2014年8月30日土曜日
怪老人日乗・その4 「怪奇が読みたいんだよ、私は」
相変わらずどんよりした目でブラック・サバスばかり聴いている怪老人である。精神状態、復調の兆しは見えず。そうか、暗いのは性格だったんだ! 発見、発見。
扠。
夜になってから這いずるように書店に行ったらば、私の好きそうな本が3冊出ていた。
・荒俣宏編『怪奇文学大山脈 Ⅱ 西洋近代名作選 20世紀革新篇』(東京創元社)
・リン・カーター&ロバート・M・プライス『クトゥルーの子供たち』(森瀬繚&立花圭一訳/KADOKAWAエンターブレイン)
・レノア・ブレッソン『世にも不思議な物語 世界の怪奇実話&都市伝説』(尾之上浩司訳/扶桑社ミステリー)
『怪奇文学大山脈』は巨人・荒俣宏が怪奇文学への愛情と知識を傾注した、怪奇小説ファン必読のアンソロジー。第2巻にはクロフォード、マイリンク、コッパード、マッケンなどの名作、レア作を収録。「夢魔の花さきほこる」との副題を掲げた編者まえがき「二〇世紀怪奇スクール」も非常に読み応えがある。
『クトゥルーの子供たち』はリン・カーターによるクトゥルー神話作品群に、ロバート・M・プライスの短編「悪魔と結びし者の魂」を併録した作品集。エンターブレインのこの路線、継続しているということは売れてるんだろうか。応援してます。
『世にも不思議な物語』は同名のテレビシリーズの書籍版2冊(原著刊行は1960年と61年)を邦訳したもの。『ダーク・シャドウ』ノベライズの翻訳といい、尾之上浩司氏のこうしたマニアックな仕事はつくづく貴重なものだ。
で、であります。
ちかごろ話題になった、アイスウォーターチャレンジというのがありますね。あれについて、「自分は別のことに寄付したい。優先順位があるから、氷水はかぶらない」と言った人がいて、あちこちで話題を呼んでいたけれども、この話を聞いて私が思い浮かべたのは、本を買うという行為についてなのでありました。
と、いうのもですね。
昨今の出版業界をめぐる状況は、決して楽観的なものではないのですよ。
有り体にいって、本は売れない。初版部数はどんどん削られているし、発売直後の動きがわるい作家やシリーズは、次の作品を出すチャンスを得られずにフェイドアウトしてゆく。おそろしいけど、本当の話です。まったく笑えない。
じゃあ、どうしたらいいのか。
買い支えるしかないのだ。
もちろん、われわれはビル・ゲイツのような大富豪じゃないから、書店にある面白そうな本、すべてを買うことなんてとてもできない。毎月のお小遣いのなかから、ケータイ代とかお茶代とか映画代とかを支払って、そこからさらに本代を捻出するのは大変なことだ。
私のように「本を買うのがお仕事」という人間だって、そりゃあ心が折れそうになることがありますよ。
でも。
その本がいいなと思ったら、買うしかないのです。こんな本を継続して出して欲しいと思うのなら、買うことで賛意を表現するしかない。もちろん、お金のことだから建前やきれい事では済まされない面もある。私だって、新刊本を一冊も買えないものすご~い赤貧時代があったので(しかも結構長かった)、欲しい本が買えないつらさはよく分かっている。だから、それほど欲しくない本、ちょっと読んでみようくらいの本は、図書館や古本屋を利用したっていいと思う。
が。
ホントに欲しい本は買いましょう。
できれば、地元の書店で。発売後すぐに。
中古品がたやすく手に入る時代、「定価で買うのは高いよ~」とつい思ってしまうかもしれないが、その値段には作家や出版社の活動資金が含まれている。カンパや寄付のようなものだと思えばいい。確かに中古品は安いけれど、そこに作家や出版社へつながるものは一切含まれていないのだ。それでオーケーなのか、どうなのか、買う前にちょっとだけ考えてみよう。
本を買うということは、好きなものとどうでもいいものを区分すること、あなたにとっての優先順位を表現することでもある。
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応援ありがとうございます。実は、同じ編集部から出した『H・P・ラヴクラフト大事典』は未だに増刷されていないのですが、TRPGが好調なのと、編集部のトップの方がこちらのジャンルに理解と思い入れのある方で(朝松健先生の『弧の増殖』もここ)、続けさせていただいております。ありがたいお話です。(^,,,^;
返信削除森瀬繚さま
返信削除コメントありがとうございます。
『ラヴクラフト大事典』も『弧の増殖』も大喜びで購入したクチです。
これからもご活躍、心よりお祈りしております!
機会があれば都内のホラー系イベントなどでお会いいたしましょう!
朝宮運河
ご購読、ありがとうございます!
返信削除苦しい状況でも買い支えてくださる読者がいてこそ、ぼくらも新刊を出してこられました。その支援に応える内容のものを今後も作っていきますので、引き続き、応援をよろしくお願いいたします。