2016年1月26日火曜日

THE PRETTIEST STAR







ううーっ。デヴィッド・ボウイが死んでしまった……。


下のゾイドの記事を書いた直後、D・ボウイ死去という信じられない報道に接し、それっきり数日何もする気が起こらず。仕事も放棄して、ただぼんやり過ごしておりました。


SUEDEも新譜を発表するし、ザ・イエロー・モンキーも活動再開するしで、今年はグラムロック再興の年になると思っていたのに……。


わたしは普段生きていて喜怒哀楽を感じることがあまりなくて、自分でも非人情なことだなあ思うのですが、この訃報からの数日間は、ちょっとしたことで涙ぐんでしまったり、哀しくて歩けなくなったり、心臓がドキドキして痛くなったりというような事態にたびたび見舞われ、「ああ、自分はデヴィッド・ボウイが本当に好きだったのだなあ」、とあらためて実感しました。


ボウイの音楽史における業績、20世紀ポップカルチャーへの大きな貢献については、訃報後すでにいろんなところで述べられているので、他を参照していただくとして。


わたしにとってボウイが特別なのは、素のままの自分がよしとされがちな世の中にあって、ボウイだけは常に自分ではない誰かを演じていたからです。
異星人のロックスター、ジギー・スターダストにはじまり、アラジン・セイン、シン・ホワイト・デュークといくつもの他人を演じてみせたボウイのきらびやかな仮面劇は、「ありのままの自分って最高!」な風潮になじむことができない人間にとって、どれだけ救いになったことか。
人はもっと不自然でいいし、ぎこちなくていいし、違和感満載でも構わない。生涯そういうスタンスを貫いたボウイは、マーク・ボランとはまた違った意味で、エイリアンだったのだと思います。


グラムロック黄金時代を描いたトッド・ヘインズの映画『ベルベット・ゴールドマイン』で、クリスチャン・ベイル演じる青年が、ブラウン管に映し出されたロックスター(明らかにボウイをモデルにしています)を見て、
「That's me!That's me!」(あれはぼくだ!あれはぼくだ!)
と半べそで叫ぶシーンがあります。


一見なんてことないワンシーンですが、わたしには『ベルベット・ゴールドマイン』という映画のすべてが、ここに凝縮されているような気がします。
親が眉をひそめるような、奇怪でけばけばしい両性具有的なミュージシャンが、平凡な青年の人生を大きく変えてしまう。
おそらくこのシーンを撮ったトッド・ヘインズ監督も、ボウイに出会って人生の荷物がすこし軽くなった一人なのでしょう。ちなみに映画のタイトル『ベルベット・ゴールドマイン』は、ボウイの曲名に由来します。


ブライアン・イーノによれば、ボウイは『アウトサイド』の続編制作を考えていたのだとか。
『アウトサイド』といえば、架空の猟奇事件をモチーフにした、いかにもボウイらしい「等身大」や「ありのまま」とは対極にあるような、虚構性あふれる90年代の名盤。
その21世紀版とは果たしてどんな作品になったのか。もはや想像するよりほかないのが、残念でなりません。

 
さらば、地球に落ちてきた男!
The Prettiest Star,R.I.P.















古いパソコンを整理していたら、わがグラム期の写真が出て来ました(化粧が濃い)。
遠い極東の地からあらためて、ボウイ様追悼……!ううっ。





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