2023年11月12日日曜日

怪老人日乗:11月12日(日)

久しぶりに日記をつける。ついにこの日がやってきた。11月12日、なんとこの日は……とまで書いてオチが思いつかないのでやめるが、別になんの日でもないのである。いや、今日が誕生日や結婚記念日という人もいるだろう。おめでとうございます。

さて私はといえば何をしていたのだろう、この半月間。仕事をしていたのは間違いないのだが、それだけか。それだけの地虫のような暮らしなのか?分からない。私には分からない……。ええとですね(いまカレンダーを見ている)11月3日は祝日だったようだ。何をしていたかなあ。さて、思い出せるかな。駄目だ……まるで思い出せん。つまるところ仕事をしていたのか。つまらない……地虫のようだ。ところでジムニーっていうキャラクターがディズニー映画に出てくるが、あれは日本語の地虫から取ったのだろうか。そうに違いない……。

で今日はもう12日でしょう。どうしたものかねえ。あ、思い出したことがひとつある。ところざわサクラタウンに行ったのだ。KADOKAWAが東所沢に作った施設であるが、オープン間もない時期に行ったきり、最近覗いていなかったのでお詣りがてら出かけてみたのである。前は電車で行ったのであるが、今回はバイクでうちから北上する形。なんだか小高い山を越えて、そこには白いコンクリート大仏のようなものが立っていて、おそろしい気持ちになった。田舎にあるコンクリート大仏はなんだか陰惨でおそろしい。

サクラタウンでは文化の日だからか(そうだ、3日に行ったのだ)お祭りのようなものをやっていて、出店が並んでいる。鯛焼きだの狭山茶だのを売っている。にぎやかである。相変わらずゴシックな威容を誇る隈研吾作のミュージアムを見上げ、神社で手を合わせる。12月にアンソロジーが出るのでその無事の刊行を願ってきた。

ミュージアムではツタンカーメン展が開催中、私はツタンカーメン好きとして知られるが、ツタンカーメン本人のことはよく知らず、ただ名前が面白いから好き、という極めてミーハーなファンである。もうちょっと勉強したいが、しない方がいいような気がする。これは松尾芭蕉についても同じで、ほどよい距離感を保っていたい。

段々思い出してきた。4日(土)は中央線方面で取材。土曜日に取材が入るのは珍しいのだが、その日なら、と受けていただいたのである。うちから中央線に行くにはバスが楽で、45分ほど揺られるので酔う。よう、よう、とおどけた声をあげるが気持ち悪く、その日は早くに寝てしまったように思う。

早くに寝てしまうといえば、2,3年前までは仕事を終え夜の9時くらいから映画を観たり、ドラマを見たりという生活を送っていた気もするし、さらにその前は土日で家族で公園やデパートに出かけていたような気もするが、今ではそんな余裕がまったくなくて、ほぼ起きている間ずっと仕事をしている。そんなことでいいのだろうか。地虫ではないだろうか。まあ私は無趣味だから、まったく気にならないといえば気にならず、休日がないのも特にしたいことがないから気にならず、外で遊ぶのは好きではないから仕事ばかりの生活も気にならず……どうも生まれつき地虫らしい。

ところでこんなに地虫を連呼するブログがかつてあっただろうか。大体地虫って何なんだ。怪奇小説でしか見たことのない虫だが、どこにいるんだ。ニューヨークか? それで日記を続けますと、週が明けてからって6日からの週のことですが、ひたすら仕事の日々で、予定を壁に貼ってみると一日一つ以上〆切を終わらせないと間に合わない。心臓がひやりとする。休日のない生活は苦でないが、この〆切山脈のストレスだけは何度やっても慣れず、げんなりし、クラクラする。間に合わないかもしれない、という不安感がそうさせるのだろう。

日月火とじりじりと仕事し、順調に原稿送っていったが、某月刊誌の入稿作業が入った水・木あたりから予定がずれ始め、金曜にもうひとつ送ったものの、土曜(つまり昨日)はあれこれ手が分散してひとつも終わらず。しかも修理に出していたバイクを立川の方まで取りに行ったりもしていて、1時間半ほどロードサイドを運転し、なんだか疲れていまに至るというわけなのである。

前にも書いたけれどワニ絵の効用というのはあって、メールのレスが目に見えて早くなりましたね。これまでは怖いメールは遠ざけて読まない、少しタイムラグを置いて、心臓が整ってから返信していたのだが、ワニ絵を描いているかぎりそのような繊細ムーブは許されない。さすがの私でも「おめえ、ワニ絵を描いてるじゃねえか」と編集さんたちが苛々し、路上につばを吐き捨てる顔が浮かぶからだ。

というわけで原稿に戻るかあ。月曜までにと言われているものが少なくとも3つあって、そのすべてが大変そうなやつ。ぐるぐる回して少しずつ敵兵の数を減らしているけど、あちこち振り向いて戦わないといけないから消耗がすごい。

昨夜は実家の父から電話。「おまえの仕事は、決まった給料もらえないから大変だなあ」と言われる。そのとおりなのであるし、賞与や有給休暇のある人たちが羨ましくはあるが、それを選んだのは自分であるし、そもそも私のような危うい人間に会社勤めができたとも思えない。人と会わなくていい、外に出なくていいので、これほどありがたい仕事もないと言える。

そうそう、12月後半に出るアンソロジーのゲラも戻した。おそらく出るでしょう。当初は1冊ずつ連続刊行という話だったのだが、2冊同時刊行になった。お小遣いを貯めて待っていてください。『影牢 現代ホラー小説傑作集』『七つのカップ 現代ホラー小説傑作集』(角川ホラー文庫)であります。





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