2013年12月20日金曜日

これが『いる?いない?のひみつ』だ!


半年ほど前だろうか、幻想文学の傑作『さようなら、うにこおる』を刊行したばかりの小島水青氏に中央公論新社でインタビューした際、小島氏が「実はこんな本を持ってきていまして……」と色あせた一冊の児童書をカバンから取りだし、見せてくれたことがあった。

タイトルは失念したが(講談社の『図鑑 怪獣の本』?)、世界各地の怪獣・幻獣を紹介した特撮・怪奇系のハードカバーの児童書で、そこには一角獣の紹介として、タピスリー『貴婦人と一角獣』が掲載されていた。『さようなら、うにこおる』をお読みになった方なら、フランス中世美術の逸品といわれる『貴婦人と一角獣』が、作品で重要な役割を果たしていることをご存じだろう。
小島氏の一角獣への興味は、子供時代、この本を手にとったところから始まっていたのである。

たしかこの話は『ダ・ヴィンチ』 のインタビュー記事では触れられなかったのだが、小島氏の幻獣愛が伝わるエピソードとしてとても印象にのこっている。





さて。
怪奇・特撮系の児童書といえば、わたしにもちょっとした思い出がある。
『宇宙人・怪獣・ゆうれい・超能力者 いる?いない?のひみつ』 という、学研から出ていた「ひみつシリーズ」の一冊で、初版は昭和56年。昭和を知らない方々のために一応西暦で書いておくと、えーっと、えーっと、1981年である。

この「ひみつシリーズ」は、『宇宙のひみつ』 とか『昆虫のひみつ』とか、科学・歴史・文化・その他諸学もろもろを、漫画でわかりやすく解説したシリーズものであって、 同社の「伝記シリーズ」とともにに、1980年代には大抵の書店や公立図書館の棚にずらっと並んでいた。

で、宇宙にも昆虫にもほとんど興味のなかったわたしは、このシリーズから『忍術・手品のひみつ』『古代遺跡のひみつ』など、いかがわしい匂いのするものを選んでは再読三読していたのであるが、なかでも特に怪しいオーラを発していたのがこの『いる?いない?のひみつ』 なのであった。

タイトルどおり、UFO、宇宙人、幽霊、未確認生物、超能力者などオカルト現象全般をエピソードとともに紹介、いるのかいないのかを考えてみよう、という主旨の児童書である。

が、この本は子供には怖すぎた。
コミカルな絵柄でスタートするのだが、 事件の再現シーンになると一転シリアスになり、恐怖の体験を生々しく伝えてくる。「ミニUFOをつかまえた中学生」「宇宙人にかたをたたかれた小学生」「ヒマラヤの雪男」……。夕暮れのなか猛スピードで飛ぶ小型の円盤の、ナスのようにどす黒い顔をした宇宙人の、狂ったように山小屋を破壊する雪男の、ああ、今思い返しても、なんと怖ろしかったことか……。
ここで受けたショック、宇宙人も雪男も幽霊もネッシーも怖いものなのだ……という暗黒のショックは、確実にいまの自分につながっているような気がいたします。


  

 



で、この本はほとんど読まずに放ってあったのです。
ほかの「ひみつシリーズ」は暗記するほど読みこんだのに、 この本だけは数えるほどしか読まなかった。それなのに、書かれている内容は脳のヒダにしっかり染みこんでしまって、忘れようとしても忘れられない。おかげでわたしは、姉と通っていた日曜学校のお祈りの時間、「ノストラダムスの予言が当たらず、1999年にみんな死なずに済みますように……」と必死に神様にお祈りするような子供になってしまったのです。

  (生涯最大のトラウマページ!)  



さて。
そんなこんなで数年が経過したある日、この『いる?いない?のひみつ』について妙な事件が起った。ほんのささやかな出来事なのだが、今思い返してみても「あれは、なんだったんだろう?」と首を捻らずにはおれない不可解現象である。

怪談実話を書いていながら、その手の現象にはまったくと言っていいほど縁のないわたしが体験した、数少ないエピソードである。先日、実家に帰って『いる?いない?のひみつ』を眺めていて、ふと思い出したので、ほかの実体験とともに『Mei 冥』 vol.3の連載「気味のわるい話」にまとめている。



興味のある方はご覧ください、って結局はこの投稿、宣伝なんじゃないの!?という疑いが浮上しますが、そうです!蓋を開けてみれば宣伝です!

読んでください!!

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