2015年11月21日土曜日
【怪老人日乗】 11月某日
最近やったインタビュー仕事が、ウェブ上でも読めるようになっているのでご紹介しておこう。
まずは、第22回日本ホラー小説大賞受賞作『ぼぎわんが、来る』についての澤村伊智氏インタビュー。
発売中の『ダ・ヴィンチ』12月号に掲載されたものだが、 こちらでも読むことができる。
http://ddnavi.com/feature/266831/
なお。
紙幅の都合で載せられなかったこぼれ話をしておくと、澤村さんが特に愛読する現役作家は三津田信三だという。
なるほど、怪談実話の生々しさと、ホラーのエンタメ性の融合具合は、三津田ホラーのセオリーを継承しているのかもしれない。というわけで、三津田ファンも『ぼぎわん』は必読なのだぜ。
それと。
『本の旅人』11月号に載った、ホラー大賞優秀賞受賞作『二階の王』 の名梁和泉氏インタビューは、こちらで読むことができる。
http://store.kadokawa.co.jp/shop/pages/interview_005.aspx
こちらもこぼれ話を披露しておくと、スティーヴン・キングの影響が大だという名梁さんに(この話は記事にも書いてある)、「クーンツやマキャモンの影響は?」と尋ねてみたところ、それらの作家も読んではいるけれど、やはりキングが特別ですというお答えであった。
キングの影響を受けて書かれた、日本の90年代女流ホラーもたくさんお読みだそう。
今年のホラー大賞受賞者お2人は(読者賞の織守きょうや氏はお会いしたことないので分からず)、両者ともに大のホラーマニアである、という嬉しい共通点がある。
ホラーの面白さを知り尽くしたお2人が、ホラー専門の文学賞を獲られたわけで、これはなかなか健全なことだなあと思うのでした。
【今週の新着本】
さて。この数日に買ったり送っていただいたりした本。
●京極夏彦『眩談』(角川文庫)
京極夏彦氏の「 」談シリーズ、3冊目の『眩談』が文庫になりました。
単行本が出た時、たしか取材したよなあ、と思って検索したらやっぱりしてましたね。
2012年1月号の『ダ・ヴィンチ』だそうです。
とにかく読むと、現実がぐらぁっと歪むような粒よりの作品揃い。
特にラストの2編「けしに坂」「むかし塚」は、怖くて、淋しくて、最高。ヘンな小説の最前線。
諸星大二郎氏の解説もケッサクなり。
●ネズヴァル&シュティルスキー『性の夜想曲』(風濤社)
発売からやや遅れて購入。
ネズヴァルはエロティックな幻想物語『少女ヴァレリエと不思議な一週間』で知られるチェコのシュルレアリスト。その映画化『闇のバイブル』は、乙女系ホラー映画の傑作として、ゴシック&ロリータの世界では割によく知られています。
わたしは数年前、広尾のチェコセンターで初めて鑑賞しまして、東欧チックな土俗の世界観&ゴスなムードに、少女期特有のセクシャルな幻想を絡めたこの映画をたちまち好きになってしまったのでした。
その原作者ネズヴァルが、自らの少年時代を回想して書いたエロティックな短篇が「性の夜想曲」です。
すごいですよ、これ。鬼火のごとき性の衝動に突き動かされる少年の内的世界が、 切なく、ドロドロと、暗く、美しく、シュルレアリスティックなイメージとともに描かれています。
「ヤル」という言葉はダイヤモンドのようなものであり、硬く、光を通す一級品だ。まるで優美なアレクサンドランが帯びる宝石のように思え、禁止されているがゆえに魔力がある。……(「性の夜想曲」)
「性の夜想曲」にはネズヴァルと親交の篤かったシュルレアリスト、シュティルスキーのエロティックなコラージュが付されており、こちらも必見です。
同書は他に、シュティエルスキーの性的幻想短篇「エミリエが夢の中でわたしの許にやってくる」などを収録。
ロートレアモン伯の『マルドロールの歌』や、寺山修司の『地獄篇』のように、折に触れて読みかえす一冊になりそうです。
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