとつるんでいたりして、未確認動物なんだか霊体なんだか知的生物なんだか、よく分からないのである。キールがしばしば言うように、まるで人類をからかい、嘲笑するために現れたかのようだ。
その昔、怪談専門誌『幽』で、『モスマンの黙示』を現代の不条理怪談に通じる味わい、としてレビューしたことがあったけれど、その思いはいまも変わらない。あらゆる解釈を退けて、不条理とカオスの渦中で赤い眼を光らせる謎の怪物モスマン。
ああ、なんてかっこいいんだ。
現在、アメリカの事件発生現場付近には、モスマンの像が建っているという。
写真を見ると、あれっ、なんかイメージと違うけど……50周年記念イベントとかはあるのかしら?
まあ、死ぬまでに一度訪れてみたい「聖地」ではある。
(画像はtripadvisorより)
個人的に気になっているのは、日本でのモスマン受容について。
モスマン本の決定版といえば、先述したキールの『モスマンの黙示』だが、これの邦訳版刊行は1984年(原著は75年刊)。
じゃあ、それ以前日本でモスマンは知られてなかったのかといえば、どうもそうではなさそうだ。
なぜなら、わたしの手もとにある佐藤有文の児童向けオカルト本『四次元ミステリー』(講談社)に、モスマンがばっちり紹介されているからである。
(かなりコウモリ寄りの珍しいモスマン)
『四次元ミステリー』の刊行は75年。
実はモスマンの話題を含んだキールの超常現象本『四次元から来た怪獣』(大陸書房)が、73年に邦訳されているから(原著は70年刊)、1970年代半ばの時点ですでにわが国でもモスマンは知る人ぞ知る未確認生物だったのではないか。
まあ、その頃はまだ生まれていないのでこれは憶測でしかない。当時の事情を知る人がいたら、ぜひご教示願いたいと思う。
★
そうそう。
UMAといえば、最近ダ・ヴィンチニュースにて宮本幸枝『学研ミステリー百科⑥ モンスター大百科』(学研プラス)のレビューを書かせてもらった。
http://ddnavi.com/news/289693/
著者の宮本氏は妖怪業界で活動されているライターさんで、怪談業界に棲息しているわたしとは共通の知人も多い。チュパカブラ、モンゴリアンデスワームから、日本の妖怪や古代魚まで広く紹介している楽しい本であった。
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