2018年3月14日水曜日

怪老人日乗:3月11日(日) 『日本現代怪異事典』トークショウ

3日遅れの日記をしれっと付けよう。
さて、よく晴れた日曜日。
午前中から外出。電車を乗り継いで秋葉原まで。 書泉ブックタワーにて『日本現代怪異事典』(笠間書院)が話題の朝里樹氏と民俗学者・飯倉義之氏のトークショウ。




『日本現代怪異事典』はもともと同人誌として刊行されていたもので、増刷されるや品切れになるので、その実在が疑われていたほどの話題作であった。私も買えなかったクチなので、今回の商業版(同人版に大幅加筆)は大喜びで手に取った。そして圧倒された。こりゃすごいや。
世の中には物事を網羅しなければ気が済まない、根っからのコレクター気質の人というのがいるが、著者の朝里氏はまさにそのタイプだろう。「Rボタン」から「腕章の少年」まで、戦後日本で実話として語られた怪異を実に1000以上、五十音順でみっしり掲載する。作者のプロフィールを眺めて2度びっくり。1990年生まれというから20代、1990年代前半にはじまった学校の怪談ブーム当時はまだ赤ちゃんではないか。しかも普段は堅い仕事についておられるというのだから、いやはや世間にはスゴイ人がいるものだ。
書籍・新聞・雑誌に載ったものだけでなく、旧2ちゃんねるのオカルト板などネット発祥の怪談・都市伝説までカバーしているのが大きな特徴。ネットロアに疎い私には、このあたり大変ありがたかった。小学3年の頃に怯えた「カシマさん」の噂が、数ページにわたって詳述されているのにも感嘆。こんなに豊富なバリエーションがあるとは知らなかった。


前提が長くなったが、トークショウである。1階レジで参加券を受け取り、開始まで小一時間ほどブックタワー内を散策。すると森瀬繚『All Over クトゥルー クトゥルー神話作品大全』(三才ブックス)を見つけてしまい、迷わず購入。小説はもちろん映像・アニメ・ゲームまであらゆるクトゥルー作品を網羅した労作。わたしは根っからいい加減でずぼらな性格なので、こういう網羅型の頭脳の持ち主には(東雅夫氏などそのタイプの代表だろう)畏敬の念を抱かざるをえない。




で、13時。朝里氏、飯倉氏が登壇してトークショウがスタート。書店員さんの司会進行に沿って、怪談との出会い、もっとも思い入れのある怪異、刊行の経緯について1時間ほどトークが続く。この手の怪異・妖怪系の事典には口さけ女など有名なものを除いて、いわゆる「現代怪異」があまり載っていない。ならば自分で作るしかない、と思ったのが執筆の動機だったそうだ。社会人生活をしながらコツコツとデータベースを作成、自分で楽しむために作った同人誌が評判を呼び、少部数の増刷をくり返すうちに飯倉義之氏の目にとまり、それが商業版の刊行につながっていったという。
会場には案の定というか、おばけ関係者の姿がちらほら(笑)。サイン会まで大盛況でありました。


その後は時間をとっていただき、某社媒体のために朝里氏にインタビュー。
朝里氏、わたしと同じく北海道出身で、小樽市朝里がペンネームの由来という。朝里といえば『日本現代怪異事典』にも載っている朝里病院の怪談で有名だが、わたしは父方の祖父母宅が朝里にあったので、子どもの頃から何度となく訪ねており、朝里病院にも親戚が入院していたことがあって、なんだかとっても親近感。
朝里氏の怪異網羅ワークは今後も続けられるそうなので、次なる展開を楽しみに待ちたい。


取材後、同行した某社編集Nさんとコーヒー飲みつつ、ホラー企画について打ち合わせ。Nさんはわたし以上にあぶない小説が好きな方で、雑談をしているのか打ち合わせをしているのかよく分からない。白井智之『少女を殺す100の方法』がいかに素晴らしいかを力説しておられた。ともあれ、こちらも滞りなく終了して17時。


秋葉原というのは行くたび「なんて楽しそうな街なんだ」と思うのだが、アニメにもフィギュアにも鉄砲にもPCにも詳しくない人間には、よく考えてみると行くべき場所がなく、結局いつも大人のデパートに立ち寄って帰るのみなのであった(行かなかったけどね)。


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