2014年8月21日木曜日
怪老人日乗・その2 「謎の尾崎的衝動」
今日も今日とて、何ひとつブログで発信することが思いつかない怪老人である。まあ、それが当然のような気もするし、常識的な感覚のような気もする。
ともあれ。
どんな小詰まらないことでも、むりやりに書いてこうというのがこの「怪老人日乗」シリーズなのである。インターネット上の発信というのは、畢竟「わたしってすごいでしょ」モードになってしまうことが多くて(もちろん有意義なサイトも多々ありますよ)、それってなんだかいやだなあ、と長年思ってきたのでありますが、自分もブログをやっているからにはもう開き直るしかないので、本当の身辺雑記を書きます。書くぞ。
今日は健康診断だったのである。私のような浮草稼業の場合、会社が健康診断の機会を設けてくれるということはないので、毎年自治体の検診に申し込まねばならない。で。血圧だの、心電図だの、 レントゲン撮影だのをしていただいたわけだが、それぞれの検査の間には数分ずつ、待ち時間がある。ぼーっとしているのも苦手なので、待ち時間がくるたびに、持参した本を読み進めていた。
小池壮彦氏の新刊『怪奇事件の謎』(学研)である。
どうやら検査を受けに来ている人たちは、みんなすでに読み終えているらしく、誰一人「読ませて、見せて、触らせて」という展開にはならなかったのである。それを期待してもっていったのに、ならなかったのである。
小池氏の本は、相変わらず足で稼いだ貴重な情報が多く、頭が下がる思いである。
さて。
国分寺市に越してきたことは、先の日乗ですでに触れた。
マンションの四辺は畑ばかりである。ちょっと歩くと「100円をお入れください」と味のある字で書かれた野菜の無人販売所がいくつもある。スーパーマーケットもあるにはあるが、わが家の野菜購入先は主にこの手の販売所だ。
ちょっと歩くとこんもりした林や小山にぶつかる。そこにはカブトムシだのクワガタだのが棲息しているらしいし、夜中まで聞こえる蝉の声も、西荻に住んでいた頃よりもずっと大きい。2箇月ほど前には、公園でホタルを観察する会というのがあって、生まれて初めて生きたホタルを見た。
いま住んでるのは、そんな土地なのである。
で。
こういう土地に住んでいると、なんでだろうか、夜中にふらふらとバイクで出かけたくなるのだ。
別にこれといった目的はない。ただ、車のほとんど通らない道を、あてどもなく彷徨うのが面白いのである。なんなんだろう、これは。西荻に住んでいた頃には、なかった心の動きだ。カリガリ博士にでも操られているのかしらん。それとも、遅れてやってきた反抗期?
思いながら、ふと夜の市立図書館の門柱に目にやると、「暴走行為はやめましょう!!」というポスターが貼ってある。都心ではまずお目にかかることのない、80’Sスタイルの暴走族が、群れをなして公道を占拠しているポスターである。そうかあ、暴走行為って、風土病みたいなものなのだなあ、わたしはその風土病に罹っていたのだなあ、と悟った怪老人なのであった。
して。
夜道を走っていると、ふとした瞬間に怖さを感じることがある。
それは外灯のほとんどない小径だったり、お寺の墓地からのぞく卒塔婆だったり、神社の裏手の森だったり、無人の踏切だったりするのだが、垂れ込めた深い闇が妙に怖いのである。稲川師風にいうなら妙~に怖いのである。
西荻に住んでいた頃は、家のまわりが明るかったために、ほとんどこんな気持ちになることがなかった。夜中にふらっとファミレスやコンビニに出ても、怪談的な怖さに襲われることなんてまず皆無。怪談がらみの仕事ばかりしていたくせに、家のまわりで怖い目に遭ったという覚えがない。
しかし、今住んでいるあたりは違う。
夜道は怖い。お寺も怖いし、森も怖い。鉄塔も、踏切も、カーブミラーも怖い。
怖い、というと誇張的な表現になるな。なんとなく、ゾッとする。奥が見えないから、不安になる。まあ、そのくらいの感覚なのだが、それにしたってずいぶん新鮮で、今後怪談を読んだり、書いたりするうえで、プラスになるのではないかと期待している。だとしたら、この引越しも大成功ということになろう。
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