2023年2月4日土曜日

怪老人日乗:2月4日(土)

ウララーとジェロニモのように叫びながら登場。どどーんと土曜です。

しかしいやだなあ、私は懐かしネタ、レトロネタをいう大人が嫌いだったんですよ。昭和の懐かしアニメ特番とか、懐メロ番組とかあの手のものは大嫌いだったんです。懐古的、退嬰的であって美しくないなと思っていたし、その感覚自体は間違っていないと思うのですが、しかしふと口を突いて出る言葉というのは、やはり子供の頃に覚えたあれこれだわね。

まあ私が嫌いだったのは同世代的ないやらしいうなずき合いであって、個人がその人の思い出を(泥団子を何度も撫でて光らせるように)しつこく再生するのはむしろ好きです。澁澤龍彦が小学生の頃の三角定規を、大人になってもずっと使い続けていたけど、ああいうのはすごくいいなと思う(自分も35年前の地図帳をいまだに使っている。もう存在しない国もたくさん載っている)。

澁澤龍彦の著作で『狐のだんぶくろ』を偏愛しているのも昭和初期の少年時代の思い出が美しく描かれているからだし、乱歩の『孤島の鬼』が大好きなのも箕浦君と初めてホテルに泊まった木崎初代が「なんだか昔のことを話してみたくなったのよ」と少女時代を回想するという絵のように美しいシーンがあるからなんですね。

いきなり脱線したけれども日記を書く。昨日は終日仕事で、外出は徒歩5分のスーパーのみ。今週はほとんど出かける用事がなくて(取材の類は先月に済ましてあったので)集中して原稿がやれたのでよかったですね。その割に進んでいないのは、筆が遅いからでありましょう。この週末で5つ終わらせないといけないんだけど、さてどうなりますか。ひとつ10時間かかる計算なので、50時間。寝なくても間に合わないな。

昨日は本来、某月刊誌の入稿日だったのだが、金曜入稿ということは結局、印刷所が動き出すのが月曜早朝なので、だったら土日に入れにいっても同じことだなと思って、出かけるのはよしにした。電車でマスクをしていない人も増えたし、わざわざ混んでいる平日に都心に出ることもあるまい。

某月刊誌の仕事、前も言ったと思うけれども、上京したばかりで金がなくミスタードーナツで働いていた時代からやっているので、もう15年近くは続けていると思う。当時は仕事もほとんどなかったので週に数回、お日様の出ている時間に編集部に行って、そこできちんきちんと作業をしていたのだが、段々原稿仕事が忙しくなってきて、ここ2、3年は日が暮れてから出かけて、深夜に作業して帰る、という泥棒みたいな生活になってしまった。

昨日は終日かけて原稿。帯文書いた幻冬舎のホラー新刊のカバーレイアウトが届いたのでチェックして戻し。節分だったのだが子供もピアノの稽古でおらず、鬼には明日遅れて登場してもらうことにした。座りっぱなしで体ぐったり。半日ぶっ続けて仕事していてどこが疲れるかって、右腕が疲れるのであった。そんなわけで早くに就眠。仮眠のつもりだったが朝まで寝てしまう。まあいいか。ファンキー中村氏の怪談実話聞きながら寝ていたが、北海道弁が実に味わい深い。事故物件から逃げる時の「行くべ!行くべ!」という訛った感じ、親の世代の言葉を聞いているみたいで和むっす。





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