2015年3月30日月曜日

『本の旅人』4月号



『本の旅人』4月号が届きました。

ブックレビューコーナーに、東雅夫編『怪獣文藝の逆襲』の書評を書いています。
太田忠司作品「黒い虹」を中心にして、収録作品の2つの傾向について論じたもの。
どうぞご一読を。





以下、レビュー本文に書ききれなかったことなど。


そもそも。
「怪獣文藝」なんてものがあるの?と疑問に思われる方もいるかもしれませんね。
怪獣といえば、映画やテレビ番組を舞台に暴れまわるもの。
活字表現との相性はよくないのでは?
そもそも「文藝」と呼ぶに足る作品が書かれているの?と感じる方もいるでしょう。


そうした疑問に対して「いや、怪獣文藝はあるんだ」と主張してきたのが、本書の編者である東雅夫氏でした。


『怪獣文学大全』(河出文庫)、『幻想文学39 大怪獣文学館』(幻想文学出版局)、『書物の王国 怪獣』(国書刊行会)といったアンソロジー。
あるいは。
『ホラーウェイヴ01 菊地秀行&大怪獣スペシャル』(ぶんか社)、『怪獣文藝』(メディアファクトリー)といった競作の試みを通して、日本幻想文学史上に〈怪獣〉の系譜を見いだし、それを確固たるものにすべく尽力してきました。


東雅夫氏が今日までおこなってきた日本文学史の読みかえ作業によって、日の目を見ることになった鉱脈というのは数限りなくあるわけですが、〈怪獣〉も間違いなくそのひとつでしょう。
東氏がいなければ、〈怪獣文藝〉という鉱脈はそれこそ地底怪獣のように、土中深くに埋もれたままであったろうなと思うわけです。


したがって。
『怪獣文藝の逆襲』は怪獣好き作家&編者によって作られた作品集ではありますが、決して特撮マニアにだけ向けられたものではありません。
未知なるもの、畏怖を感じさせるもの、圧倒的なもの。
そうしたものに否応なく惹かれてしまう人ならば誰でも楽しめる、ユニークな怪奇幻想小説集に仕上がっています。





ところで。
紹介しておいて何ですが、『怪獣文学大全』は持っていないのですよ。


学生時代、京都河原町の丸善(梶井基次郎が爆破した、あの丸善)の2階で、同じシリーズの『恐竜文学大全』と並んでいたのをはっきり覚えているのですが、当時ケルアックなどに興味を持っていたわたしは「怪獣……ゴジラ、モスラか」と一瞬引いてしまい、「ま、いつでも買えるだろ」と思って買わなかったのです。
そのうちに、あれよあれよという間に丸善2階の棚から姿を消し、「ヤバいな」と気づいた時には、古本でもめったに見かけない稀少本となっていたのですね。あららのら。


で、今日の教訓。
気になる本は、その日のうちに買いましょう。
いつまでもあると思うな、文庫本と丸善。

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