8月初旬に放送された『ダークサイドミステリー』夢野久作回をやっと視聴しました。
引っ越しの関係でDVDを受け取るのが遅れたという事情もあるのですが、一番の理由は自分がゲスト出演しているシーンを見たくなかったから。私にはどうも悪い癖があって、自分が書いた雑誌や雑誌はつい遠ざけたくなる。見本をもらってもページを開きたくない。まあ一種の自己嫌悪なんでしょうけれども、そういう傾向があるわけです。
録音された自分の声を聞いて、うんざりした経験のある方は多いでしょうが、あれに近い心理なのだと思います。あアンソロジーだけは別ですよ。この夏出た『宿で死ぬ』も『恐怖』も何回も読み返しています。やっぱり面白いわー。アンソロジーは黒衣に徹して好きな作品を並べる仕事なので、自己嫌悪に陥ることなく本を楽しめるわけなのです。
で『ダークサイドミステリー』2か月も放置してしまいました。ツイッターで皆さんの感想などは読んでいましたし、収録スタジオでVTRも粗い編集ですが見ているので(ナレーションなどが仮に入っているもの)なんとなく内容は把握。それもあって本放送から2か月遅れになってしまったのです。
とはいえ。自分にとって関心ある夢野久作がテーマだし、番組スタッフの皆さんが熱心に調査・制作されていたことも知っている。ビデオ出演のゲストも豪華だし(ざっと編集されたVTRは収録スタジオでも見ました)共演した鈴木優作さんのコメントもまた聞きたい。というわけでつい数日前、えいやっと気合いを入れて見てみたわけ。
いやいや、こりゃ実に面白い番組でした。久作入門編の映像資料としては望みうる最高の出来なんじゃないでしょうか。読んだら精神に異常をきたすという『ドグラ・マグラ』をフックにしつつ、久作の生涯と作品を一時間にぎゅっと凝縮。ビジュアル表現も力が入っているし、それでいて勘所は外さない。たいへん誠実な番組作りに感服しました。
自分はあいかわらず感覚的なことしゃべってるなあ、なんだか山師みたいだなあ、とも思いましたが比較的ちゃんとしゃべれている部分を使ってくださって、実証的な鈴木さんのコメントといいバランスだったのかな、とも思っております。学問をちゃんと究めている人の言葉というのは芯が通っていて、聞いてて気持ちがいいですね。
というわけでホッと一息ついているところ。DVDは3枚送っていただいたので1枚は恩師田中励儀先生にお送りしようと思っています。田中先生の嫌いな「無責任な放言」を口にしていなければいいのですが。
これは番組のプロフィール画面。顔出ししているプロフィールが他にないわけじゃないですが、おまえは何者なんじゃ、と問われた時のためにちょうどいいので引用させてもらいます。「夢野久作をきっかけに怪奇系の書評家を志した」というと大層ですが、まあ75パーセントくらいは正しいのかな。
0 件のコメント:
コメントを投稿