2012年7月20日金曜日

『鬼談百景』&『残穢』本日発売!


気づいている方がどれだけいるか分かりませんが、ホラーファンにはちょっと大変な日々が続いています。どんな具合に大変なのかといいますと、ホラーファンなら「ギョエーッ!」と叫ばずにおれない注目本が、このところ続々と刊行されているんですね。
以下、実例をあげてみましょうか。

●6月8日:東雅夫編『泉鏡花怪異小品集 おばけ好き』発売
●6月20日:ホラー専門誌『ナイトランド』vol.2発売
●6月25日:丸尾末広『瓶詰の地獄』発売
●6月29日:H・R・ウェイクフィールド『ゴースト・ハント』発売
●7月1日:完全版『十二国記』刊行開始
●7月2日:怪談専門誌『幽』17号発売
●7月10日:由良君美『椿説泰西浪漫派文学談議』発売

もちろん、この他にも竹書房文庫の怪談実話本、角川ホラー文庫の新刊なども出ているわけですから、まあ忙しいのなんの。


そして本日、国産ホラーの大本命が2冊同時に刊行されました!小野不由美さんの『鬼談百景』(メディアファクトリー)と『残穢』(新潮社)です。




『鬼談百景』は著者初となる百物語怪談集。
指を切り落とされた銅像にまつわる不吉な物語「未来へ」、真夜中の肝試しが異界への扉を開けてしまう「増える怪談」、飛びおり自殺した男のとてつもない最期を描いた「マリオネット」などなど、切れ味鋭い怪談短編全99話を収録。

99話収録の怪談集、といえば不朽の名作『新耳袋』を思わせるわけですが、著者の小野さん自身も『新耳』ファン(というより、怪談実話ジャンル全般のコアなファン)として知られています。日常にまぎれ込んだ違和感や不条理感を、「怪談」という器によってサッとすくいあげる手法は確かに『新耳袋』の流れを汲んでいるもの。ファンからの手紙をもとに執筆された、という経緯も怪談実話史的には気になるポイントでしょう。

その一方で、すくない枚数で異界の手触りをヒシヒシと伝える、幻想小品集としての側面にも注目したいところ。川端康成の『掌の小説』など、工芸品のような小品文学が好きな方には是非読んでほしいなあ。
学校が舞台になっているエピソードが多いせいか、昭和怪談のテイストが随所に感じられるのも嬉しいですね。中岡俊哉とか、つのだじろうとか、あの暗くて怖い放課後の雰囲気があります。


で。いま一冊の『残穢』は9年ぶりとなる書下ろし長編。発売当日なので詳しくは語りませんが、東京郊外に建つ賃貸マンションの一室で、ちょっとおかしな現象が起こっている。どうやらそのマンションでは、別の部屋でも怪現象が起こっているらしい……というのが発端部分。

そこからマンション周辺にうごめく恐怖と怪異がじわじわと明かされ、読者を圧倒します。うーむ。ひしひし怖い。惻惻と怖い。この作品についてはなるべく先入観なしで読んでいただいた方が面白いと思うので、内容紹介はこのへんで。あ、小野作品の中では『ゴーストハント2 人形の檻』『ゴーストハント6 海からくるもの』あたりの怖さとちょっと共通しているかも知れません。分かりにくい?読んでみれば分かります。

しかもしかも。
この2冊はなんとある部分でリンクしているんですね。2冊併せて読むことで怖さが2倍にも3倍にもなるという、非常に意欲的な企みがなされています。『魔性の子』『十二国記』本編をあんな形でリンクさせた小野さんのことですから、今回もその周到さは折紙つき。2冊同時に購入し、一気にワンセットで読まれることをオススメします!




(背表紙はこんな感じ。重厚!ちなみに右隣に見えるのはハングル版『ゴーストハント』)


さて。
先日、この2冊について著者の小野不由美さんにインタビューさせていただく機会がありました。なんともはや、ありがたいことでございますなあ。新潮社の『波』8月号(7月27日発売予定)に『残穢』についての新刊インタビューが、メディアファクトリーの『ダ・ヴィンチ』9月号(8月6日発売予定)には『鬼談百景』&『残穢』について、そして小野ホラーのルーツについてたっぷり語っていただいたロングインタビューが掲載される予定!
いいお話をたくさんしていただいたなあ、と原稿を読み返しつつ思っているところですので、万国数百万の小野不由美ファンは刮目してお待ちください。


上記の注目ホラー刊行物については、ちょっとずつ紹介してゆきます。ハイ。
そういえば今日は、竹本健治先生の新刊『かくも水深き不在』も出るんだっけ。さっそく西荻窪の颯爽堂に買いに行かねば。
星辰の配置のせいですか、最近なにやらホラー方面にいい風が吹いてきたような気がいたします。黒石に「IXAXAR」とでも刻みつつ、さらにいい風が吹くのを期待したいですね。

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