2023年2月24日金曜日

怪老人日乗:2月24日(金)

昨日の夜スーパーにいったら、おじいさんが2人座って牛乳を飲んでいた。「牛乳を飲むと、おっぱいが、おっきくなるんだって」という話をデカイ声でしており、外に出ると怪しい三日月。風雲急を告げる夜である。珈琲豆とメロンパンを買ってかえった。

で昨日(木曜)はひたすら書評の本の読み返し。『サラゴサ手稿』は最後まで読むと、ビシッと最初に戻るからすごいよなーと思う。「世界幻想文学大系」の工藤幸雄訳で読んだ時には(トドロフの有名な紹介文もあって)おどろおどおろしい不条理な怪奇幻想譚、というイメージだったのだが、全訳で最後まで読んでみるとむしろ楽しい多国籍ファンタジーなのである。ラストで地底洞窟の黄金の秘密が明らかにされるあたり、アラビアンナイト風でもあるし『ヴァテック』みたいでもある(あんなに怪しくはないけど)。

これはこれで大いに面白かった。最後まで読むのにむちゃくちゃ時間がかかったけど、また折に触れて読み返したいというか、どっか好きなところを拾い読みするのも楽しそうだ。巨大なインク瓶の話とか、世界のすべての知識を書き付ける男とか、女装して修道院に入るジプシー族長とか、愉快なエピソードが多いしね。




あと最近の事件といえば、『呪呪呪』という韓国ホラー映画を見に行ったのである。朝8時半という「誰がくるんだよ」という時間に劇場に行ったら、ほんとにお客さんが少なくて、うちの夫婦とあと1人だけだった。「あいつゾンビじゃないのか」とデモンズみたいな内緒話をしていたが、そのお客が映画が終わってもいつまでも席を立たないので「やっぱり死んでいるんだ」と思った。怖い怖い。

映画自体は『あまちゃん』みたいなタイトルにもかかわらず、楽しいゾンビアクションであった。ホラーというよりもアクション、ミステリーでしょうね。呪いを使って死者を蘇らせ、悪の製薬会社に鉄槌を下す、という松本清張が側転して考えたみたいな話で、その呪術というのがインドネシア由来。韓国の人にとっても東南アジアの呪術は不気味なイメージがあるのだろうか。

それに対するのはネットメディアの記者である主人公だが、彼女には旧知の少女呪術師がいて、その子は現在行方不明になっている。失踪中、何をしていたかといえば日本の四国で巫女の修行をしたり(この映像が流れるがめちゃくちゃカルトな感じでいい)、さらに中国の山奥で己の「悪鬼」をおさえる修行をしたり(中二病的でこれまたいい)していたというのだ。

一人目の犠牲者が大量の走るゾンビ(ボタボタ階段から落ちてきたり、車を運転したりするアクティブなやつら)に殺されるまでが前半、呪術師少女が中国から戻ってきて謎を解こうとするのが後半で、どっちも見せ場たっぷりで面白い。原作は『新感染』のヨン・サンホ。こういう70点くらいのほどよい映画を劇場で観ると、幸せな気分になりますね。100点の傑作もいいけど、こういう平均点の面白さをもった映画も貴重だろう。日本のホラーは今そこの層が手薄だからなあ。

あと事件といえば国書刊行会のトートバッグが届いたことだろうか。ツイッターでははっきり書かなかったけれど、国書の担当さんからいただいてしまったのである。ついでにいうならTシャツもいただいてしまったのである。かたじけねえ……。PRエッセイを書いたり記念冊子2冊(もう1冊は近々配布されるやつ)に関わったりしたから、国書ファミリーに認定していただけたのだろうか。だとしたら嬉しいのだが。で試しに本を入れてみたら、たっぷり入る。作りも頑丈だし、これは役に立ちそうだ。もうひとつ買ってもよかったかもなあ。





で今日は早朝から原稿書き。ぎりぎりと書き進め、昼過ぎになんとか完成。メール。続いてインタビューの日時確定、遅れている解説原稿など。そうこうしてたらまた土日がくる。どっきんこ。

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