2023年4月29日土曜日

怪老人日乗:4月29日(土)

世の中はマッハの速度で連休に突入。わたしは浅瀬でちゃぷちゃぷ、いまだお正月気分が抜けきれない。どうなる?次回、怪談爺がやってくる、ご期待ください。

というわけで本日は祝日なり。ということを知らずに朝イチで耳鼻科に並ぶ。駅前の耳鼻科はたいへんな混雑で、受付の30分前になると近所の飲食店の前まで行列ができるのだが、今日は数人しかいない。お、空いてるな、と思ったが「いや、ひょっとして休みなんじゃね?」との疑念も抱いたので、並んでいる人に「耳鼻科の列ですか?」と確認したらそうだという。じゃあというので並んでいたら、近くの美容室の店員さんが「多分今日休みよ~」と声を掛けてくれて、並んでいた数人はしょんぼりした感じで解散になった。

最前列のやろう、おまえは有罪だ!と思ったけど、今日が祝日であるということを忘れていたなら、ゴールデンウィークを忘れた悲しい大人とみなすこともできる。なんだかへんに疲れて帰宅、白い恋人食べる。

いやはや、今週後半も忙しかった。木曜日は午前2時に起きて文庫解説の仕上げ。そのまま午後までずっと書いてやっと完成。夕方から飯田橋に出て某誌の編集作業。久しぶりに町に出たらずいぶん人が多いでないの。観光か、仕事か、土一揆か。金曜日も急ぎの原稿あり、木曜の夜からほとんど徹夜。連載原稿がっちりと進める。

ところでこの連載からスマホで原稿を書くようにしている。ふと思い立ってやってみたのだが、これが非常に調子がいい。頭で考えたことをそのまま指先で出力、というのが原始的でいいし、画面が小さいのもまたいい。パソコンだとデリートもバックスペースも思いのままだが、スマホだと入力も微妙に面倒だから(これは世代の差もあろう)一度書いた文章の流れをそのまま残そうという心理も働く。

寝室のベッド、スーパーの休憩スペース、玄関先のアスファルトを転々としながら原稿仕上げて、ぎりぎりで間に合って午後。パンにコロッケ載せて食べ、大慌てで飯田橋。某月刊誌誌編集作業。終えて帰宅したら19時であった。ところで行き帰りの電車ではスマホを使っての書き下ろし原稿作業。これがスイスイと進む。いや、これからはスマホで書くようにしよう。

というわけで今日の本題、ってわけじゃないけど、これまで本ブログで時々取りあげてきた某サブカルライター氏がまた話題である。前払い金をもらっておきながら編集者の連絡をすべて無視したというんだから、まあ同情の余地なしだが、〆切を守れないことに関しては私も人のことを言えないので将来の自分を見ているようで恐ろしい。

この人の悲劇は、なまじ出版業界が儲かっていた時代を知っているせいで、インチキしても儲かるという成功体験を得てしまったことではないかと思う。親戚に芸能関係者がいたのも今にしても思えば運が悪かったかもしれない。悪い意味での業界しぐさを早くから身につけてしまったために、自己演出と勢いと口八丁である程度までは世渡りすることができたのだろうが、例の盗作騒動でメッキがだいぶ剥がれたのと、その後これという著作を書くことができなかったのが現在の凋落に繋がっているのだろう。

しかし大変なことになってもご本人はさしてダメージを受けていなさそうなのは、そもそも書くことにも自分が書いてきたものにも愛着がなかったからなのだろう。こういうドライなところ、虚無なところを見ていると、自分の深淵を覗き込んでいるような気がして、なにやらんゾッと恐ろしくなってくる。

好書好日「ホラーワールド」の時評が公開されています。橘外男、マット・ラフ、花房観音の旅本3冊を紹介。橘外男『人を呼ぶ湖』を読んでいてあらためて思ったが、この人はただものじゃないですね。パルプホラーだと思って舐めていると、ぐわーっとリアリティが盛り上がって、虚が実に転じる異様な瞬間がある。マット・ラフ『ラヴクラフト・カントリー』は白人中心で書かれてきた魔術ホラーの黒人側からの読み返し。といっても作者は黒人じゃないらしいから複雑だ。『女の旅』は大好きな旅エッセイ。花房観音さんの本はどれも物狂おしくて、切なくて、暗くていい。花房観音さんはお話しすると気さくな方だが、書くものを読んでいると本質は修羅とか鬼とか、そういうものだという感じがする。




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