2023年12月1日金曜日

怪老人日乗:12月1日(金)

今日からもう12月か、なんてありきたりなことは言わない。おれはこう言いたい。「もう2025年かあ」と。こう言っておくと心の準備ができて、大抵のことには動じなくなる。ライフハック。

ところで(また脱線するけど)私が嫌いな言葉のひとつに「ライフハック」があって、そういうこという人ばっかじゃないの、と思う。他人を出し抜いて自分だけうまく生きようというスタンスが肩口からチラ見えしており、そういうことだからおまえは駄目なんだよ、逆上がりの授業でパンツがずり落ちて眼鏡が外れるんだよ、とありもしない言いがかりをつけたくなるのであった。ま、むしろそういう目に遭いそうなのは断然私の方なのだが……。そもそも逆上がりすらできないのだが……。

というわけでライフハックという言葉を使いたくなったら、おばあちゃんの知恵袋と言い換えるようにいたしましょう。ぐっと印象が柔らかくなり、シリコンバレーがシリコン人間くらいの感じになります。ところで私は骨のない人間が出てくるホラーが好きで、ジェラルド・カーシュ「骨のない人間」とか、佐藤有文「骨なし村」とかが大好物なのである。そういうのご存じの方がいたら、動画のコメント欄までおねがいします。動画じゃないけど。

さて先日、手代木正太郎『涜神館殺人事件』についてちょっと触れたが読了したのであらためて感想を書いておく。本格ミステリとして押し出されているが、オチまで読むと完全にホラー、しかも「ダンウィッチの怪」系の異次元を覗く家ホラーだった。そういうド派手な展開があるのに加えて、主人公の霊媒女性(幼い頃に妖精を見たことがある)と心霊研究家(辛い過去があって異界を信じたい)のロマンスの要素もあり、波瀾万丈の事件の中でその二人の人生が交差し、また別れていく、そういう物語の筋道は楽しい。

一見するとおどろおどろしく異端的だが、超常現象が次々起こって、その中で謎解きがあってという展開は近年のトレンド(大島清昭、新名智など)に沿ったエンタメホラー&ミステリになっている。本格ミステリとしては、それを評価できるだけの見識がないからからノーコメント。ホラーとしては「色々起きるが怖くはない」という感じですかね。そのあたりのさじ加減もエンタメ的で、これを薄味と見るか、娯楽性が高いとみるかで評価は分かれそうだ(例のディクスン・カーや横溝正史は怪奇小説か、という問題)。エロチックな展開が存分に若干あるあたり、リチャード・マシスン『地獄の家』っぽくもあります(作者は山田風太郎のファンらしい)。

さて今日は午後から取材一本。夜は紅葉でも見に行けたらいいけども、と思っている。細かな仕事が山積したので、また擬人化イラストに机の前に貼ってみた。私はマルチタスクができない人間で、一時にひとつのことしかできず、色々やることがある、と考えるだけでものすごいプレッシャーになって頭の容量を食うので、視覚化・外部化してその部分の負担を減らしているのである。

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