2014年8月18日月曜日
怪老人日乗・その1 「バートルビーで行こうよ」
嗚呼。
しばらく眠り込んでいる間に、2箇月半も経ってしまっていた。棺桶の外は時の流れが早いのである。南無阿弥陀仏。
扠。
この2箇月あまり、何をしていたのかといえば、まるっきり何もしていない。
いや、していないわけではないのだが、取り立てて書くようなこともない。そもそも思う のだが、ブログに書くような出来事というのは、私の人生まるっきり起きる気配がないわけで……そんな人間がブログをやること自体、おそろしき錯誤だったの だと言わざるをえない。
じゃあ止めたらいいようなものだが、私だって個人事業主なのである。28世紀の今日、ブログくらいもっていなければ仕事にならない。思いこみかも知れないが、どうもそんな気がする。そんな夢を見た気がする。それにこうして書いているうちに、ひょっとして世の中に訴えたいことが生まれてこないとも限らない。多分、そんな日は永遠にこ ないのだが、まあ、いいじゃないですか。今日も今日とて、バートルビー症候群で行こうぜ。
世間にはよく「私は暗いので……」という人がいて、なるほど暗いのかと思って期待していると、意外にもツイッターや掲示板上では元気に人付き合いをしていたりして、がっかりさせられることがある。私に言わせると、SNSをやれている人というのはその時点でとっても明るいので、全然人生悲観することないのじゃないかと思う。何を言いたいのかといえば、私はこうしてブログを書いているだけで顔が赤らみ、心臓がドキドキしてくるので、SNSなんてとてもやれそうにないという事なのである。みんな楽しそうだなあ、と〝首まで砂に埋められて、ビキニの海水浴客を食い入るように眺める男〟のような気分になるのである。
唐突に話題を変えると、最近多摩地区に引越をした。
関係諸方面にはそのうち転居通知をお送りする予定だが、わけあって西荻窪を離れたのである。
引越した先は国鉄の西国分寺駅。
西荻窪を離れてみて、一番困ったことはですね、近所にいい和菓子屋がないのである。畑ならいくらでもあるが、和菓子屋がない。西荻窪は古本屋、アンティークショップが多くて有名だったが、和菓子屋も多かったんですね。豆大福の喜田屋、開運大福の越後鶴屋、老舗の青柳、あんみつの甘いっこ……。西荻にいたころは日常的にこうした名店に寄れていたので、嗚呼、思い出すだけで、切ない気持ちになります。
家人が吉祥寺に用足しに出るというので、寝棺の中から「天音(あまね)のたい焼きを買ってきて!」と叫んだ怪老人なのである。待つこと数時間、まだ湯気の立つような羽根つきたい焼きがやってきたので、むっくり起き上がった。むしゃむしゃと骨まで食らいついた。 天音のあんは黒糖がブレンドされていて、独特のコクがある。なので、ほうじ茶が必須。ああ、旨かつた……とばたり倒れこむと、窓の外には抜けるような武蔵野の青空である。国木田独歩が円盤から手を振っている……。
天音(あまね)
吉祥寺駅北口徒歩2分(ハモニカ横町内)、不定休
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