2023年4月14日金曜日

怪老人日乗:4月14日(金)

あれ、今日2回目の日記じゃない? まあそんな日があってもよろしかろう。なぜ一日は一度しかないのか。それを決めたのは誰か。ツタンカーメンか。というわけで日記をつけます。昨日の日記を書いたのが真夜中の0時過ぎで、日付がかぶってしまったぜ。

ええと今日はですね、やること多しでザッツ・混乱な一日でした。文庫解説の〆切が迫る、というかほとんどもう〆切なわけですがまだ出来ておらず、週明けに新規の企画出し、さらにインタビュー質問項目出しとそのためのゲラ読み、取材のためのゲラ読み、書き下ろしの作業、さらに某月刊誌の作業とばったばたであります。まずは文庫解説をやらないといけないわけですが、家ではどうにも集中できず外へ。

そうだ、京都行こう、と呟きながら自転車を漕ぐこと20分。京都と思ったら郊外のショッピングモールが見えてきた。コーヒー豆がなくなったので買う。ついでに郊外型の大型古本屋に立ち寄り(そうだよ、ブックオフだよ)80~90年代のホラー小説を漁る。私は超能力や霊感はゼロだが、ブックオフに足を踏み入れた瞬間、そこがいい店かどうか瞬時に判断できる、という特殊能力だけは持っていて、この店は「何かある……!」という気がした。

あったあった。西村寿行と田中光二と菊地秀行がいっぱいある。この手の古い文庫本、都会のぴかぴかした店には並ばないので嬉しい。しかし趣味が一貫していて、同じ人が売ったんだろうなと思う(バイオレンスと拳銃が好きなんだろう)。終活や断捨離の結果ならいいけど、死んではいないよねえ……。ありがたく買わせていただく。

ファミレスでお昼食べながら解説の作業。合間に明日公開のホラーワールド渉猟のプレビューチェック。明日公開のインタビューは東洋の宗教・秘教に詳しい藤巻一保氏で、新著『戦争とオカルティズム』についてうかがっている。前にも書いたかもしれないが、私は学研の「ブックス・エソテリカ」シリーズという宗教の入門シリーズが好きで、高校時代『禅の本』を読んで大いに影響を受け、試験勉強もせずに座禅を組んでいたのであった。いまでも「出家したいなあ」と思う時があるが、それはこんな高校時代を送ったからである。

でこの「ブックス・エソテリカ」を監修されていたのが藤巻一保氏であった。まさかお会いできるとは思ってもみず、なんというか人生の伏線回収という感じがして、大変に嬉しかった。ライターという仕事の良さは、こうして会いたい方に会いに行けることである。

伏線回収といえばいま文庫解説をやっている某怪談実話集も、21年前に京都で夢中になって読んだもので、この本を含むメディアファクトリーの怪談本は本棚のいい場所に並べて、よく読み返していたものだった。怪談、ホラー、オカルト。この三本柱で本を読んできて、それが今こうして仕事に繋がっているのだからありがたい。

解説、あまり進まなかったがへろへろと疲れて帰宅。先日の疲れが出たようだ。すこし仮眠してお夕飯、白身魚のムニエルなど。子どもと日野日出志のマンガ6冊ほど読み、やっぱり『霊少女魔子』の頃の日野マンガは充実しているな、と感心する。

毎日ちびちび読み進めてきた笠井潔『煉獄の時』は一昨日ついに読了。非常に面白かった。私は二十世紀をテーマにした本がもともと好きで、笠井潔の小説はそこに正面から向き合ったものが多く、『哲学者の密室』などまさにそうだったが、二つの時代の首なし殺人がリンクする『煉獄の時』もそうで、イヴォンと矢吹駆、異なる時代を生きる二人の青年の存在が胸に残る。とりわけ鮮烈な印象を残すのが、『バイバイ、エンジェル』にも出てきたイヴォンで、あの小説では点景に過ぎなかった人物が、『煉獄の時』では戦闘と革命の世紀において生を燃焼し尽くした何人もの無名の英雄たちの象徴のように思えてくる。謎解き自体はシンプルなものだが、自分にとっては至高の読書体験でした。

で、続いて『吸血鬼ヴァーニー』に突入。これも非常に長いらしいので、焦らずちびちび読むことにする。ところで焦らずちびちびってどこで読んでるんじゃい、といえばお風呂で読んでいるんですね。風呂で本を読むなんてとんでもない、という愛書家もいるかもしれないが、私はお風呂の時くらいしか好きな本を読むタイミングがないんですよ。それ以外は大抵ゲラを読んでいるか、仕事に関係する本を読んでいる。それでお風呂の間だけは、存分に好きな本を読んでもいい、ということに決めているのである。

『吸血鬼ヴァーニー』は今のところ順調に面白くホッとしている。私は耽美的でテンポののろい吸血鬼ものがあまり得意ではないので(貴族趣味みたいなものがないから)、「そういうのだったら困るなあ」と思っていたのですが、そんなことはなかった。いきなりクライマックスから始まるのがいいじゃないですか。吸血鬼に向かってバンバン銃を撃つし。

それにしても吸血鬼の目が金属のように光っている、ブリキのようなびかびかした光沢を放っている、という描写があって新鮮だ。こういう宇宙人目撃談めいた吸血鬼、なかなかないような気がするがどうなんだろう。




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