2023年7月10日月曜日

怪老人日乗:7月10日(月)

昨日ばったりお侍に会ったのだが、そのお侍が刀を構えながら「あつうござんす」と言っていた。どうやら江戸時代は暑いらしい。現代だって暑い。昨日は35℃くらいあったぞ。今日なんて37℃まであがるらしい。見るとお侍はたちまちミイラになって、乾いたアスファルトに張りついていた。南無阿弥陀仏。

さて土日は何をしていたかといえば、例によって例の如くで仕事をしていた。風呂では『ドリトル先生航海記』を読んでいる。『アフリカいき』も面白かったけど『航海記』も波瀾万丈で面白いね。水族館から逃げ出してきた魚と会話するあたりとか、すごくいい。このままシリーズ全巻読みたいが、書き下ろしのために国内ホラーをまとめて読み返さないとだめかもしれない。風呂にまで仕事を持ち込みたくないが、まあホラーを読むなら遊んでるようなものか。

合間に書評用の本読みも進める。田中貢太郎の『日本怪談実話』、桃源社の版を持っているのだが通してきちんと読んだことはなくて、このほど初めて最初から最後までみっちり読んでいる。田中貢太郎の文章は明るくてからっとしていて(広末涼子と同郷の土佐出身だからか?)二大巨匠として並び称される岡本綺堂などとは明らかに手触りが違う。『聊斎志異』的なあっけらかんとした感じがあって、そこが今読むとモダンだったりする。巧まざる戦慄がときおりふっと漂ってくる。

某誌のホラー特集のあれこれをチェックして戻し。今年はホラーを紹介してくれという仕事が多いなあ。紹介といえば、三省堂書店神保町本店(小川町仮店舗)さんで【奇想の本棚】というフェアが始まった。こちらのホラーコーナーの選書を私が担当しております。角川ホラー文庫のおすすめタイトルを厳選したほか(5冊ほどにはポップ用のコメントも書きました)、ウェブ連載「ホラーワールド渉猟」で最近取り上げた本、2022年のまとめ記事でとりあげた本などが棚に並んでいる模様。

夏場のホラーフェアは各書店さんで開催されるものですが、こういう形で「ホラーワールド渉猟」と怪奇幻想ライターにフィーチャーしてもらえるとは。非常にうれしく、光栄なことでありまして、小川町に移転してからの三省堂書店さんには実はまだ行ったことがないのですが、こりゃお百度を踏まなければと思っております。いや、ホントにね。書店の棚って書店員さんの職業的誇りが表れている場だと思うので、そこをお借りするのは「申し訳ない、かたじけない、ありがたや、ありがたや」という感じであります。ご担当Sさん、ありがとうございました。

そのほかいろいろ仕事の告知もあるが、23日にはツイッターのスペース機能使って、おすすめホラーをひたすら挙げ続けるというイベントがあるらしい。これは私があまりにも書き下ろしをやらないことに業を煮やした星海社の担当丸茂さんが、公開で私を糾弾し、査問するという会でもありまして(おそらくはそっちが主目的なのではないか。異端審問のとんでもない世の中だ)、へどもどする私がネットの虚空に佇んでいると思いますので、悄然とした私のコスモを感じたい方はぜひどうぞ。



(写真は三省堂書店神保町本店・小川町仮店舗さんのツイッターよりお借りしました)


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